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第1話 天使の~ **

【前回のお話し】


 私は探偵・宮沢謙二。


 業界では中堅の下ぐらいの規模、だが、自慢してもいい。派手な広告なしで、規模を拡大したことでは、業界随一だ。私は、単に調査結果を渡すのではない、心理的な支えを加味したアドバイスを徹底してきた。それが大きな信頼になっている。


 得意なのは懐柔。心理学と星座/占星術を組み合わせた会話などを用いて、柔らかなトークにより、難しい調査をわかりやすく解決してきた。


 最近、臨時のセクレタリーが「気になる」と語った事件ファイル。それを、もう一度、読んでみようと手を差し出した。

 私は、目の前に置かれた、事件ファイルB一〇二三八の扉を開ける。


 概要と依頼内容、現況、当事者、インタビュー、財務状況などの資料がファイリングされている。いろいろな資料を目にとおすが、私が重視するのが、依頼内容。被告原告の当事者とその親権者、関係者の個人情報。そして告訴内容である。


 事件調査の源泉だ。数学でいえば定義、文学で言えば言葉、物理でいえば原子か?

 それが間違っている場合は、まったく別の事件になってしまう。


 調査の依頼。自動車と自転車の事故の背景だ。

 簡単にいえば、当事者が事故か? その他、か?

 事故の裏にある背景から、この事故がどんな原因で発生したのかを調べてほしいというものだ。


 自動車と自転車の事故の背景。

 ふつうに行けば、保険会社の調査員の仕事で終了する簡単な事件だ。

 ところが、簡単ではない。だから外部の私たちのところにお願いが来るのだが……。


 保険の被保険者、つまり保険をかけている人は、**懋くん。大学一年男子。

 一年前に、両親が将来を考えて生命保険に入っている。また、事故のことを考えて、両親の自動車保険でも支払い対象に入っている。


 保険を申し込んだときの条件、告知義務といわれる内容が問題?

 これは問題ではない。


 保険金額が大きい?

 良くある金額である。それも問題ではない。


 別の事件が関係している?

 そう。

 それが、支払いの障害になっている。


 別の事件が未解決で、親告罪、訴えているのが中学一年生女子、**恵子ちゃん。

 その調査中に、**懋くんは、死んでいる。

 そして、問題は、その女子中学生に保険会社の調査員が話を聞けないことにある。


 親告罪の原告。簡単にいえば、訴えている人だ。学園町にある新自由学園の中学生三年女子、**恵子さん。生年月日からサン・サインはみずがめ座、二十八宿においては東方青龍に座している娘。中子星にサインがある。


 被告。訴えられている人だ。原告と同じ新自由学園の大学一年男子、**懋くん。**つとむ。生年月日からサン・サインはいて座、二十八宿においては東方青龍箕星にサインがある。事故で死亡した男の子だ。


 恵子ちゃんも懋くんも両親は、健在。父は会社員。母はパートタイマー。まあ、どこにでもある家庭をイメージさせる。


 告訴内容を読み取る。原告被告で書かれていると読みにくいから、よく名前を入れ替える。

 イメージが浮ぶから不思議だ。


 同じ学園の美術部の先輩後輩だった懋くんと恵子ちゃん。

 部活で知り合った二人。

 仲良く話すようになった二人。

 ときどき、自宅にも訪ねるようになった二人。

 学習塾よりも、やさしく教えてくれる先輩。

 「お兄ちゃん」

 そう、駆け寄ってくる妹のような後輩。

 兄妹というような二人だった。

 周囲からもうらやましいと言われる二人の姿がある。


 深まる秋のある日。

 恵子ちゃんの家を訪ねた懋くんが、恵子ちゃんに暴力的に性的行為をおこなった。


 それを知った恵子ちゃんの母親が、原告となって今回、

 親告罪として警察に訴状が出た。

 警察が検事に申し出て、調査が始まった。


 警察は状況と当事者の年齢を考慮、任意同行を懋くんに求めた。

 大学一年の懋くん。普通なら扱いとしては大人だ。

 強制で調べるなら任意にはしないが、犯行かどうか悩んだ警察が、まず任意を選ぶ。


 懋くんは警察の任意同行を拒否。

 警察は、強制的に調べることにした。警察が検察に書類を上げたその日に、交通事故。一週間、意識がもどらないまま、懋くんが死亡。強制的な取調べ開始と同時に、書類送検となった。

