七話 危機
「テオっ!おいっ!テオっ!しっかりしろ!」
テオの体から岩や土をどけて力いっぱい呼びかけてみる。反応はない。
うっすらとだが息はしているし、心臓も鼓動を続けている。
目立った外傷も特にはなさそうな感じだ。あちこち擦り傷や切り傷は作っちゃいるが、俺らにしてみたら日常茶飯事だもんな。多分気絶しているだけだろう。ずっと働きづめだったしな。
しっかし、どうするよこの状況。
―――ズシン―――ズシン―――ズシン
揺れはまだ続いていた。むしろさっきよりもさらに近くなっている感じだ。ったくなんなんだよこの揺れはよ。この神さまのフレイヤちゃんの仲間とかが上で何かやってるのか?だとしたらフレイヤちゃんまで巻き込んじまうぞ。
どう状況を整理してみても答えが見つからない。例え、俺一人だとしてもここから脱出できないんじゃないか?
「そうだ!こっちです!」
何かを思い出したかのようにフレイヤは立ち上がり『ワルキューレ』の方へと向かった。
おい、そっちは行き止まりだぞ。それにこの状況、神に祈ったって助からないような状態だぞ。今更何しようってんだ。
フレイヤが『ワルキューレ』の胴体に触れると、その胸の部分が花弁のようにふわっと開き、中の空間が見えてきた。中はなにやら操縦席のようになっていた。ただ、それは見たこともない素材でできているかのようにキラキラに輝いている。ここに埋もれてからどのくらい経っているのかは分からないが、どこも腐食して錆びたりってこともなく、まるで磨いたばかりかのようだった。
「早く乗ってください!急いで!」
今は神さまがどうこう言ってる場合じゃなさそうだ。俺だってこんなとこで生き埋めになるのはごめんだ。テオもまだ息してるんだ。何がなんでも助けてやらなけりゃな。
テオを抱え『ワルキューレ』の中に乗り込む。中は思ったより広く、三人も乗っているのに狭さは感じなかった。
フレイヤが壁のスイッチらしきものを操作すると胸の部分が花弁を閉じる花のように閉じていった。
とりあえず危機は脱出したがどうしたもんか。ある種これも生き埋めに近いものがあるんじゃないか?土の中に埋もれるか、鉄の棺桶になってしまうかの違いしかないってことに気が付いてしまった。最悪モグラのように土を掘るしかないか・・・そういえば道具もバックも置きっぱなしじゃねーか。
・・・まぁ道具があったところで無駄かもしれないな。
そんなことを考えていると、フレイヤが自分のバックをゴソゴソと漁り何か見慣れないものを取り出した。手のひら大の大きさの装置のようだが、いったい何をしているんだろう。
神の奇跡でも起こそうっていうのだろうか?
仮にここから脱出できる手段があるとしたら奇跡ではあるのだが・・・。
祈ってもいない神に頼むのもおこがましい気がするが・・・
頼む、神さま、願わくば俺らを助けてくれ。