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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第079話 渚さんと裏の場所

『それでね。ちょっと気になる情報があったんだ』


 エロ動画の扱いについてルークとミケが渚に一任された後のことである。ミケが突然そんなことを言い出したのだ。それに渚が訝しげな顔をしてミケを見た。


『情報? なんだよ』


 若干イジケ気味の渚がそう尋ねると、ミケが『ここなんだけどね』と言ってタブレット端末のモニターに地図を映し出す。その地図にはとある一点が赤く光って表示されていた。それに渚とリンダは何のことかと首を捻り、ルークが興味深そうな顔をした。


『で、そこがなんだよミケ?』

『多分だけど取引場所なんじゃないかな』

『取引場所?』


 眉をひそめた渚にミケが頷き、それからリンダへと視線を向ける。


『ねえリンダ。クキアンダーシティ内では、通常取り扱わない非合法物品の裏市場……なんてものはあったかい?』

『え? そ、そうですわね。わたくしは近付いたこともありませんけど、そういう場所があるとは聞いたことがありますわ』


 少し考えてからリンダがそう口にした。


『主にアンダーシティ内では禁じられている物品を地上から密輸して、それを取引している方々がいるらしいのですけれども……あの、もしかしてこの赤い光点がアゲオアンダーシティでのそうした取引場所だったということなんですの?』


 リンダの問いにミケが『可能性はあるかな』と口にした。


『それは、ストレージ内の隠しフォルダの中に厳重にプロテクトをかけたマップ情報なんだ』

『ほぉ。そいつはちょいと面白そうだなミケ。そこにかなりお宝が眠っていそうな予感がするぜ』


 ルークがニヤリと笑うと、渚が眉をひそめた。


『ルーク。お前、まだお宝映像が欲しいのかよ。根っからのムッツリだな』

『違うぞナギサ。非合法の取引の現場ということはかなり価値がある物品が置かれている可能性があるってことだ。まあ、確かに少し期待はしているが』

『期待はしてんのかよ!?』


 ジト目で睨む渚にルークはゴホンと咳払いをすると、地図を指差した。


『ともかくだ。ここで漁ってるよりも実のある成果が上がりそうだ。どうだ。今からそっちいってみるか?』


 その言葉に渚も渋々という顔で頷く。コレクションが増えるのは嫌だが、好奇心は働いていた。


『あたしは構わないけど、リンダはどう思う?』

『なんだか分かりませんけど、成果が大きい可能性があるのであればそちらを優先した方が良いと思いますわ』

『おし、決まりだな。コレクション増えるといいなナギサ』

『やっぱり、目的それじゃねえか!?』


 渚の抗議の声も無視して、ミケの映っているタブレット端末を持ってルークは動き始めた。そして、三人はこの場で回収したパーツなどをバイクに搭載させると取引場と思われる場所へと移動を開始したのである。向かった先は地図には立ち入り禁止区域と表示された場所のすぐそばにある倉庫街であった。




  **********




『なかなか怖い場所の近くだな』


 ルークが倉庫街の入り口から立ち入り禁止区域へと視線を向けつつそう口にした。その視線の先にあるのは壁だ。それを渚も眺めながらルークに尋ねる。


『なあルーク。あの先って何があるんだ?』

『軍事関係か都市の機密区画か。まあそんなもんだ。普通に倉庫にも使われていることもあるが、ミリタリーガードがいるはずだから近付くなよ』

『了解。つか、そんな怖い場所をよく取引場所にしたな』


 その言葉にルークは周囲を見渡しながら『そういう場所だからだな』と口にする。


『立ち入り禁止区域とそうでない場所には、セキュリティの境界線があるんだ。恐らくセキュリティのポケットになってる空間を狙って取引場所にしてたんだろう』

『重要な場所の近くなんだからなおさら強化しないといけないと思うんだけど』


 渚のもっともな言葉に頷きつつも、ルークは苦笑する。


『確かにな。けど灯台下暗しとも言うだろ。もしかすると立ち入り禁止区域側の人間を取り込んでいたって可能性もあるしな』

『確かにクキでもそういう話は聞きますわね』

『ま、いつだって穴を開けるのは機械ではなく人間さ。それは昔も今も変わっていないようだね』


 そのミケの言葉に三人は苦笑しながら目標の場所へと向かっていく。そして彼らはガードマシンとも特に接触せぬまま、スルリと目的地まで辿り着いた。


『ガードマシンがいないですわね』

『これがポケットってことか? それで目的地ってアレかよ。ずいぶんとボロっちいけど?』


 そして辿り着いた倉庫を見て渚が眉をひそめながらそう口にする。そこにあったのは他に比べてもボロボロの倉庫だった。


『んー。元から使ってない倉庫を取引場所に利用してたのかもな。よし、入るぞ』


 ルークがそう言って、銃を構えながら倉庫の中へと入っていき、渚とリンダ、それに追尾モードのバイクが続いていく。


『ん?』


 そして倉庫に入る前に、渚は上で何かが動いているような気配を感じたのだが、


(気のせいか?)


 ミケの反応もなく、他の誰も気付いていない。そこから己の勘違いだろうと考えた渚は、一応の警戒をしながらも倉庫の中へと入っていった。

【解説】

立ち入り禁止区域:

 軍事基地や生産工場など、一般市民が入ることを許可されていない場所を立ち入り禁止区域とアンダーシティでは呼称している。なお、立ち入り禁止区域だからといって必ずしも重要な施設があるとは限らないが、セキュリティはミリタリーレベルのため、侵入すれば生きて帰れる保証はない。

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