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テンプレ主人公は偉大だった!?  作者: トクシマ・ザ・スダーチ
テンプレ主人公……になっちゃった!?
34/39

雑魚戦の後のテンプレは……

帰るまでが遠足です。

「一体、何が起こった……!?」


 魔人・リーブラが魔獣たちの行進を追いかけて行くと、そこには魔獣たちが列をなして倒れていた。


 脚を折って呻くもの、木々に衝突したり仲間に踏まれたのか全身ひしゃげているもの、無念そうに息絶えているもの。


 十人十色の死屍累々がそこに繰り広げられていた。


 それを辿っていくにつれて魔獣の死傷体は増え、リーブラの困惑はますます募るばかりだった。


 やがて、魔人であるリーブラですら酷い難色を示すほどに瘴気の濃い、具体的には毒ガスが蔓延する地帯へとたどり着いた。


 目を凝らすと、その先にも魔獣の死体がある。


「いや、いくら魔獣の知能が低いからって流石にここに好き好んで入ったりしないでしょ。どういうことなの本当に……」


 魔獣は精霊と動物の魂が混ざり合った存在。生命維持のために血肉と魔力を求める。


 当然、ベースは動物なのだから必然的に呼吸は必要である。


 なのでいくら魔獣でも毒ガスの海に身を投げるような、こんな自殺行為を本来は起こすはずもないのだが……。


「何かあったのは間違いないね。この辺でもう一回見てみようかな」


 引き連れた魔獣の被害数という現実を直視したくなかったため、限界まで水晶の起動をためらっていたリーブラだったが、そうも言っていられる状況ではなさそうだ。


 学園への攻撃は失敗。手勢も軒並み倒された。


 だがリーブラが仕える王は寛大だ。許してもらえるのかもしれない。しかしそれは己の忠誠心が許さない。手ぶらでは帰れない。


 何か情報を持ち帰るくらいはしなければ。


「幸い、僕の能力は密偵向きだしね」


 小鳥のちーちゃんを左手で撫でながら水晶を覗き見る。


 視界を飛ばすと、毒ガス地帯の中にも倒れている魔獣がそこかしこに散見された。


 強敵にあてがう予定だった上級魔獣達の死体もそこにはあった。


「うわあああ、もったいない……。あそこまで育てるのも、言うこと聞くように調整するのも結構時間かかったのに……」


 虚無感と頭痛に襲われながらリーブラは視界を飛ばし続ける、どうやら死体の列は山の方へと続いているらしい。


 それを徐々に徐々に追っていくと、水晶に奇妙なものが映った。


「は? 人間? この魔人たる僕ですら入るのを断念するこの瘴気の中で!?」


 視界を人間が映るように固定する。人間は平然と歩いている。


「コイツだ。間違いない。コイツが持っている何かを追ったから魔獣たちはこの瘴気の中に誘い込まれたんだ」


 どうやら人間は魔獣の死体の列を確認しながら引き返しているらしい。リーブラは苦々しい表情でありながらも口角を上げた。


 まだ自分にもツキは残っているらしい。


「コイツを殺す、だけじゃ足りないよねぇ……。僕の命令を無視させる何か、せめてそれを吐かせないと。他の人間にも同じことができるかどうかを知っておかなきゃ今後の作戦にかかわるしね」


☆☆☆


「学園に戻ってもコレやったの俺らだとは誰も信じねーんじゃないかな」


「まぁ、ぼくら実際に指一本手出ししてないしね」


 俺はリッキーの消臭効果を再起動して魔獣の死体の川を辿ってもと来た道を歩いて引き返していた。


 黒の森は三大魔境に数えられることもあって正確な地図が存在しないため、毒殺した魔獣たちの死体を道しるべに帰るしかなかったのだ。


 落とした剣が見つからない……。(泣) 魔獣の下敷きになってるんだろうか……。


 さておき、魔力はまだまだ余ってるとはいえ、水筒の中身は空だ。


 魔力強化は身体能力はおろか、内臓まで強化できるが体内の消費リソースを減らすことはできない。


 いや、俺にはまだ無理なだけでひょっとしたら可能なのかもしれないが。


 何が言いたいのかというと、脱水症状を警戒しているのだ。


 魔力強化で延々走り回れたとはいえ、もちろん燃料は消費している。魔力も、当然水分も。


 なので今までも度々水分を取っていた。魔力強化後に脱水症状を起こすことは珍しくない話らしい。


 俺はかなりの距離を走ってる。


 学園に帰るまでに脱水症状が出て倒れるのは流石にまずいのでこうして休憩をはさみながら歩いているのだ。


 それで倒れて生き残りの魔獣やらなんやらに齧られるとかあるしな。最悪の場合。


 リッキーの浄化能力は気体限定だからな。


 途中であからさまな毒沼を見つけて水筒に掬って試しにリッキーに浄化をお願いしてみたが無理だった。


 「無理そうだけど頑張ってみる」とか言い出してそれを制止する方が大変だった。


 ぼっちこじらせると面倒くせぇな!?


