第4話 筆記試験
「ああ、何か吐きそう」
「ちょっと、試験当日なんだからしっかりしなさいよ」
「だからだよ」
「そんなに緊張してるの?」
「そりゃするだろ」
やれるだけの事はやった。
試験前日にある程度の覚悟は決めていたはず。
だがそれでも、試験当日に緊張という悪魔は俺に重くのしかかってきやがった。
「まあ、落ちたら落ちたでその時考えればいいわよ」
「凄いなアルシェリアは」
「まあ、私は自信あるしね」
「あっ、そう」
余裕だからアルシェリアは緊張しない。それだけ彼女は魔法使いとして優秀なのだろう。
まあ確かに、この30日近く共に過ごしてただ者ではない事は確信できる。外見の美しさといい、隠しきれない品の良さなど、もしかしたら王家などの特別な生まれかも知れない。
「あ、それとくどいようだけどあれは使っちゃダメよ」
「分かってるって」
「じゃあ行くわよ」
「あ、ああ」
俺はアルヴェリア王立魔導学院の試験会場まで足を運んだ。
王立都市『アルヴェリア』の中央区に建設されている、歴史ある由緒正しき王立魔導学院。校舎は直径1kmを超える建築物であり、土地の広さはその4倍程である。
敷地は 六角形の形状をしており、一説によれば世界魔導機関六代魔法学院の一つを象徴していると言われている。
約8000人程の生徒が学院に在籍しており、日夜学びを務めている。最高峰の学院ゆえ、生徒の多くは貴族、有名魔導家系であり、一般家庭出は数少ない。
白銀石で大部分が建築されており、一目見ただけで圧倒されてしまうほどの美しさを兼ね備えている。その美しさがより優秀な志願者を引き寄せていると言われている。
「すげえ」
「どう感動した?」
「凄すぎて言葉が出てこない」
「そんなに!?」
俺はアルヴェリア王立魔導学院の前でその豪華さと美しさに圧倒される。そんな俺を横目で見てくすくす笑う他の受験生。
服装はアルシェリアが用意してくれたから決して浮いてないはずだが。リアクションが田舎者すぎたか?
入り口には5m程のゲートがあって、そこで受験生かどうかを判別しているらしい。
アルシェリアのおかげで願書は提出できたので、何とかなったが、いざ来てみると弾かれないか心配になる。
「ふーっ、無事通れた」
「当たり前でしょ。受験しに来てるんだから」
ゲートを潜り、広大な敷地を跨ぎ、校舎の中へと足を踏み入れる。
案内係の指示に従って試験会場に向かう道中、真反対にいた青年と目が一瞬だけ合う。
だがお互い何かリアクションを取ることはなかった。
「試験開始まで30分程ありますので、各自臨めるように準備をお願いします」
大きな教室、日本の高校までのそれとは大きく違い、どちらかと言うと大学に近いイメージだ。大きな長机が階段上に複数並んでおり、それぞれ受験番号の場所に座り試験を受ける。
一次試験は筆記試験。内容はアルシェリア曰く、魔粒子学(基礎理論)、魔法史、属性理解・相性理論、魔法陣読解、魔法倫理、魔獣生態学、応用魔術計算辺りから出題される。
勿論30日程度で覚えられる物でもないので、高得点は不可能だ。だから俺は二時試験の実技に賭けている。
「はーい。ではこれより試験を始めますが、カンニングなど不正行為を働いた場合、即退出してもらいますのでお気をつけください。また途中で体調がすぐれない場合などは静かに手をあげて言葉は欲せずに」
試験官と思える人々が複数で受験生を囲む。監視でもある。ちなみにここは第一教室で第二、第三でも同じように受験生が試験を受ける。志願者数が多すぎて一つの教室に収まりきらないようだ。
「では試験開始」
試験官の合図と同時に大きな鐘が鳴り響く。
その瞬間前もって配られていた問題にようやく手をつけ目に通す。
大問1 以下の4つの選択肢から選べ※また背景についても100字以内で述べよ!
問1:第一次魔法大戦で勝利した国家2つと、勝利した背景を述べよ!
A:ブライスヘル公国 B:ゼルガント魔導連邦
C:クレオステリア聖王国 D:ヴァルドラグ帝国
1問目から難しすぎるだろ。確かこれはBとDだったはず。論述がある以上勘で答えられないのがネックだ。
30日の付け焼き刃で太刀打ちできるのはごく僅かだろう。
その後も問題は続いた。魔法陣の欠損補完、魔粒子の数と導出問題、魔獣生態の難問など、初見殺しの問題ばかりだった。
その中でアルシェリアが出そうだと判断した範囲のいくつかがまさかのピンポイントで出た為、非常に助かった。
「はいそこまで。試験終了です。お疲れ様でした」
試験時間180分の筆記試験が幕を閉じる。
俺の頭はショート寸前だった。
だが完答した問題も何問かあった。
「どうだった?」
「難しすぎ。何問か解くの諦めた」
「大問3と5でしょ」
「あれは30日では無理だ。てか疲れた」
「切り替えましょ。二次試験はお昼挟んで午後からよ」
試験終了後、多くの生徒が教室を後にする。名門同士だからか、親しげに話す様子も見てとれる。
それと同時にアルシェリアを見て避けているのが見てとれる。
何か確執があるのか?
「ねえ、屋上で食べない?」
「開放されてるのか?」
「されてる」
俺はアルシェリアの生い立ちを聞く勇気はなく、心に留める。
今は午後の実技試験に向けて集中しないと。
こうして鬼門だった筆記試験が静かに幕を閉じた。
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よろしくお願いします。
次回実技試験です。




