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誓約異端   作者: 桃月
9/9

ep6 狂宴<後編>



「なぁ、彼方。お前の戦う理由ってなんだ?」



少年は笑いながら、ボクへと話しかける。



「そうだな……。大切な人を取り返したい…からかな?」


「そっか。俺とは戦う理由、違うな」


そう言うと、地面に座っていたボクに手を伸ばす。

ボクはその手を掴み、起こしてもらった。



「……翼はなんだ?」



「俺か? ……俺はな―――」










     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※










ボクはゼルを捕らえながら、今ではもう懐かしい記憶に浸っていた。

相棒と共に戦った日々を……。



「どうして……翼を殺した?」


「どうしてって言われてもね〜。カナタの傍にいたからだよ」


「アイツを……殺す事なんかなかった!」


「ククッ……。アハハハハッ!」


ゼルが突然笑い出す。



「カナタの強さを奪ったのはあの男なんだよ? 生かしておけないじゃないか〜!」


「ボクの強さ……?」


「そうだよ。 カナタの孤独、この世界を恨む意志、最高じゃないか〜!」


確かに、コイツの言う通り。

彼女を失くしていた時のボクは孤独で……生きてきた。

世界を……恨んでいた。

……いや、多分今も恨んでいる。

何故、自分を異端者にしたのか? 何故、彼女を代償にしたのか?

理不尽だらけの世界だ……と。



「ああ…、確かに今もこの世界を恨んでいるよ。どうして、こんなに勝手な事ばかり起きるのかって。だけど――」


ボクは狂っている目をした男へとはっきり言った。



「それだけじゃない事もボクは知っている……」


「その台詞をカナタが言うのかい? さっきまで殺気ムキ出しだったのに?」


「………」


「やっぱり、カナタには光は似合わないよ。君は僕と同じ、殺人鬼だ!」


そう言った直後、ゼルを捕まえていた鎖がだんだんと砕けていく。そして、その“砕けた”部分がビリビリッと電流でも流れているように、消滅していった。

ボクはゼルから距離を取り、離れる。

そう、彼も異端者の一人。そして、異端能力が発動されたのだ。




「僕は君に闇へと戻ってもらうために、君の光を全部壊す!!」




ゼルはその言葉を言い放つと同時に腰に刺さっていた鞘から、刀を抜き出した。

抜き出した刀には「千明」と刻まれており、太陽の光で美しく輝いていて、普通なら見とれてしまいそうだろう。

その千明をゼルは地面へと突き刺す。ゼルの千明が突き刺さったと同時にボクの体に無数の雷光が迸った。

あちこちでボクの体に異変が起きる。






動く事が……できない!







「僕の“雷電”、久しぶりに食らうとどうだい? カナタ」


「クソッ……」


どうやら、刀を抜き出した時に刀へと帯電していたようだ

そして、刀を突き刺したと同時に電流でボクを捉えて、ゼルの自慢の電気を流したのだろう。



(落ち着け。そんな事を悠長に考えているところじゃないだろ)


必死で体を動かそうとしても、言う事を聞いてくれない。

それどころか、ボクの力まで電気で麻痺され、弱まっていくのを感じる。

電気で麻痺したボクにゼルはこっちへと向かってくる。

そして、前へときて、ボクの顔を寄せる。



「抜け出せないだろ? そこで大人しくじっと待っていてね〜」 


「何を考えている……? ボクを倒すなら、今がチャンスなはずだ」


「僕は元々、カナタと殺りあうつもりなんかないって言っただろ〜?」


「なら、何を―――」


 ボクをそう聞き返す前に、ゼルは答えた。




「――これもさっき言ったよね。 ハハッ……君の光を奪うって」




謎めいた事を言い捨て、ゼルは笑いながら、ボクを通り過ぎる。



何が狙いなんだ?


ボクを殺す事じゃなきゃ……。ボクの光を奪うって……。



そう考えてみて、嫌な結論に至ってしまう。

その考えはまさに悪夢そのものだ。



「まさか!?―――」


「ククッ……わかったのかな? そうだよ。ここにいる人間全員、皆殺しにする」


「お前……!!」


「だって、これしかカナタを奪い返せないし。カナタのためを思って、僕はやるんだよ」


「やめろっ!!」


「無理な事だな〜。君にはもう一度闇に還ってもらうためにもね」



ボクの体は千明から発している電流のせいで、口を動かすだけでも精一杯だった。

ふと、脳裏に藍口の顔が浮かんだ。

このままだと彼女もゼルに……。

その先を考えず、思考をとめた。

ゼルの声はだんだんと遠くなって、聞こえてくる。多分、もうアイツはドアの前まで来ているだろう。

どうにかして、ここから抜け出さないと全員が死んでしまう!



「頼む、間に合ってくれ!!」



ボクは必死でこの纏わりつく電気から、必死に逃げ出そうと、もがく。


ゼルが起こそうとする、惨劇を回避するために……。














「方枷君、遅いな〜」



5時間目には戻るって言ったが、彼は結局その時間帯に戻ってこなかった。

授業の話は頭に入ってなくて、方枷君の事ばかり考えてしまう。

また何かあったのかな?

そんな事を考えて心配になってしまう。

別にそこまで心配する必要なんかないはずなのに。




―――でも、どうしてだろう?





彼が時々、遠くにいるように感じてしまう……。

あんなにしんどそうな顔をして、体の方に何かあるのか?

それとも、私には言えない事でもあるかのように、何かを隠しているのか?