「でも、ちょっとはみんなスレイのこと見直すんじゃない? 魔獣を束で倒したのを信じてもらえなくてもその前の避難誘導や指示出しは堂に入ってたし」


「そうかね? 誰でもできそうだけどなぁ。俺がいなくてもフィーネとかならサクッとみんなをまとめれてたと思うし」


 フィーネはスレイが絡むといろいろポンコツだがスペックは高いからな。


 魔力強化の教え方もうまいし、本人の練度も桁が違うし。自分の意見も言えるし、正義感もあるし。


 流石は主人公の幼馴染なだけあるわ。


「例え誰にも認めてもらえなくてもぼくだけは君の活躍を知ってるからね、胸を張るといいよ!」


「この前までぼっちだったのにクサいこと言えるじゃん。相棒」


「っぼぼぼぼっちは関係ないだろ!?」


「さてはこういう状況を想定してセリフを用意してたな?」


「は、はぁ!? ななななんで知ってるのさ!?」


 リッキーは俺の肩の上で器用に身もだえる。図星だったのかよ……。軽口のつもりだったんだけど悪いことしたなぁ。


 可愛いやつめ。


 リッキーの喉もとやら背中を撫でまわしてしばらく歩く。


 黒の森特有の黒い木々や紫色に生い茂る雑草や粘度の高いぬかるみが少なくなってきた。やがて、黒の森を完全に抜けた。


「うう、ぐすっ……ひっく、ここどこぉ……」


 というところに誰かいた。


 少年だ。ハンチング帽を被ってる。うずくまってしくしく泣いているのを肩の小鳥が慰めるようにチチチと鳴いている。


「子、供? おいおい迷子か? あとは帰るだけだと思ったのになぁ」


 マジかー……。特大トラブル消化した後だから気が緩んでたけどラノベの世界だもんなぁ。


 でも迷子なら一緒に学園帰れば解決だしな。魔獣の群れと電車ごっこ(命がけ)するよりは楽勝だ。


 料理の途中で必要な皿が一人分増えたぐらいの負担だ。


「よう、迷える少年。にーちゃんかねーちゃんとはぐれちったか?」


 俺はしゃがみこんで目線を少年に合わせる。


 子供との触れ合いの基本だとかってどっかのギャルゲで見た覚えがある。


 迷子をヒロインの一人がしゃがみこんで慰めるスチルが出るんだがパンチラしてるのよね、たしか。


 ああ、もっかいやりたいなぁ。日本に帰ったらやることリストに入れておかねぇと。


「ぐすっ、お兄さん誰?」


 迷子は顔を上げて俺の目を見る。


 はい、いつもどおり美少年ですね。金髪碧眼のテンプレ美少年。


 年齢は、10歳くらいか? ヴァネッサの年齢を読み違えた前例があるのであんまり当てになんないがそれくらいだろうと思う。


 それ以外は肩に小鳥を乗っけてることとかけカバンを大事そうに抱えてるくらいしか特徴がないキャラだ。


 小鳥はどこかに行く様子もないのでペットか何かなんだろう。


 日本、というか現実だと放し飼いにしてたらさっさと飛び去りそうなもんだけどなぁ。


 野生を失うとそうでもないんだろうか。はたまた愛情のなせる業か。今はどうでもいいわ。


 しかしなんでこんなところに?


