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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第1章 狩猟者(ハンター)への道
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第030話 渚さんと生存判明

『うん。そうだ。そのまま寝かせておいて。ミランダのナノマシン治療を受ければひとまずは死ぬことはないから、今はなるべく保たせないと』


 そう指示するミケに従って、渚はひとまずマイクを楽な姿勢で寝かせている。

 戦闘は終わったが、渚のマシンアームはタンクバスターモードの使用によりその能力の多くが機能不全に陥り、現在ナノマシン治療ができない状態にあった。

 今、渚にできるのはスキャンモードでマイクの状態を確認しながら、隊に戻ったリンダがミランダたちを連れてくるのを待つだけであった。


『ど、どうなんだ? 俺、大丈夫か?』

『んー、このまま放置してれば死ぬらしいけど、うちのメディカロイドに早いところ治療させればなんとか。その後は街の医者に見せればって感じだな』


 ミケから聞いた内容をかいつまんで話す渚の説明にマイクの顔が悪くなっていく。

 らしいと早いところとなんとかのコンボに己の命がまだ窮地を脱していないと理解し、不安な気持ちが増してきたのであった。その様子に渚が笑う。


『なんだよ? 死ぬつもりだったやつがビビってんじゃねえっての』

『いや、それを言うなって』


 マイクは追い詰められたところで自決しようとしたらしく、戦闘後リンダに思いっきり怒鳴られていたのである。放置しておくと本当に死にそうだとミケに言われた渚が慌てて止めに入ったのだが、マイクは足手まといの自分を殺すことでリンダをその場から逃がそうとしていたのであった。


『ま、リンダもちょっとどうかとは思うんだけどな』


 渚が到着しなければどちらも死んでいたかもしれない。

 リンダがマイクに怒ったように、渚としてはリンダに文句を言いたい気持ちもあった。その渚にマイクが苦笑する。


『お嬢は少しナイーブだからなぁ……まあ、それはそれとしてさ。女の子のために死のうとした俺ってカッコ良くねえ?』

『死んでればな。あと、アーマードベアの増援が来たら、さすがに覚悟はしといてもらうしかねえわ』


 そう言いながら、渚は自分たちが来た方角とは真逆の道先へと視線を向けた。

 そこには先ほど倒したアーマードベアたちが転がっている。捕縛弾で動きを止められていた二体の始末も終えているし、渚が来るよりも前にリンダが対装甲弾で仕留めたアーマードベアも動きを停止している。もっともさらなる増援がないとも限らないのだ。


『そいつは分かってるさ。狩猟者ハンターは生き汚く、だが潔くってな。ま、そいつを守ったから俺は生きてるわけだが』

『ああ、生きて捕まるってこともあるんだな』


 渚がここまでに聞いたリンダやダンの話の中でマイクたちの生存はそもそも考慮されていなかった。そのことに違和感を感じた渚だが、マイクは『運が良かっただけさ』と返す。


『アルケーミストがまだ生まれてなかった……んだ。多分、連中も移動が急でゴホッ』

『アルケ? あーいや、もう喋んな。口から血が出てるし。ほら、救援も来たしな』


 そして渚が指差した先にこちらに向かってやってくる二台のビークルの姿が見えた。その前にはリンダとダンやジョニーがいて、駆け足でこちらに向かってきている。


『ハァ、命拾いしたか』


 マイクが血を吐きながらも嬉しそうに笑う。そして、ふたりは無事強行隊へと合流し、それからマイクはすぐさまビークルの中に収容されてミランダの治療を受けたのであった。




  **********




『ナギサ、マイクの様子はどうだ?』

『麻酔で今は寝てるよ』


 ビークルから出てきた渚が、ダンの問いにそう答える。


『うちのメディカロイドのミランダが言うには峠は越えたそうだ。あとは早く街について治療を受ければ問題ないらしいぜ?』


 その言葉を聞いたダンが、後ろにいたジョニーに『だ、そうだ』というと、ジョニーがホッと一息ついて肩を落とした。


『腹に一撃もらってたからな。あいつ、マジで終わったかと思ってたぜ』

『まったく、よく生きてたなふたりとも』

『へへ。いやまあ、死に損ないましたね。危ねえ危ねえ』


 ダンの言葉にジョニーが笑う。それからリンダが渚に近付いて右腕を見た。


『ナギサ。腕のほうは大丈夫なんですの? さっき動かないって言ってましたわよね』

『ああ、普通に使う分には問題ないとも言っただろ。自己修復が済めば、元通りだしさ』


 渚がそう言って右のマシンアーム『ファング』をブンブン振って問題ないアピールをした。先ほどの戦闘でのタンクバスターモードの使用により『ファング』の能力は一時的にほとんどが使用不可能になっていた。


『あの大きくなって光ったゲンコツのせいですわね』

『ああ。ファング内のナノマシンを過剰供給させて生み出したアイテールライトをさ。半物質化して叩き込むモードらしいんだよ。まあ、やり過ぎて少し休憩ってだけさ』

『あれも一応、メディスン系統のシステムを応用しているんですのね』


 リンダが感心した顔をする。

 そのリンダの言葉に、そばで丸くなっているミケが目を細めて口を開く。


『タンクバスターモードはファングの機能に著しく負荷を強いるからね。さっきは加減したから短時間で元通りだけど、さっきのは正直バスターモードで十分だったと思うよ』

(あのデカくはならないやつだな)


 バスターモードはアイテールを消費して、アイテールライトを拳に纏わせる形態だ。先ほどの戦闘でも最初の一体はバスターモードを使って倒している。接近戦でのコアを狙った攻撃であれば、それだけでも十分な威力を持っているのだ。


『そうだよ。獅子型機械獣の牙と同様のものだ。範囲こそ狭いけど威力は高いし、腕とチップの演算処理だけで対処できるから負荷も少ない。ま、センスブーストと同じく長時間の稼働は難しいけどね』


 その言葉に渚が改めて自分の右腕へと視線を向けた。一応渚の意思通りに動かせはするが、今は高出力を出せないし、飛ばすことも、バスターモードの使用もできない。


(タンクバスターモードも威力は弱めでやったのに、やっぱり動かなくなるんだな)

『回復時間は短くなっているけど、アレはあくまで緊急用の手段だからね。普通に動かす分には問題ないんだから文句言わない』


 ミケの言葉に渚が『ムゥ』っと唸った。

 そして、そんなやり取りをしている渚の前でダンがジョニーと話を続けている。


『それにしても、お前らが生き残ってるとはな』

『運が良かったんですよ。連中、ここにきたばかりでアルケーミストができていなかったみたいだ。だから俺たちやまだ他にも生き残りがいる』


 その言葉にダンが目を細め、アルケーミストの名が気になった渚や、そばにいたリンダもジョニーを見た。


『ダン隊長。ダニエルとマッシュがまだ生きてるんですよ』

【解説】

小型グレネードランチャー:

 リンダの所持している小型の二連装グレネードランチャー。

 銃口が短いため、射程距離も短いが、取り回しも良く、別種類の弾頭を装填できるため、応用性が高い。

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