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チグハグな小説

「毎日最低2枚ずつの原稿を書き続け、それを3ヶ月続けろ!」という悪魔からの指令に従って小説を書き続けた僕。

 2ヶ月を過ぎたところで、書くコトがなくなってしまった。まだ、予定の日まで1ヶ月近くもあるというのに。

「もうこれ以上、何も書けないな。ラストシーンも、上手うまくまとまっているし。この後に続けて書くと、完全に蛇足だそくになってしまう」

 僕はそうつぶやくと、頭を抱えて考えた。


 そうこうしている内に、締め切りの時間が迫ってくる。なんとしても、深夜0時までに何か書かなければ。必死になって考え続け、結局、こういう結論にいたった。

「仕方がないので、これまでのストーリーにいろいろとつけ足していくか。ちょっと不格好ぶかっこうになってしまうけれども、しょうがない。背に腹は代えられない。“何も書かない”だけはあってはならない!」

 そう決心すると、僕はばく進した。“何を書くか?”さえ決まってしまえば、あとは速い!1点に集中し、バリバリと書き続ける。予定の2枚を越え、3枚!4枚!と書き続ける。1時間もしない内に5枚以上の原稿を完成させ、これまで書いた小説に挿入そうにゅうした。


         *


 その後も30日近く、その行為を繰り返した。

 おかげで、どうにかこうにか小説の方は完成した。けれども、随分と不格好な作品になってしまった。

「なんだかチグハグな小説になっちまったな」と、完成した作品を読んだ悪魔も、そう言ってくる。

「確かに…」

 そんなコトは、僕自身が一番よくわかっている。元々終わっていた小説に、無理矢理追加エピソードをねじこんでいったのだ。チグハグにならない方がおかしい。

「やっぱり、ちゃんとプロットを作ってから書き始めた方がいいのかな…」と、弱気な言葉をもらす僕。

「かもな。そういうやり方もある。だが、慣れればそんなモノは必要なくなる。それも、また事実」

 そう、悪魔にも言われる。


 結局、僕には実力が足りないということなのだろう。プロットがなければ、まともな小説1つ書けはしない。今の僕には、まだ…

 けれども、今回の失敗はいい経験になった。

 1行目から適当に書き始めるのではなく、「大体、この枚数でこの展開が起こる」というようなコトを、あらかじめ考えておけばいいのだ。

「次の作品から、そうしようと!」僕は決めた。


「それでいいのさ」と鏡の中の悪魔も語る。

「え?」

「目の前の作品1つを見るな。そんなのは、二流三流の人間のするコトだ。一流は目の前を見ない。目の前の作品1つにしばられるな。一流は作品だけではなく能力をも見る。“この1つの小説が、別の小説にどうつながっていくのか?”そういう考え方をする」

「別の小説につながっていく?」

「そうだ。“この小説を書くことで、どれだけ小説の幅が広がったか?どのような能力が身についたか?”そう考える。作品は作品に過ぎない。だが、能力は違う。“小説を書く能力そのもの”を身につければ、同じような作品は何度でも書けるようになる。偶然ではなく必然でな」

「偶然ではなく必然か…」

 そうだな。今の僕には、実力が足りない。そこは認めなければならない部分。でも、そこであきらめる必要なんてない!むしろ、それはまだ成長する余地が残されているということでもある。

 楽しみじゃないか!まだまだ、ここから無限に成長していける。そんな未来が待っているだなんて!

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