初めての共同作業
遅くなってすみません!
「まさか……」
「大丈夫か?」
「……はい」
知らない世界に来てしまった不安とこれからどう生活していけばいいのだろうかということが、頭の中をめぐっていた。
「……」
「まぁ、なんだ。ゆっくり考えればいいんじゃないか? 時間はあるわけだし、急いでいるわけじゃないんだろ?」
「……ええ」
固まったまま動かない碧生を心配して声をかける。暫く何かを考えていたが、言われた通り、すぐには解決しないという考えに至り、マリと一緒にしている作業に再度取り掛かった。
「あおいはなんでもできるんだなぁ」
「なんでもは出来ませんよ。私にも苦手なことはありますし。例えば、走ることとか」
準備し、手際よく作っていく碧生に感心する。そういう彼女も碧生と同じくらいの早さでこなしていた。お互いに協力して作ったおかげか、早く完成したカボチャスープを持って木製のテーブルに座る。
「走るのは誰でも出来るだろ?」
「それが、私は出来ないんです。20歩歩いただけでも疲れるほど、体が弱いもので」
「それじゃ、横になっておかないと!」
先程まで立って作業していたから疲れているのではないかと思ったマリは、椅子を蹴り倒して立ち上がった。
「大丈夫ですよ。マリさんが手伝ってくれたおかげで、さほど疲れていません」
「そ、そうなのか?」
「ええ。それにいつも以上に美味しそうに出来て、とても感謝しているんですよ」
不安そうな顔のまま座る彼女を、安心させるように微笑む。
「しかし、あおいは変わった姿をしているよな。伝承にある森の狩人達みたいに白い体に水色の目だ」
「森の狩人? 森と狩人と言えばエルフの妖精を思い出しますが……」
「知っているのか? そうだよ、そのエルフさ。特にハイエルフと呼ばれる高位のエルフは高潔で人を見下しているのさ」
眉間に皺を寄せ、嫌味を言い続けている。その様子から過去に何かされたのだろうという事が予想できたが、深く聞くのは失礼だろうと考えた碧生は聞かなかった。
「何が遭ったかはわかりませんが、大変な思いをしたのですね……」
「まったくだよ」
過去のことを思い出したのか、どんどん嫌味が口からこぼれてくる。いろいろと言って少しだけ息切れをしていたが落ち着き、村を案内するということになった。
「何もない村だが、綺麗な所がたくさんあるんだ。あおいもきっと気に入るぞ!」
「それほど綺麗な場所が? すごく気になりますね。もし、そこに行くならば日を遮る物が欲しいです。例えば傘とか」
「かさ? かさってなんだ?」
傘がないということに衝撃を受ける碧生。知らない世界にきている事と、この家から出ることは叶わないということに胃が痛くなるのだった。
誤字脱字が教えてくださると助かります。