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陰日向ニ磨獣ト化ス  作者: 本間・ギラファ・章裕
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序章~ラウェイに降臨した男~

 20××年頃


 ミャンマー|(旧 ビルマ)にて、格闘技用のトランクスを穿き、拳にはボクシンググローブを着けずにバンテージと呼ばれる拳を最低限の保護をし、また握りやすくし打撃力を高める包帯を両手共に巻いている半裸の男達がリングの上で殴り蹴り合っていた。


 この格闘技を「ミャンマーラウェイ」と言う。単にラウェイと呼ばれたりする。

 かつては、「ビルマ拳法」、「バンドー」と言う風にも呼ばれていた事があった。


 ルールは、日本でムエタイを参考にし競技化した打撃系格闘技「キックボクシング」

 そのキックボクシングの源流となった、タイの国技である「ムエタイ」に近く見えるかもしれない。

 しかし、その二つと違う所は、競技強度が激しい分類にある上記二つから更に過激になっている。

 上記の通り、拳にはグローブを着けずにバンテージのみの装備。

 有効打に頭突き、金的、背面攻撃、組み付き、投げ技を解禁。 勝敗はKOか相手の戦意喪失のみ。


 ミャンマーでは、この格闘技が脈々と賭博としても受け継がれてきている。


 ここで殺人にも近い闘いを繰り広げている半裸の男達は、一見細く見えるが、決して華奢ではない。

 絞り込まれ、柳の様にしなやかで有りながら、時として鋼鉄(はがね)へと変貌する肉体美を持った強靭(つよ)き身体だ。


 その中で、左肘打ちから頭突き、そして右膝蹴りのコンビネーションを喰らった男が血だらけの顔に虚ろな目を在らぬ所へ向けながら倒れ込んだ。

 そこで、審判が選手同士の中に割り込み、その試合が終了した。


 手際良く次の試合の準備がされ、その時が来た。


 東の方角から入場した男は、他の選手より二回り大柄な体格をしていた。推定体重は80後半から90kg台位ありそうだ。他の選手同様しなやかな柳鋼(やなぎがね)の肉体はそのままに。

 この男の名は、「ウェイ・ホーチャン」と言う名のミャンマーで生まれ育った、まごう事無きミャンマー人だ。

 他のミャンマー人と比べて生まれつき身体も大きく、現在の様になってしまった為、主に外国人と闘っている。同国の選手では体重等が釣り合わず賭けが成立しない為だ。


 “ウェイ”の現在の戦績は、16戦15勝1敗。


 試合数はラウェイでは浅いものの、15勝全てはフルコンタクト空手家の日本人、オランダのキックボクサー、ブラジルの打撃の水準も高い柔術家、アフリカのボクシング出身の格闘家等、そのジャンルでトップクラスの外国人格闘家を鮮血に染め上げ、マットに沈めてきた実力者だ。


 西の方角から、もう一人の選手が現れた。


 その選手―男は、肌は色白。髪は黒で肩まで掛かりそうで掛からず、パーマネントを掛けているのか分からないがボサボサの様な印象を受け情けない風に見える。

 だが、その肉体は“ウェイ”にも負けていない。と言うよりは肉体美とだけ見たら、ボサボサの男の方が上回っている。

 温故知新―現代的なトレーニングと古流の鍛練をハードに確実に積み、栄養も十二分に摂り、程よく休息を取り、造り上げた身体だ。

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