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誓約異端   作者: 桃月
3/9

ep2 ダブルフェイス

「今夜の月は…、本当に曇りもなくて綺麗だな」



市街の中でも、大きいビルの屋上に、ボクは立っていた。


「何故、こんなところにいるのか……?」と聞かれてしまうと、説明をする気はないのだが、やっぱり答えづらい。

外は案外寒くなくて、少し厚着だったボクは黒い上着を脱いで、腰に巻きつけている。



<―――heresy、現在の位置を確認したい。応答してくれ>


腰に吊るしておいた無線機から、女性の綺麗な声が流れてきた。

heresyと呼ばれたのはボク。

そう、“今のボク”は方枷 彼方ではなく、heresyと呼ばれている。


「――こちら、heresy。現在は市街のセンタービル屋上で待機中」


<了解した。ターゲットが動き始めたら、また連絡を入れる>


そう言って、相手は無線を遮断する。

ボクはと言うと…。

無線の内容なんかは、どうでもいいようなくらい、綺麗な月を見ていた。

そう言えば、“彼女”が消えた夜もこんな綺麗な月だったような気がする。

曇り無き空の上には、たくさんの星空と真っ白な月で飾られていた。

あの悲惨な出来事が、まるで嘘だったような……、そんな印象がボクに残されていた。



<――heresy、ターゲットが間もなく動き出す。すぐに行動できるように備えてくれ>


「………わかった」


ボクは空を見るのをやめて、地上を見下ろす。

ざわめく回廊は人々で満たされて、ボクがこれから行う事など、その光景を見たら、嘘みたいなようで。

もし、キミが生きていて、ボクがこんな事をしているのをキミが知ったら……。

多分、泣くんだろうな……と思う。










「―――捕らえられて、たまるかって!」


男はそう呟きながら、この暗い夜道を走っていた。

汗でびっしょりの顔で、手には大きなトランクケースを持って、何かから逃げているようだ。

――タン、タン

後ろから、2、3人くらいの足跡が聞こえてくるが、男は振り向かない。

多分、そんな余裕はないのだろう。

流れていく汗を気にせず、ただひたすら、逃げる事だけを考えていた。

前には二つの小道で別れていて、男は右の道へと走りぬける。

そして、その道に置かれていた汚いごみ箱の中に隠れて、やり過ごす事を決めた。

追いかけてくる足跡はさっきの二つに別れた小道辺りで止まる。



「――奴はどっちへ言った!?」



「わからない。俺は左の道を探すから、お前達は右の方をあたってくれ」



「わかった!」



追いかけてくる者達は二手に別れて、男を追った。

もちろん、男はゴミ箱に身を潜めて、その話を聞いている。

追跡者達の足跡がだんだんと遠くなっていくのを確認して、男は外へと出た。

服にはゴミ箱に隠れていただけの事はあって、物凄い汚物が体中についていた。



「……どうやら上手く成功したみたいだな」


男はぎっしりと手にしたトランクケースを見て、ニヤリと笑った。

「こいつがあれば……“国一つだって堕とせる”。確かそうアイツが言っていたな」

来た道を引き返しながら、男は欲望で駆られていた。

男はまだ、トランクケースの中身を見てはいないのだ。

依頼者は“決して見るな”と言っていたが、“国一つだって堕とせる”と聞くと、どうしても覗きたくなってしまう。



「――――俺が盗んだんだ。少しくらいは見てもバチは当たらねぇよな」


そう言って、男はトランクケースの中身を開けようとした。

その瞬間だった。

男の背後から、声が聞こえてきたのだ。




「―――残念だが、そのトランクケースは返してもらおうか」




男は後ろへと振り返る。

そこには、まだ幼さが抜けきっていない、漆黒のコートに包まれた少年が立っていた。














ボクは体のあちこちに汚いゴミがついた男を見る。

手には“例の物”を持っていた。

組織から、どうやって盗み出したかはわからないが、あの男が持っているのは間違いなくそれだ。



「……大人しく素直に渡したら、あんたを逃がしてやってもいい」

ボクは自分の腕を軽く慣らした。


「子供が偉いような口を叩く、世の中に変わっちまったか?」


「別にそう思ってくれても構わない。……ケースを渡せ」


「へっ!ここまで盗んでおいて、『はい、そうですか』とあっさり渡せるかって!」


そう言って、男は空いていた手をボクの方へと向けた。

そして、その刹那に、男の手から炎が放たれた。


(―――異端者!?)



「――ッ!!」


慌てて交わしたが、右肩から腕まで、服が炎で溶けてしまった。

右肩を抑えながら、ボクは男へと目を向けた。


「どうだ? 熱いか? これが俺の異端能力“炎舞”だ」


男はボクを見て、歪んだ笑いをする。

ボクの最も気に食わない、そんな顔をしている。


「これが……アンタの答えか?」


「ああ、俺はお前みたいなガキにケースを渡しはしないし、負けもしねぇ。悪いが……お前にはここで死んでもらうぜぇー!


