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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第083話 渚さんとエスケープスピード

『なんでパトリオット教団のヤツが攻撃を仕掛けてきた?』


 射線を遮るためにすぐさま全員が建物の影に逃げ込み、それからルークが思い浮かんだ疑問を口にする。ミリタリーガードが出てきたこともそうだが、それに合わせてパトリオット教団の人間が現れて自分たちを狙った理由がルークには分からなかった。少なくともルークにはパトリオット教団に狙われる覚えなどない。


『ナギサ……もしかして?』


 一方でリンダが眉をひそめて渚を見た。

 以前に渚がパトリオット教団の男を見て、妙な反応をしていたのを思い出したのだ。対して渚も神妙な顔をして頷いた。


『ああ、狙いはあたしかもな。どうやってここを嗅ぎつけたのかまでは分かんねえけど』

『訳ありか。どういうことなのか……ってのはひとまず置いとくぞ。あの多脚型。スパイダーって言うんだが、あいつも近付いてきている。あの男は置いておいてひとまずここを離れたい』

『ああ、それなら大丈夫。バイクはもう呼んでるから』


 そのミケの言葉と共にボロ倉庫からバイクが走ってくるのが見えた。瘴気のないこの場所ならば、無線で指示を飛ばすことも可能なのだ。


『うっし。ルーク、乗るぞ。リンダは』

『お構いなく!』

『あいよっ』


 そして渚が近付いてきたバイクに飛び乗り、その後ろにルークが続けて乗って一気に加速して動き出すと、リンダもマシンレッグを起動してバイクに追従して駆けていく。

 それからすぐさま背後から銃声が聞こえてきた。人型ガードマシンたちが先ほど渚たちがいた場所までやってきたようだが、すでに距離を取っている渚たちに銃弾は届かない。

 とはいえ入り口はスパイダーの一機に押さえられているし、残り二機も大通りを移動しながら渚たちを追ってきているはずである。


『それでどうする? とりあえず逃げたけどさ。迎え撃って勝てるもんなのか?』

『火力がな。グレネードランチャーを集中させればどうにかなるが、まともに挑むのはちと厳しい。お前のタンクバスターモードも一機仕留めたら終わりだろうしな』


 そのルークの言葉に渚が唸る。

 確かにタンクバスターモードならスパイダーも倒せるだろうが相手は三機いるのだ。その上に人型ガードマシンを無数引き連れているし、パトリオット教団の男もまだどこかに潜んでいる。


『あの、タンクバスターモードで一機倒せるのなら入り口のを倒して逃げてはいかがです?』


 バイクに併走しながら移動しているリンダの提案にルークが『それもありだがな』と返す。


『そうするにしても、できれば追ってきている二機を離してからにしたい。それに俺としては立ち入り禁止区域に入ってみたいんだが』


 その言葉に渚とリンダのふたりが眉をひそめる。

 その場所に近付くなと念入りに注意をしたのはルークなのだ。


『おい、危ないんじゃないのか?』

『そうだナギサ。あのスパイダーが襲ってくるから近付きたくなかったんだ。けど、今現在進行形でやつらは外に出ている。それも三機だ。ということはここの立ち入り禁止区画は十中八九軍事関係の施設だろうし、護ってるヤツらも今はいない。で、そういうところにはつまり』

『強力な武器がある?』


 渚の問いにルークが頷く。


『その可能性はある。いってみる価値はあるんじゃないか』

『渚、右にレーザー!』

『分かってる。ルーク、しっかり掴まってろよ。リンダ、飛べ』


 唐突なミケの警告だったが、渚も弾道予測線を見てソレをすでに把握していた。だから渚はバイクを瓦礫に乗せて跳ね上げさせてジャンプし、直後に横の通路から飛んできた無数のレーザーを避ける。


『あっぶねえなあ』

『こっちを把握してるのか?』


 それはスパイダーのガトリングレーザーの攻撃だった。


『チッ、人型ガードマシンも来てるな。さすがに運転しながらじゃあ攻撃は難しいぜミケ』

『だったらルーク、コードで繋いでそっちのマシンアイに情報を送る。受け入れて』

『お、おう?』


 ルークがその言葉の意味を把握し切れぬまま頷くと、ミケがマシンアームからコードを伸ばしてルークの防護服に繋いだ。するとルークのマシンアイに無数の情報が表示され始めた。


『うおっ、色んなものが見える。敵の位置も……これがナギサの見ている世界か。反則だろ、これ!?』

『あ、ズルいですわ』


 驚くルークを見てリンダが口をへの字にする。渚から弾道予測線や敵の位置が見れるという話を聞いていたリンダは、実のところそれを羨ましがっていたのである。


『うーん。精度の高い通信機があれば無線でも送れるんだけどね。けどリンダ、それでも君のマスクだと性能不足だよ』

『新しいの買いますわよ』

『無線機か。これを常時使えるなら検討した方がいいかもな』


 ルークがそう言いながらライフル銃で迫る人型ガードマシンを倒していく。リンダもサブマシンガンで応戦しているが、双方の命中率は経験の差を引いてもルークが圧倒的であった。


『渚の射撃が上手いってのは……そりゃあ、センスブーストと合わせりゃ当たるわな。やばいわ、ナギサめちゃヤバい』

『うっせえ。目的地に到着するぞ』

『うし、俺がグレネードで入り口を破壊する! 一気に飛び込め!!』


 ルークがそう言ってライフル銃の銃口下部に付けたアドイン式グレネードランチャーを放つと立ち入り禁止区域に通じる扉を吹き飛ばし、そして三人はそのまま中へと突入していった。

【解説】

多脚型機甲兵器:

 スパイダーの愛称で親しまれるアンダーシティのミリタリーガード。

 メインウェポンはガトリングレーザーであり、その他にグレネードランチャーを複数の弾頭を切り替えながら使用してくる。

 またコマンダータイプであるため、ガードマシンを指揮下にして組織的な行動を取ることもある。

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