恋人みたいな月に祈りを
掲載日:2026/02/19
陽が落ちて
瞳に星が映るころ
想いは湖面にさざなみ立てる
ふと
舟にねころび夜空をみあげる
やわらかな
視線をわたしに呉れている
まんまるい
満月が
やさしく笑い
あたたかい火のような月光を
そっと地上と
この舟に
浴びせるように
降り注いでくれている
とくべつな
ひとなんて
いないんだ
けんめいに
生きてゆくひとたちだけが
そこここにいて
胸に埋まったさみしさを
笑顔でごまかす夜にも
泣かずに
いくらでも
終わりにするほうほうなんて
あるよ
そのままに
流されながら生きていればいい
刺されたり切られたり
した
傷を舐めて
悲しげな顔をして
痛みに顔をしかめて
生きてゆく
という
終わりの作法もあるよね
ちょっとだけ
お願いしたいのは
やっぱ
笑っていて欲しい
かな
そしてじつはむかし好きあってた月と
このわたしの恋物語なんてのも
想いかえして
うつむいたり
虚しくなったり
しらじらしくなったり
好きあい
直したり
願いは
みんなに笑って欲しいこと
それなら
わたしの
祈りは
恋人みたいな月に捧げよう
ほら
舟を漕ぐオールが
ギィコギィコと
すこしおどけた音をえいえんに
えいえんに歌いつづけてくれるだろう




