表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/59

反動を利用する

 思い切りリアリティを重視した小説を書いた僕。その分、ストーリーが起伏に富んでいるわけでもなく、キャラクターも特に魅力があふれているわけでもない、非常に地味な作品になってしまった。

「これでは、読者から不満がもれるのも当然だな…」と、書き上げた作品を読み直してみて思った。

 何よりも、自分自身で納得がいかない。もちろん、“作品全体に現実性を与える”という目的自体はシッカリと果たしてはいる。だが、逆を言えば、長所はその1点のみなのだ。


 なので、その次の作品では、全く反対の方向へ進んでみることに決めた。

「ヨッシ!次は、現実性など一切無視でファンタジーを書いてみるか!」

 こうして、物理法則完全無視で、ムチャクチャな小説を書いてみたりする。

 ここで、僕は“反動を利用する”というコトを覚えた。1つの作品が、その1つの作品のみで終わることなく、これから書く別の作品に影響を与える。シンクロして共鳴してみたり、逆に反発してみたり。直接の続編ではないにも関わらず、底の底でつながり合い、影響を与え合っているのだ。


「凄い!凄いぞ、これは!!」

 何も考えずとも、バリバリとペンが進んでいく。まるで、魔法のペンだ!

 “徹底的にリアリティを追求する”という前作のストレスから、それを反動として、心の底から情熱の炎が燃えたぎってくる。

 書いても書いても書き足りない!あふれ出てくる熱意を抑えきれず、次から次へと文字が生まれてくる。

「オッシャ!!」

 絶好調で書きまくり、アッという間に次の1作は完成した。


「気持ちよく書いてるじゃないか」と、鏡の中から悪魔が声をかけてくる。

「まあね」と、僕は書き上げたばかりの原稿に目を通しながら、ほこらしげに答えた。

「最近、小説を書くということがどういうことか、わかってきた気がするんだ。“真の意味”で小説を書くということが。以前も、こんな感覚を味わったことはあった。でも、それよりもさらに深い部分で理解できた気がする」

 それを聞いた悪魔が、こう答える。

「まあ、まだまだ先はある。小説というのは、奥の深いものだ。お前が思っているよりも、もっともっとな。これからさらに深淵に迫っていくがいい」

 深淵に迫る…か。

 これまでもいろいろなジャンルに挑戦し、様々な能力を身につけてきた。細かいテクニックだって無数に習得したし、ついには作品同士を連携させ影響を与え合うまでにいたった。

 それでも、まだ先があるというのか…


「おもしろそうじゃないか…」と、僕はつぶやく。

 おもしろそうじゃないか!ここから、まだ先があるだなんて!それでこそ、一生をかけて挑む価値があるというものだ!

 僕は悪魔の言葉を聞いて、恐れおののくどころか俄然がぜんやる気になってきた。これまで以上にチャレンジ精神をかき立てられ、果てしない地平線の先を眺めるのだった。

 小説!奥深し!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