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永遠のユーフォリア  作者: ノノ
第一部 白の少女
2/9

白い部屋

 わたしの名前は、桂木美穂かつらぎみほ。年齢はピチピチの18歳。

高校を卒業して大学に入学し、さあ新生活だ!という季節、わたしはトラックに引かれ病院に緊急搬送され治療されたが、わたしは植物状態になったのだ。


 母と兄はなぜ美穂が、と呟いて涙を流し、父は涙を浮かべ黙ったまま俯いていた。でもわたしには意識はあった。声が出ない、手が動かない、身体が動かない、すぐにでも、家族に声を掛けたいのに、触れたいのに、なにもできないわたしはそこにいた。


 母は毎日のようにわたしに会いにきて、家での出来事、テレビの話、様々な話をして最後になると母は涙を流し「また来るねと」呟いて帰っていく日々。

わたしはそんな母を抱きしてごめんねと言いたくて、でも言えないもどかしい辛い日々。父と兄は休みの日になると母と一緒にきて3人で多くのことを話してくれた。



手が届く場所にいるのに、すぐそこにいるのに、わたしの意思では届かない。



―――お父さん、お母さん、兄さん、わたしは・・・ここにいるよ。




とぼそっと呟くと白い部屋で蹲り小さくなっていた。







無音と無機質な白い部屋。


 わたしはどれだけ、座り込んでいただろう。数分、数時間、数日、数年、正直わからない。

お腹も空かない、眠気もない、ただぼっとしていた。家族との日々をずっと思い出しては、涙がぽろぽろと落ちていた。ああ、あの日々に帰りたいよ・・・。


わたしは酷い顔していた。


 ふと、化粧台の鏡に映った自分の姿に苦笑いを浮かべる。只々、酷い顔だ。情けない自分の顔を両手で叩き、わたしは立ち上がろうとすると盛大にすっ転ぶ。身体全体に痛みが走り、涙目なりながら再び起き上がる。



―――もう、泣かない。下を向かない。あの日々は、もうここには無い。いまを、この時を生きるんだ。



 身体を心を奮い立たせ、起き上がると化粧台の鏡に映る姿は本当に酷い。長いロングの白髪はボサボサで、肌は荒れている。女の子としてこれはヤバイ。なんとかせねばと、キョロキョロと部屋を見渡すが洗面所らしき場所はないようだ。


 部屋には化粧台、クローゼット、テーブル、椅子、ソファー、ベッド、が10帖程の広さの部屋に置かれている。全て真っ白で目がおかしくなる。

 そういえば、わたし女の子なのに真っ裸で仁王立ちしていることに今更気づき、クローゼットの扉を開き服を探すことにした。



わあ、シルクの白い下着!



 手に取って呟くがやはり声がでないや。口は動くのに声がでないから不思議、とゆうかこの白い部屋自体が不思議空間であるため、あまり気にしないでおこう。気にしたら負けな気がするのだ。

下着を履き、肌触りは最高、今まで着てきた下着なのど比べ物にならない良いシルクの生地だ。そして、肌着も白のシルク、最高の品質!うひょひょう!


 テンションがグングン上がる中、わたしはブラジャーがいらないことに気づく。

うん、あれだ、わたし、小さいし、幼女だし、童女だし、ま、まな板だし、い、いらないのだ。



しょんぼりなりつつわたしは自分の胸を触り、はうとため息をついた。



 前の体はバン、キュ、ボンで良いプロポーションだったのにと思い老けながら、クローゼットの中から服を探す。すると、白のストッキング、膝上ぐらいのスカート、シャツ、上着にモコモコのフード付きローブがありそれらを着込む。



うん、真っ白だ!



 もうここまで白いと関心してしまうもので、心は晴れ晴れしい。

自然と笑顔がこぼれる。

なんだか、数年ぶり笑った、不思議な不思議な気分。


 白い部屋の扉の前に向かいドアノブを握る。すると、この部屋が突如揺れ始める。ガタガタと家具が揺れ、徐々に徐々に振動が強くなる。部屋の至るところからギシギシと音が響く。わたしは、じっと握ったドアノブ見つめた。



「―――まだ、怖いかい?」



 ガタガタと揺れる部屋の中で幼い少年の声が木霊した。誰も居ないはずの部屋から人の声がした。

恐る恐る振り向くと、金髪で翡翠のような瞳した少年は笑顔をわたしに向けていた。



「怖いかい?」



 目の前の少年は、笑み浮かべ問いかける。なにが?と思う。でも握ったドアノブを握り締めドアを見つめる。この先になにがあるかわらないけど、なにが起きるかわからないけど、行かないとダメな気がするんだ。



 怖いけど、怖いけど・・・でも行かないと、ダメな気がするんだ。



「そうかい・・・君は行くんだね」



優しい声がわたしを包み、うんと頷いて少年に背を向ける。



「旅にでる、君に幸福を―――」



ドアノブを捻りドアを開くと眩い光に包まれ、わたしは白い部屋を後にした。


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