わからないけど、気になってしまう。

知りたい。もっと、方枷君を知りたい。



「ここ、藍口さん! 前に出て答えてもらえないかな?」


「えっ? あ、はい」



私の名前が呼ばれて、思考世界から現実へと戻る。



  (考えすぎかな………)



私は教卓へと向かい、問題の答えを書いて、席へと座った。

そして、隣に今はいない彼の席を見つめる。

本当に何所で何をしているのやら……。



「早く帰って来ないと、約束破りになるぞ……」



そう呟いた時、廊下の方で何やらざわざわと声がしてきた。



「誰だ? まだ授業中だぞ!」



先生はそう言って、注意しようと廊下へと向かう。

先生が扉を開けようとした時、私は嫌な空間に閉じ込められたような感覚がした。

寒気が体中にビリビリと走る。

何だろう……?

さっきとはまた違った不安でいっぱいになる。

ダメ…、その扉。

開けちゃいけない!!







「―――先生、ダメっ……!」







気づくと私は、そう叫んでいた。

だが、数コンマで先生は扉を開けてしまった。





―――そして





扉を開けた瞬間、先生の体が蒼い光に包まれていく。

いや、光と言うよりかは電流みたいに見えるが……。



「ギャァッ!」



いきなり、先生が悲鳴をあげると同時に右足に絡み付いていた電流が消えた。

だが、すぐ後に先生の右足がまた激しく光りだして、消えていく……。



……消える?


……なくなったの?



「ヒィイイイッ!!」



悲痛な叫びをあげながら、先生は床へと転んでしまう。

教室内にいた生徒達はそれを見て、パニックに陥った。



「キャァアアアアッ!!」


「ア……アァアアアアアアッ!」



私を含めた生徒達一同は一気に悲鳴をあげてしまう。

右足は膝辺りから消え去っていて、その繋ぎ目からはたっぷりと血が……。

周りにあった机や、その席の生徒達の顔や体にべっとりとついてしまったのだ。

繋がっていた太ももからはたらたらと幾つ物の線が、赤色に染まっていた。

さっきまでの平和だった日常が嘘みたいに壊された光景。

そのグロテスクな光景に私は目を逸らす。



「あ……ああ……」



私は何が起こったかわからなかった。それは他の人達も同じだろう。

また、先生に絡んでいた電流が、今度は周りにいた生徒達へと向かっていく。

今度は無数に分かれて、複数のクラスメイト達が包まれた。



「ウワァッ!」


「ウゥ……」


「ギャッ!」



電流に絡まれた生徒達はさっきと同じように、腕や足などを消されていく。頭が消滅して、死んでしまった子もいた。



何……これ…?


全部…嘘だよね……。



今起こっている出来事が全部悪い夢だと思いたかった。

だけど、頬についた血からは生ぬるい温かさが伝わってきて、それが現実だと私の希望を覆してしまう。

残った生徒は私を含めて……4〜5人。

あっという間にだった。

クラスは謎のモノに壊滅されているのだ。




いつの間にか無数の電流は、一つに集まって、形を変化させていく。

そして、その電流は人の形を整えた。

蒼に包まれたその形はだんだんと人の肌色へと変わっていく。

そこから現れたのは、一人の少年。見たところ、年齢は私と一緒のように思える。

少年は口を開く。



「あっけないな〜。 ただの人間は本当にツマラナイ……」



そう言って、手を私達の方へと向けてきた。

その手からは、さっきの電流が放たれて、私以外に残っていた生徒達が捕らえられてしまう。



「クズ達は処理しなきゃ!」



そう、微笑んで、少年は開いていた手をギュッと握り締める。



「ガァアアア!」



私の隣にいた男子生徒が叫びながら、お腹を押さえる。

その押さえていた腹の部分がいきなり膨れ上がり、今度は消滅とは違って、破裂を起こした。

私のその破裂して飛び散った男子生徒の血をまともに全身へと浴びてしまう。

それに呆然と見ていた時に、残っていた生徒達が、さっきの男子生徒と同じく次々に腹部を破裂して、臓器等が大量にあふれ出てくる。

気持ち悪い、グロテスク等の言葉では現状を言い表す事ができなかった。



「い……や………」



私は血だらけになった体を、震わせて、体を床に落とす。



「あれ〜? 君、運がいいね! まだ生き残っているなんて」


「あ……あ……来ないで……」


「でも、これもカナタのためだから、……死んでね」


「………カ…ナタ?」



方枷君の名前を聞いて……、私は後悔をしてしまう。


これから死ぬんだ、私……。


なら、もっと彼に優しくすべきだった…。


もっと見つめたかった。


そして、方枷君に気持ちを…。


「好き」という私の気持ちを伝えたかった。





『サ・ヨ・ナ・ラ』




そう、少年が呟いた後、電流が一直線へと私の方へと向かった。

それを見て、私は目を瞑る。







最後にもう一度だけ……。



  方枷君の顔、見たかったな……。







そう思って、覚悟を決めた時、私は誰かに抱きかかえられていた。

目を開けると……。

そこには、大好きな彼の顔が心配そうに私を見つめていた。



「おい、藍口! しっかりしてくれ! 藍口!!」



幻でもいい……。


方枷君の顔を見る事ができて、十分だ……。



もう、上手く精神が保てない私は気を失っていく。

途切れていく意識の中で、方枷君が私の名前を必死で呼び続けているのが、まだ聞こえてきた。




最近、投稿のスピードが遅くなってきていますね。(読者の方々、申し訳ないwww)


桃月も、最近は大変なものでw(嘘つけw!


で、後編を書きましたが……。


えーと、むごいですねwはいw


碧ちゃん可哀想すぎますね(汗)


('A`)……。


ていうか設定がだんだんと難しくなり(+ややこしくなってきてるw)、書くのも少しきついですが、頑張っていかなきゃね。


読者さんを裏切らないためにも必死にこいて小説を書く桃月さんでしたww(うぇ


では、次回のあとがきで会いましょう♪


ヾ(*゜∇^*)ノ~ see you next time !!


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