第27話 恩と恩
すみません。色々ありまして投稿遅れました。また投稿頻度高めていければいいなと思っています。
エリス・アポクリファside
現在私はある少女に保護されてる。
その少女の格好は純白のフリルを幾重にも重ねたワンピース。
上品に着こなしており、膝下から僅かに見える細い真っ白な足は神々しさすら感じる。
肩には短いショートケープを羽織っており、柔らかい布が彼女の華奢な体を丁重に覆っている。
「そんなに警戒する必要はありませんよ。それより傷の方はどうですか?」
「問題ねえよ。それより何で私を助けた?」
大凪夜蓮を殺す為に奇襲攻撃を仕掛けた私だが、地上から誰だか知らねえ奴に攻撃を受け負傷した。幸い致命傷には至らなかったが、戦線離脱を余儀なくされた。
教会の屋根で止血し治療していた所を、この謎の少女に助けられ、治療を受けた。傷は瞬く間に消えた。痛みもない。
「感謝はしてるが、正直胡散臭さも感じている」
「ふふっ、素直な方ですね。しかし、貴方の気持ちは理解できますよ」
横の少女は軽い笑顔で私に同情するが、全く本心は読めない。
それどころか全てを見透かされているようで気味が悪い。
「話を戻させてもらうぜ。何で助けた?」
悪いが敵なら、恩人でも容赦しねえ。
私には私の目的があるんだ。邪魔は許さない。
「結論から述べましょう。貴方に少しお手伝いして欲しいことがありまして」
「はあ? 手伝いだ?」
「どうですか? 恩を恩で返してみませんか? 仇で返すよりきっと後々良いことがあると思いますよ」
純白のフリルを幾重にも重ねたワンピースを完璧に着こなしている少女の髪は、白銀色で月光のような淡い輝きを帯びている。
瞳は透き通る白銀。虹彩の奥には、うっすらと何かの紋様が刻まれてるように見えるが、よく読み取れねえ。まあ、兎に角めっちゃ神秘的で謎が多く、怪しい女ってことだ。
「内容次第だ。まず聞かせろよ」
「いい返事が聞けて嬉しい限りです。早速本題に入りますが、ある国に隣接した海底神殿に眠っている宝物を頂いてきて欲しいのです。どうです、快く受けてくださいますか?」
「海底神殿だと!? 何でそんな事私がしねえといけねえんだよ。自分でその宝物とやらを頂いてくればいいだろうがよ」
「仰る通りですね。しかし私もこう見えて結構な多忙でして、出来る限り他者に任せたいと思っているのです。ご不満ですか?」
目の前の少女は顔色一つ変えず笑顔で淡々と会話を進める。
胡散臭さを感じながらも、その笑顔は偽物と断定できない。そんな曖昧な判断しか下せない自分自身に少しだけ恐怖を覚える。
「ご不満だらけだ。悪いが無理だ。私は大凪夜蓮を殺さなくちゃならねえ。海底神殿なんかに行ってる暇はねえんだ。悪いが他を当たってくれ」
私の断りに対してゆっくりとこちらへ顔を近づけ、覗き込んでくる。
思わず謎の圧で身動き一つ取れずその場で固唾を飲む。
「しかし、今の貴方では大凪夜蓮を殺すことは不可能に近い。そして何より貴方の目的に大凪夜蓮の死は必要ありません」
「!? どういう意味だ?」
「簡単です。貴方はカイン・ヴォルグラードに利用されているのです。貴方の最愛の妹リリス・アポクリファを生き返らせるのに彼を殺す必要はありませんよ」
「!? ────それは本当か?」
「ええ、真実ですよ。貴方はただ彼の掌で、使い捨ての駒として利用されていたに過ぎません」
私は絶句した。彼の言葉に縋り、信じ、生きてきた私に目の前の少女の言葉はあまりにも残酷で耳を塞ぎたくなる内容だった。
「どこかで貴方も真実に気づいていたのではありませんか? 盲目に生きるには貴方はまだ穢れきっていない」
「……………………」
私は何も言い返すどころか言葉を発することすらできなかった。
まるで信仰していた神が存在しないような、そんな絶望と空虚に満たされた。
「一つだけ聞き入れたくない助言をあげましょう、エリス・アポクリファ。真実とはどんな形でさえ必ず生者の目の前に現れ立ち塞がります。その時目を背けたものから、生きる意味を見失うのです」
「はっ、説教かよ?」
「いえ、ただの戯言だと思っていただいて結構ですよ」
暫しの沈黙が続く。私はどうするべきだ?
そもそもこいつの言う事に正しさなんか一ミリもねえかもしれねえ。だったら大凪夜蓮を殺す事に集中────いや無駄か。
目の前のこいつの言う事はおそらく真実に違いねえ。カイン・ヴォルグラードの言葉が嘘だなんて、自分でもどこか分かってたさ。利用されてるだけだってな。
だが、それでも私にはあいつしか縋る奴がいなかった。ただそれだけの話。
「おい、どうやったら妹が生き返る?」
「知りたいのですか? しかし私も対価もなしに情報を、物を売る事は基本しないのです。それ相応の対価を頂けますか?」
眼前の少女の笑みは冷たく、無機質に感じた。背筋がゾクっとして凍る。
だがそれでも、リリスが生き返る可能性が僅かでも上がるなら──。
「どのみちカイン・ヴォルグラードとは連絡が取れねえからな。あいつがしくじったんならどの道私は別の方法を模索するしかねえ。お前を完全に信じてなんかいねえが、私の中に選択肢が増えることはいいことだ。相応の対価を払ってやるよ」
目の前の少女は先程より、心なしか嬉しそうな表情を私に見せる。
「では交渉成立ですね。穏便に済ませられてとても嬉しい限りです」
「で、そのある国に隣接した海底神殿ってどこにあるんだ? まさか場所を知らないなんて訳はないよな?」
「勿論です。詳細が記された地図をお渡し致します。それとこの小水晶もご一緒に」
「何だこの小さな水晶は? 連絡用か?」
「ええ、まあそんなところです。貴重な代物ですので大切に扱ってくれると助かります」
どの道焦っても仕方ねえ。リリスを生き返らせるには確実な手段が必要だ。
カイン・ヴォルグラードが当てにならねえ現在、こいつに協力するのが論理的だ。
少なくとも話し方から見て、無知とは到底思えない。ぜってえ何か知ってやがる筈だ。
だが、今すぐ聞き出すのは恐らく無理だ。私の直感がそう言ってやがる。機が熟すのを待つしかねえ。
「期限は? まさかのんびりって訳にはいかねえんだろ?」
「そうですね。遅くとも二ヶ月以内に連絡を下さい。成否に関わらずです。そこで私が判断致します。如何ですか?」
「問題ねえ、OKだ。それと早速だがもう行くぜ、何せ一応犯罪者なんでな」
「いいお返事が聞けるよう期待しています」
その一言を満面の笑みで言い放ち、すぐさま姿を消した眼前にいた少女。
そういや、名前聞いてなかったな。まっ、いいか、興味ねえし。
「ヴァルディウム海邦か。ちと面倒だな」
ヴァルディウム海邦── 表向きは交易国家だが裏で遺物研究が盛んな国である。また中立国家としても有名であり、正直治安はあまり良くない。
「まっ、考えてても仕方ねえ。しゃあねえ行くか」
私は地図と小水晶を大切にポーチに仕舞い込み移動し始める。
悪いなリリス、もう少し待ってろよ。
姉ちゃんが絶対生き返らせてやるからな。
次回から複数の物語が動き出します。お楽しみに