 初等部生が内緒で実戦訓練を見学に来て迷子になった系テンプレイベントか? 俺は疲れてるんだけどなぁ……。


 でも放っとくわけにもいかん。誰がなんのフラグになるかわからんからな。


「俺? 俺はスレイ・ベルフォード! 泣く子も黙る初等部4年生だ! それ泣きやめ泣きやめ」


「スレイ? わひゃひゃ」


 俺はそう言いながら少年のわき腹や首のあたりをくすぐってやると少年は笑い始めて泣き止んだ。


 日本でやったら下手すりゃ事案だからみんな気をつけろよ。


「よし、そんじゃいっしょに帰ろう。こっちの小動物は精霊のリッキー」


「リッキーだよ! よろしくな!」


「少年の名前は?」


「リーブラ」


「そっちの小鳥は何て名前だ?」


「ちーちゃん。友達なの」


 俺は少年、リーブラと手をつないで魔獣の死体の道しるべと地図を頼りに歩く。


 リーブラの左手は大事そうにカバンを掴んでいる。何が入ってるか知らんが大事なもんなんだろう。


 しかし思えば俺も全然知らん道歩いてんだよな。その辺ちょっと二重迷子にならないか心配だが、まぁ見覚えのある道に出ればなんとかなるじゃろ。


 ()()もかけてるし。


 魔獣の残党が怖いくらいだな。……ちょっと身を隠しながら進むべきだろうか。


「リーブラはどうしてこんなとこで迷子になってるんだ?」


「わかんない。気が付いたらここにいたの」


 え、待って。ひょっとして異世界転移者なのこの子?


 いや落ち着け、精霊術なんてもんのある世界だ。転移魔法みたいなのがあってもおかしくない。


 あれ? って考えると今回の襲撃って転移魔法か何かの方法で大体説明つくんじゃね?


 ……まぁ、知識不足の俺が思いつく時点で誰かがそう考えててもおかしくないけど一応先生だか会長だかの耳に入れとこう。


「ねぇ、スレイさん。あの魔獣たちやっつけたのスレイさんなの?」


「ん? ああー、まぁそうかな! ほとんど同士討ちみたいなもんだったけど」


 魔獣の存在を知っている……ってことは少なくとも仮に転移者だとしても俺と同じ知識量以上をため込めるだけこの世界にいるって推測ができるな。


「へー、すごいや! 僕ね、大きくなったら強くなってスレイさんみたくいっぱい魔獣を倒して世界を平和にしたいんだ!」


 ヒーローに憧れる子供の模範解答みたいなこと言うねぇ。


 まぶしい! おお、俺がいつの間にか失っていた輝きがまぶしいぜ!


 俺が魔獣をしこたま倒したという話に興奮したのかリーブラの表情は晴れて饒舌になる。


 もともとおしゃべりが好きなのかもしれない。


「ね、ね、どうやって倒したの!? というかどうやってこんなに魔物をいっぱい誘い出せたの!?」


「うーん、それはまぁ……知恵と勇気だな! 強いて言えば相棒のおかげかな? 俺一人でできることなんてたかが知れてるしなぁ」


 目を輝かせて質問してくるリーブラに俺はそう答えた。


 ……魂の異臭で魔獣を引き付けて公害地帯の毒ガスで殲滅したって言っても何言ってるのかわかんないしな。


 俺もまっさらの状態で聞いたら「何言ってんだコイツ……」ってなるの想像できるし。


「相棒?」


「そう、俺の頼れる相棒のリッキー君のおかげさ」


「ふふん。相棒のリッキーです」


 俺の肩でリッキーがドヤ顔で胸を張る。実際大活躍だったしなぁ。


 本来のストーリーに絡んだのかどうかは知らないが間違いなくリッキーは今の俺の頼れる相棒である。いないと詰むしな……。魂質的な意味で。


「ってことはこんなことできるのはスレイさんとリッキー君だけってこと?」


「うーん、まぁ条件が揃えば誰でもできるんだろうけど、俺の知る限り俺とリッキーの合わせ技はオンリーワンだな」

 

 消臭の精霊と魔物を引き寄せる魂の香りをさせる人とが揃えば、な。


 多分そいつらまともな生活してないと思うけど。(経験談)


「へぇ? すごいんだね、君たちって」


 不意に、ピタッと足を止めたリーブラがそう言った。


 ……何やら雰囲気も変わっている。というか急に魔力が膨れ上がっている。


 まだまだ未熟な俺の魔力を見る力でさえその本流が感じられるほど強大だ。


 あれ? な、なんか嫌な予感が……。 


 パキパキポキィッ。


 そしてリーブラとつないでいた俺の左手が小枝を折るような音をさせてかつてない方向にひん曲がった。 


「んんんぁぁあぐぁああああ!?」


「スレイ!?」


「あははは! じゃあ君をここで始末すれば当面こんなことは起こらないってことだ! ね、ちーちゃん」


 リーブラは笑いながら左手に掴まるちーちゃんと会話している。


「あれでしょ? カッコつけて君の仲間を逃がすために魔獣をなるべく引き連れていったんでしょう? 馬鹿だよねー。つまり今、君のピンチに駆けつけてくれる仲間はいないってわけだ」


 そう、俺は不覚なことに物語におけるお約束(テンプレ)を忘れていたのだ。


 雑魚戦のあとはボス戦が控えているということを。

志村ァー! 隣り、隣りぃッ!

意図せずホラー小説っぽい展開になりました。

17時、19時に投稿予定です。

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