第17話 奇襲
俺は巨大な爆発音が轟いた学院方向に急いで戻る。
走り行く最中、街の住民達がパニック状態で怯えている。
「くそ、一体何が起きてんだ!」
雷魔法、雷紋スタティック・ステップを連続で使用して、加速する。
少しの魔力消費は背に腹は変えられない。
「!?」
「あっれーばれました。何でですかね?」
俺は学院付近で一度静止する。
何者かの気配を後方から感じた為。
「誰だお前? この騒動はお前の仕業か?」
「うーん? あ、間接的なら正しいですかねー」
何だこいつ? 甲高い声でニヤニヤと。
ただの少女じゃないのか?
「直接やったのは〜、上の方達ですねー」
「上?」
目の前の少女が指を上空斜めに指し示す。
俺の視線がその指に誘導される。
(何だあの二人!? まさかあそこから?)
「狙いはまさか?」
「そう、貴方なんですよー。まあなんか、神眼書ってのに記されてるらしくてー」
「は!? 神眼書?」
「私もよくわかんないんですけどー。まあ一応上からの命令ですのでー」
今一状況が複雑でピンと来ないが、要するに狙いは俺ってことか。
だったらここを離れるべきか? 人が多い所だと、周りを巻き込んでしまう。
「あのー色々考えてる所申し訳ないんですけど、多分その考えは無駄かと」
「何言って!?」
体が動かない。どうなってやがる?
くそ、まるで地面に縫い付けられた感覚だ。
「私の今の役割って〜、何か知ってますかー?」
「陽動、足止めか?」
「せいかーい。実はそうなんですー。私とおしゃべりしてくれてありがとうございますー」
やられた。油断したつもりは微塵もなかったが、いつの間に。
こいつの能力か?
「なあ、一般人の俺にこんな執着する理由って何? こんな大規模テロまで起こしてさ」
「うーん、私に言われても困りますねー。そう言うのは彼に言ってくださいよー」
「?」
動けない俺の背後へと唐突に現れた一人の少年。
くそ、気付けてはいるが反応できねえ。
「初めましてだな。大凪夜蓮」
「人と会話する時は背後じゃなく、正面が礼儀じゃねえの」
「確かに一理ある。悪かったな」
俺の目の前にゆっくり移動してくる。
そして俺を見つめる。
「で、俺に何の用だ? 俺はお前らのこと知らないんだけど」
「俺の名はカイン・ヴォルグラード。十剣の一人だ」
十剣? 聞いたこともない。
どこかの組織名か?
「で、その十剣様は俺にどんな用件が?」
「単刀直入に言う。ここで死んでもらう」
「!?」
俺の命が目的? あいつらとはまた違う?
「てっきり生捕りかと思ったぜ」
「それはこの前の相手の目的がそうだったからか?」
「ああ。てっきり、俺に利用価値があるもんだと」
「お前にはない。だが因子にはある」
「何!?」
カイン・ヴォルグラードはゆっくりと俺に近寄って、俺の胸を指で撫でる。
思わず気持ち悪く、背筋がゾッとした。
「他の連中が、どう考えているかは知らないが俺が興味あるのはお前の因子だけだ」
「はっ、そうかよ。複写展開術式番号02、ルーヴァ式・光魔法……起動! 白刃ノ律シルヴァ・レギュレート」
俺がコピーしたルーヴァの魔法が、目の前の少女に襲い掛かる。
空間を走る白銀の線が、少女に向かって数本襲い掛かる。
「ちいっ!」
「うわっ!」
二人して動揺し、回避する。
だが、その瞬間、俺は身動きが取れるようになる。
そして一瞬の隙をついて左数十メートル先の建物に身を隠す。
「あー逃げられちゃいましたねー」
「役立たずが」
「えー、それ言っちゃいますー。あんな悠長に話して殺さなかった貴方にも問題があると思いますけどー」
「おい口を慎め」
「あーすいませんですー」
「チッ、まあいい。神眼書がある限り、俺の勝ちに揺らぎは無い」
何話してるかまでは流石に聞こえないな。
しかし、思った通りだ。あの女の能力、間違いなく接着。
ターゲットをある地点に接着させる。だが、それはあの女の動きも同時に接着させる。
現に俺の攻撃でその場から動いた瞬間、俺も自由に動けるようになった。恐らくこの推測は大まかには正しいはずだ。
問題は距離だが、今の俺が自由に動けるってことは何らかの制約があるはず。
「ふぅー」
今の所痛みも脱力感も出ていない。
一度使用した程度なら、副作用は気にしなくて良さそうだ。
(どうする? 狙いが俺なら一度離れるか?)
(それとも、ここで叩くべきか?)
俺が物陰に隠れながら、複数の選択肢を模索し、検討する。
その時だった。
再び上空から、学院付近目掛けて大きな火球が複数降り注ぐ。
(くそ、あいつら見境なく攻撃しやがって)
ちんたら考え込んでる暇なんかねえ。
先に、あの上の奴を叩く。
「雷穿スラスト・ボルト」
俺が掌を斜め上空に向けて固定する。
極細の雷光が一点に収束し、槍のように射出される。
密度を今までで最大まで濃くし、威力と速度を上げる。
「散れ」
俺の雷穿が空中に向かって一直線に轟く。
雷速すら超えた俺の攻撃が、一瞬で相手に届き、貫く。
視界が追いついた時には、既に結果だけが残っていた。
「がはっ!」
僅かにずれた? 致命傷が裂けられた。
あの速度にしかも不意打ちでありながら、僅かながらも反応したのか。
(くそっ、仕留めきれなかった)
(急いで場所を変えねえと、居場所がバレる)
俺は急いでその場を後にする。
僅かに雷の影響で焦げた臭いが、その場に残り香として宙を漂う。
────
エリス・アポクリファside
「がはっ! 痛ってえ!」
思わず声を漏らし、近くの教会の屋根へと着地する。
「クソが、一体誰だ、私を攻撃したやつは」
ギリギリで気付けたおかげで、僅かに反応できたが、完全には回避出来なかった。
お陰で左脇腹が貫通したじゃねえか。しかも妙に体全体が痺れてやがるし。
「おい、何があった?」
私が常備してる通信用ルーペからよく見知った声が聞こえる。
私の大嫌いなカイン・ヴォルグラードの声が。
「誰か知らねえけど、こっちに攻撃してきやがった。お陰で少しの間動けねえ」
「どの方角だ?」
「あ? 私から見て右斜め前下方。学院付近だ」
「そうか。お前は止血に専念しろ。身を隠せ」
「あ? 大凪夜蓮とかいうガキはどうすんだよ」
「こっちで対処する。黙って俺に従え」
「チッ、わーったよ」
ルーペの通信が切れる。
私は止血をしながら、大きく息を吐く。
「くそ、こんな所で油売ってる暇なんてねえんだ」
満面の笑顔で私の名を呼ぶ最愛の妹。
その妹を復活させるために。
「ぜってえ私は大凪夜蓮を殺す」
待ってろ、リリス。
今姉ちゃんが蘇らせてやるからな。
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