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 昨日まで普通に話していた友人が明日になると交通事故で物言わぬ骸になったのを見て、一一(/ニノマエハジメ)は人の命が簡単に消えてしまうものだと知った。


 生きているものはいつか死ぬ。


 当たり前のことだがハジメはその事を「知っていた」だけで、本当の意味で「理解」していなかったのを思い知らされた。


 これからもずっと続くいつもと同じ日常。


 そんなものは単なる幻想に過ぎない。日常なんてものは些細なきっかけで脆く崩れさり、その時「通常」は「異常」にと反転する。


 そして日常が崩れさっていざ異常な現実が目の前に現れると、それは自分の予想を遥かに越えるものであることをハジメは友人が死んだ三ヶ月後に身をもって知ることとなる。






(ああ、僕は死ぬんだな……)


 固いアスファルトの地面に大の字で寝転んで空を見下ながらハジメは自分の死をぼんやりと、まるで他人事のように受けとめていた。


(弾の奴もこんな気持ちだったのかな?)


 学校の帰りに車に轢き逃げされ、徐々に命が失われていくのを感じながら一は三ヶ月前に交通事故に遭って死んでしまった幼馴染み、狩谷弾のことを思い出す。


 ちょっと、いやかなりエッチで時々「将来の夢はケモノ耳ハーレムを作ることッス」と訳が分からないことを言うが、いつも楽しそうに笑っていてよく一緒に遊んでいた。


 最初に弾が死んだと聞いたときは自分の耳を疑った。


 どんなことがあっても死にそうになかった弾が死んだことを受け入れるのに一ヶ月くらいかかったが、まさか自分までも同じ死にかたをするとは思いもしなかった。


 意識が薄れていくハジメの目の前に家族や友人達の顔が次々に浮かんでは消えていき、最後に弾の顔が浮かぶ。



『あれ? ハジメじゃないッスか? ハジメも死んだんスか? ドジッスね~』



 幻覚の友人は地面に倒れているハジメを見下ろしながら親しげな笑みを浮かべてからかうように話す。


(……弾。それが死にかけた友人に言う言葉か? まあ、お前らしいけどさ)


 死んでも憎まれ口を叩く弾にハジメは思わず苦笑を漏らす。



『でも死んでしまったものはしょうがないッスね。それじゃあハジメ、一緒に行くッスよ。二人で男の夢、ケモノ耳ハーレムを作りに行くッス!』



「………………はははっ。一人で……行っ、て……ろよ、ばーか」


 死ぬ間際に聞こえてきた幼馴染みの声をした酷い内容の幻聴に、ハジメは呆れながらも死の恐怖を忘れさせてくれたことに対して感謝の念を抱いた。


「僕は……どうせ行くなら、………ター…ア』の世界、に……」


 そこまで呟いたところでだった。ハジメは静かに目を閉じて息をひきとり、その一生に幕を下ろしたのだった。































 ガカッ!


 とある惑星の島国で一人の少年が不慮の死を迎えたのと同じ時、どことも分からない宇宙の果てで一つの異変が起こった。


 突然稲妻が走ったかのような音がしたと思ったら宇宙空間に正体不明の爆発が起こり、爆発が起きた地点を中心にして周囲に強い光と衝撃が放たれたのだ。


 そして光が収まると爆発が起こった場所には、それまでそこになかった巨大な影があった。


 頭部に二本の角を生やした蛇のような長い首。背中に巨大な一対の翼を持つ巨体。首と同じくらい長く、だが太さは首の二倍はある鋭い棘を何本も生やした尻尾。


 ドラゴン。


 神話に登場する最強の魔獣。……その姿を模した巨大な建造物の姿がそこにあった。


『………』


 突如宇宙に現れた鋼鉄のドラゴンだったが、ドラゴンはそのまま何もすることなく宇宙に漂うだけだった。


 鋼鉄のドラゴンは自分以外何も存在しない星の海で、自分の体の中で眠る「彼」が、自分に唯一命令を下せる主が目覚めるのを静かに待ち続けた。

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