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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第052話 渚さんとワニワニワニワニ

『ああ、そうだ。その位置なら周囲から確認はできない。ここに置いておこう』


 ルークがそう指示をしてビークルを止めたのは岩と岩との間の、ちょうど全周囲からの死角となる場所だ。そこはクキシティとハニュウシティの中間、カゾ大地と呼ばれる地の一角であった。


『これで機械獣には襲われないのか?』

『完璧とは言わないが、防衛手段をビークルは用意してるし、ミランダ……何かあれば分かってるな』

『はい。対処可能であれば戦闘を。不可能であればビークルと私のアイテールを廃棄する……でよろしいのですよね』


 ミランダの言葉にルークが頷く。


『連中は有機物の類とアイテールに反応する。人間がいないなら明け渡すのも自衛手段のひとつだ』


 ルークの説明に渚はアーマードベアに襲われたビークルのことを思い出していた。


『ああ、ダンのおっさんらのビークルもそうだったな』

『そうですわね。慌てて逃げたのであのビークルは破損して無理矢理奪われましたが、ミランダがいれば冷静な判断で対処もしてくれると思いますわ』


 リンダがそう補足すると、渚も頷く。


『それで、ここからはルークとあたしらで分かれて探索だったよな』

『そうだ。それでここまで戻るにはワッペンの移動経路の記録を頼りにするんだ。』

『確かジャイロセンサーで移動の距離と角度を記録しているんだったっけか?』


 ワッペンをもらった際の簡単なレクチャーを受けたときに渚はそんな機能が付いていることも聞いていた。


『そうだ。まあ、RNSと違ってズレることも多いんだけどな。目安にはなる。それで、ここからは俺たちはバイクで移動する。リンダはナギサに乗せてもらえ』

『分かりましたわ』

『ミランダは留守番頼むぜ』

『はい。何かあれば、この腕とスタンポールで対処します』


 そのやりとりを見てルークは渚とリンダを見て口を開いた。


『それとふたりとも、バイクでもテクノゲーターからは逃げきれない。今回お前らを選んだのはナギサの目が眼爺に近いと聞いていたからだ。発見は慎重に。気を付けて動けよ』




  **********




 そして渚とリンダはふたり乗りの一輪バイクでその場を離れ、探索を開始する。

 候補地はいくつかはすでにルークから指定はされている。巣となりそうな既知の天遺物はいくつかあり、まずはそれらを見回る予定であったのだ。

 もっともその数は少なくなく、また岩場の陰や自ら穴を掘って巣を作るケースもあるのだとの説明もあった。


『ここも違うみたいだな』


 地中に埋まった天遺物を離れた位置から見ている渚の言葉に、同様の視界の映像をタブレット端末で確認しているリンダも頷いた。 中には入っていないが、見張りもなく、また近付いた形跡もない。


『テクノゲーターの姿もまだ見かけていませんし、この辺りから少し離れた範囲から見た方がいいかもしれないですわね』

『そうだな。アーマードベアと同じように巣に大量にいるもんなんだよな?』

『ええ、巣の中にいるアルケーミストは彼らにとってとても大切なものです。護りを固めているのは間違いないですわ』


 その言葉に渚がなるほどと頷く。それから二人がその場を離れようとしたとき『渚、リンダ。何か動いた』とミケの声が端末から響いた。

 その言葉にリンダが眉をひそめ、渚の視界にミケから動いたと思わしきポイントのマーカーが表示される。


『どちらですのミケさん?』

『リンダ。右手の砂漠の、あの岩の横だ』


 渚がミケの指定した場所を指差す。


『今は微動だにしてませんわね』

『だな。まあ、ひとまずは確かめて見るさ』


 渚がそう言って持っていたライフル銃を構える。

 その動きに反応したのか同時に砂が動き、渚はソレに対して弾道予測線を合わせトリガーを引いた。そして弾丸がまっすぐに飛び出て狙い通りの場所へと直撃するが、


『弾かれた!?』


 チィンッという音と共に撃った銃弾が弾かれたのだ。

 同時に砂を払ってワニのような機械獣が飛び出てきた。

 さらにはその後ろから同じ機械獣が三体姿を現した。


『テクノゲーターですわナギサ』

『分かってる。弾丸を弾いたか。面倒だな』


 そう言いながら渚は姿を見せたテクノゲーターにさらに狙いを定める。


『弱点は首の付け根なんかの関節部。一番の弱点は口の中だったか』


 それは事実であるものの、結局は狙い辛いために正面から数撃って当てるのが狩猟者ハンターたちの常識となっていた。


『こっちも補正はするけど、確定には至らないから気を付けて』

『オッケーミケ! リンダ、お前は?』

『引きつけますわ。わたくし、この機械獣は得意なので』


 そう言ってリンダがテクノゲーターへと接近し、二体を引きつけて離れていく。


『ああ、そうか。あいつ、逃げながら撃てるから』

『渚、来てるよ』

『忙しいなあ』


 渚がそう返しながらライフル銃を撃つが、直撃した瞬間にその表面の装甲が緑に光って弾丸が逸れていく。


『近いね。渚、ショットガンだ。これ以上近付かれると切り替えのタイミングが難しい』

『しゃあねえ』


 渚はそう言ってライフル銃を左手に持つと背負っていたショットガンを取り出して右手で構えて撃った。


『おし、一体やった。で、センスブースト!』


 一体が吹き飛び、もう一体が足下から食いつこうとしたところで渚はセンスブーストを使い、そしてメテオファングが装着された補助腕サブアームを振り下ろす。接触した牙に装甲は一瞬緑の光を放つが、それはメテオファングのアイテールライトによって弾かれて、そのまま貫かれた。

 そして、どちらも倒した渚がリンダの方を見ると、リンダもまた二体目のテクノゲーターを倒しているところであった。

【解説】

テクノゲーター:

 ワニを模したフォルムの機械獣。

 電磁流動装甲に覆われており、対装甲弾も弾き、地面を滑って高速で接近してくる。攻撃手段はあぎとであり、この機械獣によって足を奪われた狩猟者ハンターも少なくない。

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