 

 書類送検。つまり、警察と検察の調査終了だ。

 簡単にいえば、調査だけで、自供や証拠がない事件ということだ。

 警察も強制的に同行させるタイミングでの事件だ。

 何か無理な調査があったと、いわれたくない。

 「大人の理由」で逃げの一手である。


 書類で報告を受けた裁判所は、仲裁に入っている。

 お話し合いで、恵子さんと、懋くんのご両親とで、事件を解決しましょう。

 いきなり裁判にならない。これが日本の良いところでもあり、悪いところでもある。


 仲裁とは、事件解決に対して、平和的だが、明らかに遠い選択だ。

 話が長引く。


 何度も相互の話をきいて、何度もお互いの条件を考えていく時間だ。

 検察、両親、本人。それぞれに言い分を聞いて……、

 また一月ぐらいの時間をおいて、お話を聞いて……。

 被害者も、加害者にも

 『もう、うんざり』という時間が必要になる。


 だが、恵子ちゃんの両親は、話し合いを選んでいる。

 周囲の目が気になるのか?

 将来を考えてか?

 亡くなった懋くんを哀れんだのか?


 事故は、警察から帰った懋くんが、自宅から夜、自転車で出かけた時におきた。懋くんが、見通しの悪い十字路で一時停止線を越えたところで、直進する自動車にぶつかった。懋くんは、路肩のガードレールに頭部をぶつけて、救急搬送された。その後、意識が戻らず死亡している。一時停止無視というのが、事故原因。死亡原因が頭部強打による脳出血。懋くんの事件が記載されている。


 まだ、裁判は始まっていない。仲裁も始まっていない。

 この事件は未解決ということだ。

 だから、公にできない。


 保険会社が私たちに依頼しているのは、裁判や仲裁の行方を決定する証拠探しではない、事故死亡金なのか、自殺による法定免責で保険金不払の事件なのか。彼女の話し、インタビューがほしいのだ。

 

 彼女であり、恋人であった恵子ちゃんの親告罪。しかも未成年。

 懋くんの携帯電話の通話記録では、彼女と連絡を取り合った後に、事故が起きている。


 恵子ちゃんと母親は、インタビューを受けている。

 だが、母親が答えて、本人の恵子ちゃんが泣いているばかりで、話が聞けていない。


 母親は、その事故死の結果、懋くんの遺族が得られる保険金額を聞いて、自殺や殺人などの疑いも言い出している。


 つまり、恵子ちゃんが被害者で、その保険金が自分たちのもらえるお金だというのだ。


 桂子ちゃんの父親は、海外単身赴任。

 母親に一任している。


 事故を起した相手と恵子ちゃんも懋くんも関係がない。

 恵子ちゃんの家族も、懋くんの家族も、事故の相手との関係が認められない。

 十分な調査が行われ、他人となっている。

 添付されている書類にも、その裏づけが十分にある。


 つまり、事故の背景を知っているのは、恵子ちゃんだけなのだ。

 恵子ちゃん、彼女だけが知っている真実の背景があるということだ。

 保険会社では、両親が認めない限り話を聞くことができないのだ。


 当社の調査員、周囲の調査を開始した。

 調査員が母親に聞いた。

 だが、恵子ちゃんに接触することを断られた。


 もう、保険会社にお話しすることはない。

 それが、恵子ちゃんの母親の回答だ。


 学校側は、学生の自治を盾に学園内での個人インタビューを断っている。

 恵子ちゃんの送り迎えに、今では母親が車を出している。

 友人の何人かに話を聞いても、彼女は泣いているばかり。

 

 周囲の話だけが、書かれている。

 仲良かった二人だったという。

 一緒に歩く懋くんと恵子ちゃん姿に憧れていた女の子が多い。


 だから、今の恵子ちゃんを

 「羽をもがれた鳥のよう」で、見ていられないという。 


 しかも、公にできない親告罪での裁判調停中。

 学友も知らない恵子ちゃんプライバシーも関係しているのだ。

 聞き方をあやまれば、保険会社も告訴されかねない。


 これが事件のあらまし。


 私は、扉を閉じた。


毎日、1話書き込む。3本のひとつ。入力ミスで、翌日に、再入力。

ああああ、仕事の合間に、ちょっと、やばいかな。


読み返しできないので、……こわい。


夕方には次の原稿を、書くの?


毎日書くって、思ったっより、大変かも……。

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