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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第059話 渚さんと散財

「というわけで帰ってきましたよ局長」


 そう言って部屋に入ってきたルークをライアンが苦笑いして出迎えた。

 テクノゲーターの巣の駆除の翌日、昼前に街へ戻ってきたルークは渚たちと別れてライアンの元へと報告に来ていたのである。


「よおルーク。簡単な話は先に聞いたが巣を掃討しちまったそうだな。俺が頼んだのは巣の発見だった気がするんだが、ずいぶんと無茶したな」

「局長がオスカーを止めてくれてたら、無茶せずに済んだんですがねえ」


 恨みがましそうな顔でそう返したルークにライアンが肩をすくめる。


「それで、オスカーは?」

「あのバカなら病院ですよ。戦いが終わったらそのまま倒れて、渚とミランダの治療がなけりゃあ死んでました。マシンレッグとの接続部が壊死を起こしかけてましたし、もう少しで復帰すら無理でしたよ。後、キメ過ぎてたんで薬抜くまでは復帰はできません。本当に無茶をして……あれじゃあ運良くテクノゲーターを駆逐できてもそのままくたばってた」

「いやぁ、一応言い訳はするけどよ。俺は止めてたぞ。戻ってきたときからボロボロだったし、まさかあの状態でサイバネスト化して武器山盛り担いで黙って行くとは思わねえだろ。本当に女かアイツ」


 そう言ってライアンがため息をついてルークが頭を抱えた。


「ともかく言伝を預かってます。今後は管理局の職員は辞退してフリーで行くからよ。ワリーな局長……だそうで」

「こっちとしては痛手だが、アンダーシティに行けないんじゃあ旨みも薄いからな。ま、仕方ねえ」


 実績のある狩猟者ハンターは、狩猟者ハンター管理局の職員も兼ねて活動することも選択できる。

 隊長として管理局の業務にも協力することが多くなり自由に動けなくなる面もあるが、狩猟者ハンター管理局はアンダーシティの市民IDの枠を持っているために狩猟者ハンターからアンダーシティの市民になるには必要なことなのだ。

 だがサイバネスト化し市民IDを得ることが難しくなったオスカーにはもうメリットはないのだからライアンもオスカーを引き留めるのは無理だろうと理解していた。


「隊長枠が減ったのは厳しいですがね」

「候補はいるから、そっちに掛け合ってみるさ。クキシティは首都の直轄だ。強引に他の街から引っ張ることもできるしな。まあ、ルークも今回はご苦労だった。今は有能なヤツはひとりでも欠けて欲しくない状況だからな」

「そうですね。それとオスカーがウチに入りたいと言ってきたので断っておきましたよ。まだ諦めてないようだから、局長からも手を回しといてもらえます?」


 その言葉にライアンが眉をひそめる。


「お前にオスカーまでくっ付いてるとバランスがなぁ。それにリンダに手を出されると不味いわな」

「ええ、ナギサの情操教育にもよろしくない。ナギサもオスカーに気に入られたから気を付けないと」

「そりゃあ難儀だ。あいつにあっちの趣味はないと思ってたんだが」

「頑張って愛してみると言ってました」

「このまま死なせてみないか、あいつ?」


 ライアンの返しにルークは苦笑いする。

 オスカーは気に入った相手には男でも女でも手を出してしまう癖があり、過去に何度となくトラブルがあったのだ。そのことを思い出したふたりはため息しか出なかった。面白い人物ではあるのだが。


「ともかく、オスカーの件は預けます。それよりもナギサです。あいつには今回ずいぶんと助けられましたよ」

「ははは、お前もかよ。まったく」

「それだけの力がある。やはりハングオブグローリーは強力な遺失技術ロストテックですしね。まあ、彼女はそれだけではないようですが。それにリンダもナギサというアタッカーと組み合わさることでずいぶんと動きが良くなりました。良いコンビですよ、あいつらは」

「そうか。だったら、ますます手放せないな。一週間足らずでネスト掃討戦を二回やり遂げるルーキーなんぞそうそういない」


 その言葉にはルークも頷く。今回のシャッフルで相当な数の狩猟者ハンターがやられたこともあり、渚は彼らに取っても重要な戦力となっていた。


「で、そのナギサたちはどうした? 一緒に帰ってきたんだろ」

「ええ、街にはいますよ。オスカーを病院に置いてからあいつらはビークルの改造に行ってます。ランドゲーターの装甲を装備させるんだと言ってね」




  **********




 そしてルークとライアンが管理局で話している頃、一緒に街に帰ってきた渚たちはといえば、リンダが懇意にしている機械人オートマータのデウスがいる機械市場に立ち寄っていた。


『ナルホドネエ。らんどげーたーノ装甲ヲびーくるニ使ウノカイ』


 デウスの言葉に渚が頷く。彼女らの前には回収してきたランドゲーターとテクノゲーターの装甲板が置かれていた。


「ああ、こいつで頼むよ。確かテクノゲーターの装甲も使うって聞いたけど、いいんだよな?」

『ソウダネ。てくのげーたーノ装甲ハ脆イケド、らんどげーたーノ装甲同士ヲ繋グ穴埋メニハ使エルカラネ』


 デウスの言葉に渚が「へぇ」と感心した顔をする。


「デウスさん、お願いできます? 渚がどうも早く使いたいらしくて」

「いいだろー。ビークルを置いて移動するのもなんか不安だし、今のままだと防御面が気になるんだよ。ミランダだって、あったほうがいいよな?」


 渚の言葉に後ろに控えていたミランダも頷く。


『そうですね。マスターたちの安全を守るためにも必要ではあると思います』


 その言葉にはデウスがミランダとビークルを見て少し考え込む。


『ウーン、前回ノすたんぽーるモ自衛ニハ適シテルンダケドネ。ダッタラドウダロウ? せんとりーがんデモ付ケテミルカイ?』

「ですけど、あれって精度が低い割にお高いのでしょう? 今回の改造代で報酬もかなり飛びますし、今のわたくしたちでは買えませんわよ?」


 デウスの提案にはリンダが難色を示したが、デウスはミランダを指差して『彼女ガイルジャナイカ』と返してきた。


「ミランダですの?」

『ソウサ。基本的ニこすとガ割高ナノハ制御AIダカラネ。ソノめでぃかろいどガ左右ノあーむト同期デキテイルノナラ補助腕サブアームデモ付ケテ適当ナ銃ヲ持タセルダケデ代用デキルヨ』

「おお、その手があったか」


 渚が手をポンと叩く。

 そして渚たちはビークルの上部にデウスのところで買った補助腕サブアームを取り付け、必要に応じて銃器などを装備させられるようにしたのであった。

 なおこの改造で今回の報酬のほとんどが費やされたため、後で合流したルークからは少しばかりうめき声が上がったという。

【解説】

セントリーガン:

 対象物が近付くと狙いを定めて撃ってくれる自動兵器。

 購入金額が高く、リンダ曰く誤射も多いとのことであったが、補助腕サブアームに銃をもたせてミランダを同期させることにより代用は可能であった。

 また通信可能な状態であればミケでも渚でも操作はできるようである。

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