第3話 魔法と勉強
半ば無理やり魔導学院の試験を受けさせられる事となった俺は、宿屋でアルシェリアに指導してもらっている。
「どう理解できた?」
「できるわけねえだろ、まだ二日目だぞ」
「冗談よ」
何で異世界まで来てこんな勉強漬けを経験せねばならないのか。普通もっとこうチートスキル授かって、無双とかできるもんじゃねえのか。
「なあ、実技は1属性だけ扱えれば問題ないんだよな?」
「ええ、例年通りなら恐らく受験者同士の対戦になる筈だから、要は学院側にアピールできれば問題ないわ」
「負けても合格できる可能性はあるってことか」
「うん。毎年何十人かはそれで合格できてる」
アルヴェリア王立魔導学院の選抜方法は筆記と実技の両方の総合力で決まる。だがアルシェリア曰く、比重は圧倒的に実技らしい。
つまり俺が合格するには魔法を習得して実技に賭けるしかない。
だが現実は恐らく甘くはない。
魔法──それは魔粒子と呼ばれる目に見えない極小の物質を体内の魔法因子が刻まれた器官と共鳴し、膨大なエネルギーへと変換する。
魔法因子──この世界に生を受けた者は体内の複数の器官に因子が刻まれる。因子の大きさや形、図柄は個人で異なる。最新の研究ではどうやら遺伝の割合が圧倒的だそうだ。
魔法属性──魔法の属性は大きく分けて7つに分けられる。火、水、風、雷、土、光、闇。単純な相性問題は火→風・水→火・風→雷・雷→土・土→水・光→闇・闇→光。
固有スキル(別名:ユニークスキル)──選ばれしものだけが持ち得る特別なスキル。どうやら魔法因子が大きく関係しているそうだが⋯⋯ 今の俺には関係ないのでスルー。
「俺にも魔法因子ってあると思うか?」
「多分あると思う。確かめる方法はあるわ」
そう言うとアルシェリアは真っ白の小さなポーチから、一つの無色透明な石を取り出した。
「それは?」
「属性を確かめる石よ」
「こんなのがか?」
「いいから握ってみて」
俺はアルシェリアに無理やり無色透明の石を握らされる。手を包み込むように握られて、一瞬心臓が跳ね上がった。
「30秒ほど握ってれば因子があれば色が変わるわ」
「へえー」
俺は緊張しながら右手で石を握りしめる。30秒がこれほど長く感じたのは久しぶりかも知れない。
「うわっ!?」
俺の右手の中にある無色透明だったはずの石が変色していた。その色は濃い黄色だった。
「雷の属性ね」
「てことは因子があったということか」
「そういう事になるわね。おめでとう」
どうやら俺の魔法の属性は雷らしい。雷属性はゲームやアニメの影響か、強いイメージしかない。内心テンションが爆上がっていた。
だが同時に一つの疑問が湧く。
「なあアルシェリア。2属性以上使える可能性はないのか?」
「人によるわ。でも2属性使えるって事は必ずしもメリットがあるわけじゃないわよ。例えば──」
魔法の属性が複数使える場合、一つ一つの属性に対しての練度、質は単一属性の使い手と比較して大幅に落ちる事がわかっているらしい。
また同時に2属性以上を扱い使用すると、威力も単一に比べて落ちると言われている。最もこの研究結果はあくまで同一の魔力量で比較した場合の話である。
勿論メリットもある。有利属性が増えることで戦略性が増す。
「まあ兎に角良し悪しがあるって事。ヤレンは石が1色に染まったということは雷のみってこと。OK?」
「OK。雷魔法を習得すればいいんだろ」
俺はアルシェリア指導の下雷属性の魔法習得に向けてもう特訓し始める。もちろん筆記試験の為学術的体系も学ぶ。
そうして気づけばあっという間に試験前日となっていた。
「はあ〜。何とかやれる事はやった。これでダメなら仕方ない」
「約束は2つ。緊張しすぎないこと、そしてあれは──」
「分かってるって。使うなっていうんだろ」
「分かってるならいいわ」
宿屋に併設されてる食堂で軽い夕食を摂る俺たち。
勿論今までの宿代、食費代諸々は全部彼女持ちだ。
出会って間もない男にこれだけ尽くしてくれる彼女には感謝しているが、少し危うさを感じて心配になる。
「アルシェリアは試験大丈夫なのか?」
自分のことで精一杯で忘れていたが、彼女も受験者である。
「大丈夫、大丈夫。人の心配してると落ちるわよ」
「だな」
「寝坊したらシャレにならないわよ」
「怖いこと言うなよ」
俺は夕食を取った後、少しだけ夜風にあたり満点の星空を眺める。
星々が綺麗に光るのを見て、地球を思い出す。
「俺がいなくなってどうなったかな」
何か家族は心配してるだろうか?
ニュースになったりしただろうか?
それとも変わらず⋯⋯ 。
「起きてたら不安になる、寝よ」
試験開始まで残り1日。
次回より魔導学院試験編です。