「……そうか」


ボクはもう語るまいと両手を添える。






    


      ――― 誓約を誓う ―――








ボクがそう言い終えた後に、地面から長い槍が出現した。

いや…、「出現した」よりは「地面が槍へと変わった」と言った方が正しい。

手前の地面はごっそりと何かが持っていかれたような、大きな穴ができていて、男はそれに驚愕していた。

ボクはその槍を掴み、男の方へと突きつけるように構える。


「お、お前も異端者だったのか!? そ…それにその能力はまさか……!?」


「紹介するのが遅れたな……。これがボクの能力“誓約誓誕”だ」


「…誓約………誓…誕…っ!?」


男は後退しながら、再びボクへと手を向けた。


「そ、それがどうしたってんだ! 俺の炎の方が強いんだっ!―――」


そう叫びながら、手からさっきよりも大きさが増した炎が繰り出された。

ボクはその炎を槍で振り払っていく。


「なっ! ……俺の炎が……消えていく……」


槍の一振り、一振りが炎をかき消していくのに男は驚きを隠せないようだ。


「――さっき、槍を練成した時に地下水を混ぜて造った。炎には水を……、ボクの“誓約誓誕”はそういう事も可能なんだよ」


「そんなのありかよ!! く、くそ!」


男は何度炎を繰り出しても、ボクはその回数分、槍で振り払い、男との間合いはだんだんと縮まっていく。

男は後ろへと下がろうとするが、背後には壁で道は塞がれており、何かに躓いて、地面へと扱ける。

どうやら……もう終わりのようだ。

ボクを見るその男の顔は……。

ただ迫り来る恐怖に怯える子供のような顔だった。

かつてのボクみたいな……、何かにしがみ付きたい顔を。


「た…頼む! ケースは渡すから、い…命だけは助けてくれ!」


「……なら、ケースを渡せ」


「ほ、ほらよ!」


ケースを無事に受け取り、中身を見てみた

ケースの中身、例の物は安全だったのを確認する。


「――こちら、heresy。ケースは無事に取り返した、中身も無事だ」


<…よくやった。持ち出した者はどうした?>


「……殺したよ」


<確認した。では、heresyは予定の合流地点へと向かってくれ>


「ああ、わかった」


無線機から通信は終わり、槍を元の形に戻した。

そして、ボクは振り返って、男へ向けて呟く


「これでアンタはもう大丈夫だろう……。ここからは逃げても構わない」


「…そうか、助かった。本当にな……っ!」


男はそう言って、立ち上がり、ボクの腕を掴んだ。

そして、何やら赤いモノが腕からあふれ出す。



「馬鹿めっ! ……簡単に騙されやがって! お前みたいなガキはあの世で後悔しろっ!!」



炎は一気に腕を燃やしていく。

快楽を得た笑いをする男はもはや、ボクからしてみれば愚かで仕方なかった。



だけど、もっと愚かなのはボクなのかもしれない。

だって……ボクはこの時に微かに殺意が芽生えてしまったから。








だから………









腕に絡んでいた炎はだんだんとかき消されていく……。


男は何が起こったか、分からない顔をしていた。


当たり前だ……。


分かるはずもない。


この男にも…、そう、誰さえも……。


ボクの体自体に“誓約誓誕”が掛けられている事を。


故にボクの体は、人と同じように年はとっても、死ねない体になってしまった。


そう、ファンタジー小説等で出てくる、不死のドラゴンのように……。


無傷のボクに対して、男は再び恐怖の顔に陥る。




「そ……そんな! ど、どうしてだ? まともに食らったはずなのに……」



そんな男の問いなど、無視して流す。

ボクの頭の中には、もう抑えられない殺意の衝動でいっぱいだった。


「……誓約を誓う」


ボクはがむしゃらに地面を集めて、切れ味の良い日本刀を形成する。

そして…、その男の方へと振り上げた。


「ま、まってくれ!! ……さっきのは軽い冗談だ! 悪気はなかったんだ! だ、だから―――」


男の話等、もうどうでもよかった。

ボクはそのまま一気に刀を振り下ろした……。





―――ブシュッ





血が吹き出ると同時に、男の頭は真っ二つに割れて、首元まで裂けた。


真っ向から、血を浴びたボクは髪の毛から足元まで、全身を血で赤に染められた。


床に大量の血が流れる。


その血を欲するかのように、ネズミが何処かから湧き出て、無惨な死体へと集まっていく。



刀を崩し、ケースを握り締めて、ボクは予定合流地へと向かった。



顔は返り血の所為か?



何故か……熱く感じれた。












ボクは…。



ボクは……もう、あの頃のボクには戻れない。



血で染まった手は、やがて明るい世界の人々へも害を及ばしてしまうから。



でも、キミだけは…。



あの日のキミだけはどんな事をしてでも、取り戻すから











だから―――










はーいw


二話をようやく書き終えました!!


桃月です! d(・ω・`)


さてさて、今回は戦闘シーンとシリアスのシーンを入れましたがどうでしたか?


戦闘のシーンの描写はボク、とても苦手なので辛口感想とかあればどしどし言って欲しいですw(汗)(参考にしまくりますおっぉwww


('A`)....。


さて、なんだか話が逸れてしまいましたね....。(汗)


これはプロローグから二話まで、共通で出てきているのですが、


彼方が言う、「彼女」や「キミ」


この人物は3年前、彼方が自分の異端を手に入れると同時に対価として失った人でもあります。


まぁね〜、この少女の名前はもう決まっているんですけどね〜w


そこはお楽しみで♪(サーセンwwww



では、第3話のあとがきでまた会いましょう!


ヾ(*゜∇^*)ノ~ see you next time !!

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