可愛い友達
「朝からお熱いですねぇ。」
「…なんのことですか。」
教室に入ると里奈がニヤニヤしながら私に寄ってきた。
「はぁぁぁぁ、とぼけたってバレバレよ!一緒に登校してきたんでしょ、宏光君と。」
普通、別れたカップルについての話題はみんな遠慮して避けるものなのに、里奈はところ構わずそういうのに突っ込んでくる。
私達の別れ方とか今でも仲良しなところとかに理由があるのかもしれないけど、はっきり言って…
「私達別れたんだからそういうの禁止ー。」
ちょっと、めんどくさい。
「みんなから見たら付き合ってる内に入るよ、あんた達すっごいお似合いだったし。それに別れたのだって…」
「りなッ!もーうこのお話は終わり。今後も。」
なんか今日の里奈はいつもよりめんどくさい。
いつもならすぐやめるのに。
「ごめん、もう言わないっ」
それと同時に里奈は私に思い切り抱きついてきた。
これで許されると思ってんのか!てか本当にごめんって思ってんのか!
まあ、可愛いから許すけど。
「もう里奈ったら〜」
さっきのことは水に流して、里奈を引き剥がそうとする。
「ちょっ、里奈…」
思いの外簡単に引き剥がれてくれなかった里奈に少し驚いた。
が、その理由はすぐ分かった。
下を向いていてよく見えなかったが、里奈の瞳は確かに濡れていた。
なんで…?
しかし、すぐに里奈は顔を上げ、ペロっと舌をだして笑った。
それがほんとにいつも通りでさっきのは見間違いではないか、と思った。
「もうすぐ期末テストだー由佳、今回も頼んだぞ!」
「いやいや、教えてあげるけど勉強するのは里奈だから。」
見間違いだ。
そう思い私も里奈と同じように笑った。