第6話 実技試験 中編
突然背後から思いっきり蹴られた俺は体勢を立て直す。
「痛いじゃねえか。ふざけんなよ」
「ありゃありゃごめんにゃ〜」
おかしな語尾で謝ってくる目の前の猫耳美少女。全然言葉に重みがありやがらねえ。
フードの隙間から見える猫耳がぴょんぴょんと可愛らしく光って動く。
夜闇のような漆黒の毛並みはまるで、光さえも吸い込むほどの禍々しさである。
白磁のように色白な顔立ちに、エメラルドのような緑色の綺麗な猫目が張り付いている。幼さを感じさせる一方、確かに双眸からは捕食者を感じさせる。
しかし油断はならない。小柄な体つきだが、先ほどの蹴りを見る限り、しなやかな四肢を持ち合わせており、一切の無駄がない。それにお尻の部分に尻尾らしきものがゆらゆら見えている。
「亜人なのか?」
「せいっかーい。別にそこまで珍しくないにゃ〜」
「そうかよ」
俺は腰に巻きつけてある小さなポーチから用意した魔道具を取り出す。
そしてその魔道具を床に突き刺した。
「閃撃スパーク・ダート」
「うんにゃ?」
異変を感じた猫耳少女は空中へと華麗に舞う。
俺の掌から放たれる雷弾が、先刻までいた猫耳少女の方向へ、1回目の時より加速した状態でぶっ放される。そして他の受験生に着弾した。魔石が壊れる。
「なるほどにゃ〜。その魔道具が君の魔法を増強させてるんだにゃ〜」
「だったらどうする?」
「焔爪フレア・クロー」
彼女の指先に紅蓮の炎が集まり、猫の爪のように湾曲した炎の爪が形成される。
それと同時に床を強く蹴り上げ、その衝撃を利用して一気に俺の眼前へ。
直感で危険信号をキャッチした俺は魔法使用して回避する。
「雷紋スタティック・ステップ」
地面が焼けたのと同時に俺はその場から離脱する。
そして背後に回り、一撃必殺の魔法を放つ。
「雷穿スラスト・ボルト」
「速いにゃ!」
俺が掌を前に向けて放つと、極細の雷光が一点に収束し、槍のように射出される。
細いが密度が異常で、接触した瞬間に内部へと電流が貫通し、魔石ごと内側から破壊する。中級魔法の一種で俺がこの30日間で覚えた最大威力の魔法。
「ぎゃ、にゃああああああああっ!!」
「悪く思うなよ」
猫耳少女の魔石が破壊される。それと同時に俺の右手が痺れる。威力が高く、一撃必殺技だが、暫く使用した手が痺れるというデメリットがある。
「まるで雷のレーザー。見た目以上に危険な技」
「まだ練度が甘くてこれだからな。おっかねえ」
観覧席で受験生を見極める試験官の二人。一人はタバコみたいな物を加えて煙を吐き出している大柄な男。もう一人は可愛らしい少女。
ってよそ見してる場合じゃねえ。
ドームの上空にタイマーが表示される。
どうやら現在15分が経過したようだ。周囲を見渡すともう殆ど残っていない。
そんな時会場に異変が起こる。
「ぐわっ!」
「きゃあっ!」
「がはっ!」
「つっ、貴様!」
残りの受験生が何者かに倒される。倒された受験生の魔石が破壊される。
「さて邪魔者は排除した。僕と一対一でやろう、オオナギヤレン」
気づけば残りは目の前の白銀の美少年と俺だけ。
しかも格好から分かる通り、傷一つついていない。
一方俺は右手がビリビリと痺れ、指先が思うように動かない。
まずいな、今の一撃でしばらく右腕が使えねぇ。
「何で俺の名前知ってる? 俺はお前知らないんだが」
「異質だったから筆記試験の後で少し調べさせてもらった。他意はないんだ。不快にしたなら謝るよ」
「じゃあ名前ぐらい教えてくれるか」
「僕の名前はルーヴァ・セレシオン。セレシオン家の因子を受け継ぎし者」
白銀の綺麗な髪と純白の瞳が俺を見透かす。
その瞳を見た瞬間、背筋が凍りつく。
本能が――はっきりと告げていた。
逃げろ。こいつは俺とは“格が違う”。
いよいよ次回実技試験クライマックスです。




