第1話 天使の~****
【全開のあらすじ】
ファイルB10238。少女が、元彼の大学生を訴える事件。背景には、親告罪での賠償問題が浮き上がる。事件なのか、それとも自殺なのか。保険会社は不当な請求には断固として応じない。その最後の砦を守るのが、わが社のお客様、エリックの仕事だ。
しかし、この仕事はまだ未払いの事件だからなのか、レベルは低い。
そこに、急ぎのメールが……。難易度の高い事件だろうか?
私は、ノートパソコンを開くと、認証キーを入力、マイ画面を開いた。
調査員専用の連絡ソフトウエアから、ファイルを取り出す。専用のソフトウエアと変動型認証コードでファイルを開放する。
ファイルの中には、悲喜こもごもの人間関係があるのがわかっている。ましてや、保険の調査ファイルだ。個々の人間が持っている祈り、希望、過ち、人の織り成す魁偉な関係、日々起こっている事件のひとつとはいえ、初めてファイルに目を通すとき、まさに開放するような気持ちにさせられてしまう。
ファイルナンバーD021145。
三十数個のファイルが現れた。
電話の向こうで、部下に指示するエリックの声が聞こえる。
「エリック! エリック! プリーズ・コール・ミイ。ナウ」
私は大声で呼び出す。
フリーハンド、インターフォンで、かけていたのだろう。
あわてて咳払いをして、受話器に切り替えている。
「オゥケーイ」
エリックが早口で条件をたたきだす。
「ケンジ。この事件は、ひとことでいえば保険金詐欺だと、私たちは考えている。ただ、証拠がない。しかも一年前。裁判を待たず、証拠不十分となり、控訴棄却になった。しかし、ダークだ。きわめてブラックに近い、ダーク・グレーだと見ている。検察の調書、取調べのビデオなども入手して、会社の調査員で洗ったが、何も出てこない。法令違反ぎりぎりでの不払いをも試みたが、裁判を起せないほどのクリーンでは……。君の事務所で再調査してもらいたい。何も出てこなくても、経費プラス調査費を払う。もし、民事でもよい、保険金の回収ができれば、その五パーセントを貴社の功績として別途ボーナスとする」
「レベルAダッシュ。まあ、保険会社として、当然な判断、かな」
「この手の事件が通るとなると、詐欺事件を誘発しかねない。ソブリンがどうのではない。保険会社のプライドにかかわる。事件が増え、反対に出資者が減ることになり、株価も低迷すれば、企業業績の下方修正を迫られかねない。さらなる負の連鎖が始まる」
「そのとおりだ」
「私たちは、保険機構を守り、投資者に安心というかたちで利益を返す重要なミッションがあるからね。今回も、キミの手腕を楽しみにしているよ」
それまでのトークが一変する。
映画ファンでなくとも、彼のキャラクターが分かるというところだ。
「ところで、来週の金曜日。キミの事務所に視察でいくことにしたから、よろしく」
「また、わが社の女性スタッフとの食事かい?」
「オフ・コース」
「優華も同席させるのかい?」
「ヤー。すばらしいビジネスに期待してるよ」
電話の向こう側で、ネクタイをなおすエリックの姿が見えるようだ。
「オッケイ。僕も楽しみだ」
エリックは、敬虔な人物で、聖典の教えから外れない。
それが、あまた、女性に人気があるところだ。
私は、ノートパソコンの扉を閉じて、電話を置いた。
ノートパソコンちゃんが、わたしのミスで。涙。
エンターキーなど、使えないの。
でも、毎日1話。できれば3話のアップ目指してがんばる。
読んでくれる皆様にサービス。サービスゥ!
(エバのキャラみたいかな~)




