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読者を意識して書くと…

 “読者を意識して書く”という手法がある。

 僕が苦手としている小説の書き方だ。

 徹底的に鏡の中の悪魔から“自分らしい小説を書くように”と指導され続けた僕は、自分の世界を構築するのは得意だったが、読者の心理をつかむのは苦手だった。

 だが、逆にそれが1つの利点をもたらしてくれていた。


 読者を意識して書くタイプの作家は、読者の意見に左右されやすい。

「読者数が減ってしまった。これは、どうしたことだろう?」と悩み、「読者の反応が悪かった」と悩み、「読者からの感想がなくなってしまった」とまた悩む。そうして、自然と筆は止まり、書けなくなっていく。あるいは、書かなくなっていく。


 僕には、そうした心配はほとんどなかった。

 なぜならば、小説を書くモチベーションを他者には求めず、自分の中に求めていたからだ。

 もちろん、全く読者を意識しないわけではない。感想をもらえば、何かしら感じるコトはあるし、その意見を参考にもした。だが、その割合は微々たるものだ。根底では“自分のために書く!”それが僕の小説執筆スタイルだった。

 ひたすらにひたすらに自分を信じて書き続ける。高みを目指して書き続ける。そういう小説の書き方だ。


「ここまでやって、なぜ成功しないのか?なぜ読者に受け入れられないのか?」

 そう自問自答してみる。

 その答はいつも決まっていた。実に単純な答だ。

“実力が足りないから!能力が足りないから!”


「だったら、どうする?」

 だったら能力を上げるしかない。

 これまで以上に高く飛べるようになり、これまで以上の破壊力を有し、これまで以上に速く走れるようになるしかない。世界中の読者が認めてくれるような作品を書けるようになるまで能力を上げ続けるしかない!

 ここまで、その思いだけでやって来た。それは、これからも変わらないだろう。

 それ以外の方法を僕は知らない。ある意味で、僕はとても不器用な人間なのだ。人間関係を円滑にし、そこで手に入れたコネの力を使って成功するだなんて方法は取れない。ただひたすらに能力を上げ、人々を認めさせるのみ。

「ああ…そこまでやるんだったら仕方がないな。そこまでの努力をし、そこまでの作品を生み出せるようになったか。ならば、こちらも認めるしかない」

 そう読者に思わせるまで能力を極めるしかない。最初はみ嫌い敬遠していた読者すら取り込んで、僕の作品を認めさせるしか方法はないのだ。


 ここまでで執筆スピードは格段に上がり、書ける量も相当上がった。それらは、もう限界に近い。

 あとは、ただひたすらに質を上げるだけだが、これはなかなかに難しい。質を上げれば上げるほど、読者は離れていってしまう。かといって、読者向きの作品ばかり書いていると、質は向上しない。


 その矛盾に苦しみながら、どうにかこうにかやっている。作品ごとにテーマを変え、目的を変え、1歩でも先に進もうと戦い続けている。決して油断したりはしない。そこだけは自信を持って断言できる!この小説の森にやって来てからこのかた、手を抜いたコトなどほとんどない。

 そりゃあ、調子に乗って“複数作品同時執筆”なんて荒技あらわざをやって、1つ1つの作品にかけるエネルギーが減少してしまったことはある。それでも、常に全力を尽くし続けてきたことには違いがない。


「何かキッカケが欲しい。ここからさらに劇的な進化をげるためのキッカケが…」

 僕は、心の中でそう思い始めていた。

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