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安定して書き続ける恐ろしさ

 毎日、決められた枚数を着実に書き進める。

 最初は、「こんなもの楽々こなせるだろう」と高をくくっていた僕だったが、実はこれが意外と難しい。そして、とんでもなく恐ろしい能力でもあるということがわかってきた。

 正直、「今日は小説なんて書きたくないな。もう休んでしまおうかな…」という日だって何日もあった。それをどうにか無理をしてがんばって続けた。今度こそ、悪魔との約束を破りたくはなかったからだ。

 それに、「これは、自分で決めたコトだから」という思いもあった。もしも、これが誰かに強制的にやらされているコトだったら、とっくの昔にやめていただろう。たとえば、受験勉強だとかツマラナイ労働だとか、そういうものだったら。

 でも、これは自分で決めて、自分で行動しているコトなのだ。

「史上最高の小説家になる!」という目標に向って、もう2度とくじけたくはなかった。あきらめるつもりもなかった。

 おかげで、徐々に体は慣れていき、毎日決まった時間小説を書くことができるようになってきた。


 以前の僕ならば、書ける日と書けない日の波が非常に激しかった。さすがに、1日に50枚以上も書くだなんて芸当は、奇跡でも起きなければ不可能。しかも、その後に受けるダメージがあまりにも大きすぎる。

 とはいえ、10枚や20枚くらいならばサラリと書けてしまう日があった。その代わりに、全く書けないという日も多かった。1日に1枚どころか1行も1文字も、だ。完全に0。ゼロ!ゼロ!ゼロ!


 それが、今はどうだろう?

 平均すれば、1日に原稿用紙2~3枚ずつのペースに過ぎない。だが、悪魔に言われた通り、ただの1日も休んじゃいない。これが、意外とバカにできないのだった。気がつけば、執筆した原稿は50枚になり、100枚を越し、200枚に達していた。

 3ヶ月で、ここまでだ。決して、「ムチャクチャに多い」という量ではなかったが、大きなストレスを抱えることもなくこの執筆ペース。まずまずだろう。しかも、このやり方に切り換えて初めての作品でこれだ。1日の執筆量を増やしていけば、やがては、とんでもない能力になるだろう。

 僕は未来の自分の姿を空想しては、ワクワクするのだった。


 考えてみると、以前の僕は何をするにもあせっていた。あせって、あわてて、急いで完成させようとするあまり、いろいろと細かい部分が甘くなってしまっていた。

 それが、今はどうだろう?以前に比べて、ずっと落ち着いて文章が書けるようになったのだ。


 それと同時に、僕は自分の能力を徐々に把握しつつあった。

「1話1話が非常に短い。1文1文も同じ。短い文章をつらね、積み重ねていく。あまり修飾語を連続させず、シンプルな文章を書く。そういうタイプ」

 僕は、自分で書いた小説を読み直しながら、そう語る。

「いい自己分析だな。その通り。それが、お前の長所だ。世の中には、いろいろとゴチャゴチャ文句を言ってくる人間もいるだろう。『短すぎる文章はよくない』とか『単純すぎて味気ない』とか。が、誰が何と言おうとも、それはお前の貴重な能力に違いがない。その才能を大切にしろ」と、悪魔も言ってくれる。


 毎日の執筆ペースを守りながら書き進めた僕は、4ヶ月目に1つの小説を完成させた。

 当初は3ヶ月という話だったが、悪魔にワガママを言って、1ヶ月ほど延長してもらったのだ。それくらい調子に乗っていたからだ。

 だが、これがあまりよくなかった。延長した1ヶ月は、小説を書くのが少々きつくなってしまったのだ。おそらく、この作品に飽きてしまったのだろう。

「こんなコトなら、さっさと切り上げて、次の作品に移ればよかったな…」と後悔したが、もう遅い。仕方がなく僕は1ヶ月間ふんばって、書き続けた。

 そのおかげで、最終的に原稿用紙300枚という、これまで僕が書いた中でも最長の作品が完成した。内容の方も、まずまずだ。

 僕は自分の書いた作品に満足し、細かい修正を加えた後、翌日からさっそく次の作品を書き始めた。

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