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第1話 天使の~***

ファイルB10238

新自由学園の中学1年の少女「恵子」ちゃんが、大学1年の「懋」くんを訴えた。 部活で知り合った二人。仲良く話すようになった二人。ときどき、自宅にも訪ねるようになった二人。学習塾よりも、やさしく教えてくれる先輩。「お兄ちゃん」そう、駆け寄ってくる妹のような後輩。兄妹というような二人だった。周囲からもうらやましいと言われる二人だった。


恵子ちゃんにインタビューできれば……簡単な事件と思われた。

 私は、電話の受話器を取り上げ、保険会社に回線をつないだ。


 APIインシュアランス・グループ社の統括部長のエリック・ダイヤモンド氏、調査部マネージメント・チーフにコンタクトをとった。


 40歳で、アジア二番目の売上げを誇る日本支社役員に名を連ねるグループ屈指の敏腕ビジネスマンである。


 エリック、ケンジと呼び合う仲だ。ビジネス上のクライアントである以上に、顧客対応を高めることに誠意をつくす私のビジネスを応援してくれているのが嬉しい。


 エリックは、やさしさと気持ちよさがスーツを着ているような男だ。

 ジム・キャリーと似たフェイスというのが、当社の女性の評だ。


 ブラウンヘアのホワイト・ガイ。アメリカ合衆国ソルトレイク・シティ出身で、敬虔なクリスチャンである。高校から日本語・日本文化に興味を持って、大学で日本語・日本文化を専攻していた。さらさらと標準語で会話する。大阪弁や博多弁にも堪能。笑顔が絶えない男で、目じりが下がっている顔にマッチしている。話している間中、ニコニコしているように見えるのである。アメリカ人の特性でジョークが下手で、ビジネスでは、営業成績を追いかける辛らつな獣のようなプッシュをしてくるのだが、そうは見えないところが彼のすごいところだ。


 軽い挨拶の後、早速ビジネスについての話を開始した。

 私が聞きたかったのは、ひとつだった。

 ひとつは、今日、メールで連絡があった新しい事件について。

 

 ところが、いきなりファイルB10238の話しになった。


 「ケンジ。新自由学園の調査、壁にぶつかってないか?」

 「そう。エリック、今日はずいぶん慧眼だな。望遠鏡でも買ったのか。当社の担当も、学園の許可、学生自治の壁にぶつかっている」

 「ケンジの会社には美人が多い、最近、1万倍の望遠鏡を備えたんだ。よく見えているよ。新自由学園は日本の教育ネットワークとは別の、独立した組織だからな。市の教育委員会からのプッシュでも動かないぞ」


 「独立した組織?」

 「学生の自治権利を明確にした学園だ。学園理事会、学園教師会、学園父母会とは別に学園生徒会があり、独自の収益組織を運営している。中学生一年の女子一人でも許可がとれないだろう。キリスト教徒の私でも連絡して、撥ねられたよ」


 「それで、ダブルCのオファー、ということか」

 「そう、できれば……と、いう案件だ。他の調査会社にもお願いしていない。事件が解決するまで支払わなければよい案件だからね。10年でも100年でも待てばいいのだから」


 「エリック? じゃ、なんで、私の会社に頼む?」

 「優華がいるだろう。彼女が生徒だから、だ」


 「リアリ?」

 「イエス。彼女のようなオリエンタル・ビューティなら、なんとかしてくれるかもしれない。なにしろ、CIAにもコネクションがある生徒の一人だからな」


 「優華から、そんな話は聴いていないぞ?」

 「それは、調査不足だな。キミらしくない。もっとコミュニケーションしたらいい。彼女の先輩たちは、CIAに勤めている。彼女も、彼女の後輩も、コネクトしているとの話だ。彼女と、その友人たちに任せてみてはどうだ?」


 この軽口な男め。その手には乗らない。万が一、そうだと応えれば、「コンプライアンスに提唱する発言だ」と揶揄されて、コストカットを求めてくる。ネゴシエーションにおいては、注意が必要な発言だ。


 「キミが当社に期待してくれているのには、感謝するよ。とても面白いアイデアだね」

 「オッケー。考えてくれれば幸いだよ」


 「ところで、先にメールをくれたね。そのメールの事件について、話をしたいんだが……、オッケーかい」


 私は、ノートパソコンの扉を開いた。


明日から、1日2話、書いてみようかなんて、挑戦よ~♪

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