第25話 期待以上
ルシウス・エヴァレインside
僕は今、冷静でありながら胸が躍っている。
何せ彼らの行動が期待以上だからだ。
「本当に素晴らしい。全てに感謝をしなくては」
「てめえ、相変わらず性格終わってんなあ」
「心外だな。僕は本心から感謝しているんだよ」
「それはてめえの駒になってくれてだろうがよ」
僕の契約精霊アルバ・フェンリス。彼は兎に角、口が悪い。
しかし僕と違って、相手には本音をぶつけるタイプだ。
そんな彼が時折羨ましく感じる時もある。
「しかしレオンハルトを零空間送りにする必要はあったのかよ?」
「確かに漆黒の破壊者にはレオンハルトですら勝てないだろう。しかし彼には底知れぬ何かを感じる。万が一を考え、慎重に行動しなければね」
「随分あの教師を買ってるんだな。俺には大して脅威には感じなかったけどな」
それは、きっと君が人間の域を遥かに超えた存在だからだ。
僕はまだそちら側ではない。
だが──君にそれを伝えたところで、理解に苦しむだろう。
本当に羨ましい限りだ。
「だが結果的に僕の行動は先見の明があった。現に大凪夜蓮は今覚醒段階に入った。そしてアルシェリア・ルミナリアの瞳も引き出せ、彼らは共鳴した」
「共鳴っつたら漆黒の破壊者を呼び寄せたのもあの二人だろう? 皮肉なもんだな。被害者でありながら、加害者であるっつーのはよ」
「そうだね。しかし持つ者は時に持たざる者より残酷な運命に会う。謂わば宿命」
確かに望まぬ宿命。
だが君たちの苦悩は、所詮持つ者の苦悩。持たざる者と比較した時、選択肢は無数だ。
持たざる者の真の苦悩は、何も出来ない己の無力感。
「そろそろ世界均衡機構が始動する筈だ。参加準備をしておいてくれ」
「何だ? 今回は呼ばれんのかよ。前回は無視されたじゃねえか」
「きっと彼らは招集するだろうね。何せ色々疑惑を掛けられてるからね」
「かはっ、つまり罪人としての出席かよ」
「相変わらず人聞きが悪いなあ。まだ疑惑だろ。それに僕にとっては正義なんだ」
学院長室をちょこまかと移動して、宙を漂うアルバ。
僕はそれを目で追いながら、僅かに微笑む。
「何かあれば僕を守ってくれよ親友」
「かはっ、まあしゃあねえな。これでも一応契約精霊だからな」
「期待してるよ神格精霊アルバ・フェンリス」
窓の外が光り輝いている。
不穏な空気が冷たい風と共に空に漂う。
だが僕は確信していた。自身にとって最良の未来になる事を。
フィオナ・ラクスside
「一体どうなっとるん!?」
うちは、今王都アルヴェリアのさっきまで市場だった場所の建物の屋上にいる。
それは何故かって? そんなの上空から変な球体が飛んできたからや。
しかもその炎、漆黒と紫色を混ぜたような炎で、炎が広がった場所の物質は全部消し炭になってんねん。して炎だけがメラメラ音を立ててまだ燃え上がってる。
ほんまどないなっとんやろか。しかもその前にも変な奴らが襲撃してきはってたし。
「夜蓮君と思わしき攻撃が見えたから、きっと戦っとるんやろうけど、うち心配やわ」
うちはすぐに夜蓮君の応援には向かわんかった。何せうちあまり戦闘向きちゃうからな。しかも偶然出会った教師の一人に頼まれて、今まで民間人の避難に当たっておったんや。やっと自由になったんやけど、どないしよか。
「でもやっぱ、うちも向かわんとあかんやろね。何かには役立てるはずや」
だって心配やもん。出会ってからの期間は短いんやけど、3人共うちにとっては大事な仲間や。ここで見捨てるんは絶対あかん。
「な、なんやあれ!?」
突如目の前が大きく輝き光り出す。
あの場所は夜蓮君がいる場所あたりちゃうん?
「ほんま何が起きてるん? 無事でいてよ」
うちは夜蓮君の下へと急ぎ向かう。
戦闘向きではないけど、『あれ』なら出来るはずや。
うちの取っておきが役に立つといいんやけどね。




