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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第7章 地獄輪廻界『群馬』
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第279話 渚さんとウォーマシンとのタイマン

 渚が窓を突き破り中庭に躍り出たのと同時にウォーマシンも動き出し、偽装形態を解除して3メートルのロボットへと変わっていく。そして片方の腕のライフル銃は渚に、もう片方を建物の中のリンダたちに向けたが、


『させるかよ』


 それは渚の両腕と十本の補助腕サブアームが握るライフル銃から放たれた弾丸によって止められた。箱庭の世界ミニチュアガーデンによって未来予測を行う渚の攻撃は的確にウォーマシンの行動を掴んでいたのだ。対してウォーマシンも同様に未来予測を行なっていたのだが、本来『未来予測』とは不可思議な力を用いたものではなく、統計学とカオス理論などから未来の事情を予測するシミュレーションに過ぎない。そして未来予測を使用した者同士がぶつかり合えば、より正確な未来を勝ち取るのは処理能力に優れた方であるのは言うまでもないだろう。


『そうだ。お前の敵はあたしだぜ!』


 渚の攻撃を受けたウォーマシンがリンダたちへ銃口を向けるのを諦めて銃弾を避けるために壁の裏に回った。

 その様子に渚が目を細める。予測した先でウォーマシンは両腕の補助腕サブアーム十六本を広げようとしていたのだ。同時にアイテール変換を行い、渚と同様にライフル銃を生み出そうとしているようだった。


『甘えよ。キャットファング!』


 だが、渚もそれを許すつもりはない。即座に右のキャットファングからブースターをせり出して炎を噴射し距離を詰めていく。その様子にウォーマシンが展開した二本の補助腕サブアームを接近してきた渚に向けてカウンターを狙うが、


『センスブースト!』


 渚が高速の世界に突入し、そのままキャットファングの先から伸びているメテオファングで補助腕サブアームを破壊する。とはいえ、それが本命の攻撃ではないのを渚は把握していた。ウォーマシンの右手からすでに緑の光が漏れていたのだ。


(タンクバスターモードで仕留めるつもりか。けど、こっちの右腕には気づいてないな)


 渚の今の右腕は『ファング』ではなく、ミケによって進化した『キャットファング』だ。そしてウォーマシンがタンクバスターモードに入るのと同時に渚が肘部から先のキャットファングをワイヤーを伸ばしながら射出して緑光の拳に肉球を押し付ける。


(接続できた。逆流しろ!)


 渚の意思に呼応して肉球が輝くとウォーマシンの右手に構築された緑光の拳が霧散して光の粒子に変わり、吸い込まれる様に右腕『ファング』へと戻って右の補助腕サブアームを巻き込みながら爆散していった。


(よしっ)


 渚が心の中で頷く。キャットファングに搭載されている肉球はアイテールの指向性をハックする極めて強力な兵器の一種だ。さすがに高速射出されたアイテールレーザーは曲げることぐらいしかできないが、直接接触すれば制御を完全に乗っ取ることすらも可能なのだ。


『wきscふぉ!?』

(何いってんだか分かんねえよ)


 直後にウォーマシンの左腕が動き、さらには左側の無傷な八本の補助腕サブアームも渚に仕掛けようと動き出した……が、それはすでに遅い。

 センスブーストで思考を加速させている渚は己の補助腕サブアームに持たせているライフル銃を一斉に放ってウォーマシンの補助腕サブアームの関節部をすべて破壊し、さらには左腕が攻撃動作に入る前にメテオファングで左腕を肩部から斬り飛ばした。

 その時点で戦いの決着はついた。ウォーマシンにもまだ闘う手段は残っているが、渚に油断はない。ウォーマシンが次に何をしようとしているのかも未来予測で把握済みだ。


(胸部から熱量が増加か。コアを自爆させる気だな)


 すでに勝利は不可能。であればとウォーマシンがとった行動は諸共の自爆だ。その状況に対して渚が取った行動はとっさにキャットファングのタンクバスターモードを発動させることだった。


(収束して抉り、くり抜いて掴むように)


 しかしその発動はこれまでとは違っていた。巨大な拳は発生せず、ソレは渚のものよりも一回り大きい程度。けれどもその指先の爪は異様に長く伸びてウォーマシンの装甲を容易く貫き、


(貰うぜ)


 グルリと渚が手首をひと回転させて胸部から背部までを抉り取るとキャットファングからカートリッジが勢いよく射出された。


『dくぉっfっp!?』

 

 その事実を把握したウォーマシンが蹴りを放つ。コアとの接続が切れて自爆が解除されたが、それでもまだ数秒であればウォーマシンは稼働し続けられる。そして蹴りとともに脚部内に仕込まれたアイテールナイフが飛び出して渚を斬り裂こうとしたが、ウォーマシンの兵装を元から知っていた渚がそのような攻撃に引っかかるはずもなく、即座に身を捻って一撃をかわし、


(遅えッ)


 後方へと跳び退がるのと同時に腰に下げた手榴弾を放り投げ爆発で牽制し、八本の補助腕サブアームのライフル銃全てを集中砲火させてウォーマシンを蜂の巣にしていく。


『ふぃどw???wspspwsじゅっふぃk!?』


 なすすべもなく、ウォーマシンが破壊されていく。

 元より渚のライフル銃の弾丸は機械獣用の対装甲弾。ウォーマシンの装甲は並みの機械獣よりも高い硬度を持つが、さすがにコアを失った状態で集中砲火を浴びれば大破するしかない。


『反応消失。偽装もないか。まあさすがにウォーマシンでもそうなるよな』


 センスブーストを止めた渚が、動かなくなったウォーマシンを見ながらそう独りごちる。それから右手のウォーマシンから抜き取ったコアを見た。

 

『それにしてもコアか。こりゃいいもん貰ったかもな』


 渚のキャットファングがウォーマシンのコアに反応している。キャットファングは元々ウォーマシンの右腕だったのだから、コアがあれば出力はさらに上昇するだろう。


『さて……と』


 その直後である。ドームとは逆方向から二本の緑光のレーザーが渚に向かって放たれ、渚は肉球を前に出してそれを弾いた。そしてレーザーはドームの一部を焼きながら空に消えていった。


『こんだけ騒いだなら仕方ないけど、やっぱりそうなるよなぁ』


 眉をひそめながら渚が周囲を見渡した。グンマエンパイアの建造物から出てきた大量のデキソコナイたちが警戒するように渚を取り囲み、さらに建物の屋上には二体の巨人の姿も確認ができた。


『デキソコナイの団体さんにウォーマシンが二体か。こりゃあ少々骨は折れそうだけど』


 そう言って渚が補助腕サブアームと両腕の銃口を全周囲へと向けながら口を開いた。リンダとミケ、マーシャルはすでにドームの中に入っている。であれば、ここで渚がするべきことはひとつだ。


『リンダたちが戻ってくるまで、こっから先は通さねえよ?』

【解説】

タンクバスターモード・シャインフィンガートルネード:

 タンクバスターモードを集束させ、より出力を高めた技。

 ミケによって強化されて処理能力が向上したために使用が可能となった(ネーミングが)極めて危険な技である。

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