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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第3章 ドラゴンロード
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第118話 渚さんとソロプレイ

 メテオライオス。

 それはアイテールライトを纏う牙と爪、タテガミを持ち、圧倒的な攻撃力と防御力、それに高い機動性を併せ持つ、中型機械獣の中でも最難敵のひとつに挙げられる種の名である。

 だからこそベテランであるルークもウルミもその名にはたじろいだ。ブレードマンティスのように対処できる相手ならばともかく、メテオライオスはタテガミを模した高出力のアイテールシールドによる防御があるし、牙と爪の貫通力はあらゆる装甲を貫く。相対しても勝ち目はなく、左右や背後などから狙う以外にはそもそもダメージを与えられない。

 取り囲んで火力を集めるか罠を仕掛ければどうにか倒せるかもしれない……というほどの相手だ。


『まさかメテオライオスがこの先にいる可能性が……あると?』


 険しい顔になったルークの問いに渚が頷く。


『どうして分かるの?』


 それにウルミが尋ねるが、渚は『幅だよ』と返した。


『メテオライオスとはやりあったことがある。サイズは記録してるから、まあそれなりに可能性は高いと思ってもらっていいと思うよ』


 その言葉にウルミが目を丸くした。サイズを記録している以前にメテオライオスと戦ったという事実がウルミには驚愕であった。その様子にルークが苦笑して口を開く。


『ナギサのマシンアームは遺失技術ロストテックなんだ。だから機械獣の記録もできるんだろう。で、ナギサは戦ってメテオライオスに勝ってる。運良く……だったらしいけどな』


 ルークの説明にうんうんと渚が頷く。あれはとても実力で勝ったとはいえないと渚は思っていたし、だから次に戦っても勝てると思われてるのも困るのだ。それからウルミが『なるほどね』と口にする。


補助腕サブアームに付いてるアイテールナイフ。あれはやっぱりメテオライオスのメテオファングだったのね。まさかとは思っていたけど』


 そしてウルミも一応の納得はしたようであるが、問題なのは……


『あの……それで、なんで密閉されていたはずのこの通路をメテオライオスが通ったんですの? おかしいですわよね?』

『さてな。恐らくは俺たちが通ったところとは別の入り口がどこかにあるんだろう。そこからもう外に出ていて、百鬼夜行と共にこの場から離れていればいいんだが……』


 実際に百鬼夜行が埼玉圏から離れていったのは確認できているのだから、そのルークの予想は普通に考えれば可能性は高い。もっとも渚はメテオライオスが恐らくは基地から来たのだろうということを知っている。そして基地はすでになく、渚が唯一知る出入り口も閉じられていたことも。


『まあ、恐らくは基地内の非常口が結局バレたんだろうね。あのとき、結構ギリギリだったのかもしれない』


 ミケの言葉に渚がブルっと身体を震わせた。あの獅子型の怪物が逃げてる途中に追ってきていたら間違いなく渚は死んでいただろう。


(コワッ。それでこの通路に入って来たところで……基地が爆発したのか?)

『うん。となるとこの通路に閉じ込められた可能性もあるけど……不思議なのは出口が破壊されていなかったことだ』


 渚が先ほどの出入り口の扉を思い出す。当然壊されてはいなかったし、内側から破壊の跡もなかった。メテオライオスは実際に基地内の扉を破壊していたのだから、壊せないわけはないと渚は思ったのだが……


『もしかすると別の出口が見つかったのかもしれない。そうなると、もう中にはいない可能性はあると思うけど……どうしようか?』


 ミケの言葉に渚は眉間にしわを寄せて考え込み、それからルークに視線を向けた。


『なあ、ルーク。メテオライオスの感知能力ってどんなもんなんだ?』

『ん、ああ。そこまで高くはないはずだ。普通の機械獣と同じ程度だった……かな?』

『そっか。じゃあさ。まずはあたしひとりで行ってみるよ。みんなは一旦戻ってくれ』

『ちょっとナギサ、何を言うんですの。危険ですわよ!?』


 その言葉に渚は自分が纏っているマントを揺らした。それはパトリオット教団の男と戦った際に手に入れた光学迷彩マントだ。


『こいつは機械獣の目も背けるらしいし、ひとりで行く分には気付かれないと思うんだよ。で、様子を見て駄目だったら逃げ帰ってくるさ』

『確かに……それはそうでしたわね。ですけど』


 リンダが心配そうな顔をするが、ルークは渚の言葉に頷いた。


『そうか、分かった。まあ、気をつけろ』

『ルーク……』


 リンダが眉をひそめたがそれ以上は何も言わず、ウルミもルークと渚が良しとしているのであれば……と異論を挟まなかったため、その提案は受け入れられて渚は仲間と離れてひとり先へと進み始めた。

 ひとまず分かれ道はスルーし軍事基地の方へと向かった渚だが、その先は砂に埋もれて行き止まりとなっていた。




  **********




(しっかし、忍び足もお手の物だな)

『戦闘技術だけなら一流の戦士だからね。使い込めば自分の技術として馴染みもするよ』


 渚がミケと脳内会話をしながら、その場所に立っていた。

 通路の先は天井が崩れて砂に埋もれていた。その内部を補助腕サブアームを砂の中まで伸ばして確認していたのだがミケが『駄目だね』と口にする。


『砂の中も鉄骨や瓦礫が積まれていて、残念だけど掘り進めていくのも無理そうだ。やはり基地までの道は閉ざされたと考えていいね。まあ、そもそも基地自体がもう残ってはいないだろうけど』


 それは元々予想していたことだったので、渚も特に落胆はなく頷いた。


(了解。ところでミケさ)

『なんだい?』

(あのライオン野郎と実際に戦いになった場合にさ。あたしらで勝てるのか?)

『そうだね。状況次第だとは思うけど……この通路の中限定でならば一体だけは倒せると思う。タンクバスターモードでゴリ押すことができるからね』

(まあ、確かに以前は打ち勝てたしな)


 正面から打ち合えば出力に勝るタンクバスターモードで勝つことは可能だろうと。けれどもそれも一度きりだ。メテオライオスが複数体いた場合には対処ができない。それからミケの言葉に渚が眉をひそめつつも頷き、踵を返した。


(やっぱり見つからないのが一番だな。それで、ここに来るまでに分かれ道はふたつあった。とりあえずは近い方から探索してみようか)

【解説】

戦闘技術:

 渚の戦闘技術は銃器の扱いや近接格闘などだけではなく、潜入技術や工作技術など多岐に及ぶ。普段は表に出ずとも必要があれば、それらは自然と渚の力として表に出るのである。

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