プロローグ
かつて世界の全てを巻き込んだ神々と神々の争いがあった。
片方の神々はアース神族、もう片方の神々はヴァン神族と呼ばれる神々。
お互いの領土を守るために、最初こそ小競り合いをしていた神族同士の争いは世界を巻き込む争いへと次第に広がっていった。
世界は天まで伸びる世界樹『ユグドラシル』を中心に三層の階層に分かれており、さらに九つの国に分かれていた。第一層は妖精やエルフの住むアルフヘイム。第二層にはアース神族の住むアースガルド、ヴァン神族の住むヴァナヘイム。第三層にはダークエルフの住むスヴァルトヘイム、ドワーフや小人族の住むニダヴァリール、炎の巨人族の住むムスペルヘイム、氷の巨人の住むニヴルヘイム、そして人間族の住むミッドガルド。このミッドガルドの中央に根を生やすように『ユグドラシル』は存在した、それ以外の土地のことはヨトゥンヘイムと呼ばれる未開の土地ということになっていた。
争いの最中、ヴァン神族は巨人族達を魔力で操るといった術でアース神族の領地を徐々に徐々にと奪っていった。それに対抗すべくアース神族は、神の金属オリハルコンで作られた機皇神『ワルキューレ』と呼ばれる鉄の巨人を操り、ヴァン神族に奪われた領土を取り戻していった。
機皇神『ワルキューレ』はその見目の麗しさから戦乙女等と評されることもあった。麗しさだけではなく、その実力というものも相当なものである。巨人族から見れば相当に小さな体でありながら、操る者次第では巨人族五体程の実力もあるほどだった。
自分たちの領地を取り戻したアース神族の神々は、その勢いのままヴァン神族の領地まで奪い取ることに成功し、とうとうヴァン神族達を窮地に追い詰めた。
追い詰められたヴァン神族達はとうとう最後の決断をした。この世界でもっとも平和なアルフヘイムに保管されている『ラグナロク』を使うことだった。それは世界のリセットスイッチのようなもの。『ラグナロク』を奪い去ったヴァン神族はアースガルドとヴァナヘイムの中心でそれを使った。
『ラグナロク』は世界を包み込む光となりアース神族とヴァン神族の争いに終止符を打った。『ユグドラシル』をも揺るがすほどのその衝撃はアースガルドとヴァナヘイムの大地を崩壊させた。その大地は人間達の住むミッドガルドへと降り注いだ。
これが世界の全てを巻き込んだ、後に『神々の黄昏』と呼ばれた神々と神々の争いだった。
しかしそれで全てが終わったというわけではない。しぶとくも生き残ったアース神族とヴァン神族は和平交渉により千年の間の争いをお互いに禁じた。争いを禁じただけでお互いはお互いを憎しみ合うという結果だけが残る羽目となってしまったのだ。
それから千年の時が経ち、神々と神々の争いの物語の歯車がゆっくりと動き始める。