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『隠しクエスト突破で本物の異世界へ──複製スキル〈フォージ・コード〉が世界の法則を上書きする』  作者: 風白春音


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第13話 緊急会議

 レオンハルトside


 「以上が報告となります」

 「ああ、ご苦労だったね」

 「いえ別に。教師としての責務ですから」


 私は事の顛末を学院長に報告した。

 目の前のこの人は嬉しそうに話を聞いている。

 相変わらず何を考えているか分からない奴だ。


 「それでどうだった?」

 「どうとは?」

 「オオナギヤレン君の様子さ。彼にはとても期待しているんだ」

 「まだまだ未熟な生徒だと感じますが」


 派手な金髪、金色の光り輝く瞳、中世的な顔立ち。

 何を考えてるか分からない、胡散臭さ。

 全てが異質で、学院長に相応しくない。

 正直に言って私はこいつが嫌いだ。


 「そうだ。この後緊急会議を行うから出席するように」

 「ちっ」

 「ふふっ、隠し切れてないよ不快感を」


 学院長は深蒼の高級な布地で編まれた長衣についた埃を手で払いながらこっちを見る。


 「まだ何か?」

 「いや……何でもないよ。ご苦労だった」

 「では失礼します」


 私は学院長室を退出し、軽く息を吐く。

 大凪夜蓮の事は少し前に学院長から話は聞かされていた。

 そして実際試験当日彼を一目見て、今までにない可能性と危険性を感じた。


 「学院長といい、あの少女といい、一体オオナギヤレンに何を期待しているというのだ」


 確かにあのユニークスキルは特異だ。

 あのレベルは私も見た事がない。

 彼のポテンシャルには驚きを禁じ得ないのは事実。


 だが、経歴を調べた限り一切不明。

 家族構成すら謎だ。

 少なくとも名家出身ではない。


 いやそもそも何故こんな出自も不明な少年が、ユニークスキルを宿している?

 それ以前になぜ学院長は彼の詳細を知っていた?


 「全くこの世界は謎だらけだ」


  ────


 「学院長、彼らの目的は?」

 「大凪夜蓮君だね」

 「一体あんな出自が不明な少年に何の用があって」


 私は今、先刻の事件の事で開かれた緊急会議に参加している。

 ある会議室の一室に参加できる全ての教師陣が一堂に介している。


 「まあまあ落ち着いてアージェ先生。学院にも生徒にも被害がなかったのですから」

 「それは結果論です。もし学院長の言うとおりオオナギヤレンが原因なら早急に対処すべきです」


 アージェ・リオナシスと呼ばれる長髪が似合う教師は少し興奮した様子で発言する。

 眼鏡が多少ズレたのか聞き手である右手で元の位置に整える。


 くだらない。これはただの茶番だ。

 学院長の一存で生徒の処遇など全て決まる。

 緊急会議という名の報告会だ。


 「君達も知っての通り、彼には特別な力がある。狙いはそれだろう」

 「ユニークスキル『複製』ですか。確かに五十以上生きてきましたが、あのような能力は見聞きした事がない。しかも出自は不明だとか」


 現在五十代半ばの薄毛の男性教師の名前はヴァイパー・アドシア。

 毒を扱う事に長けた人物である。


 「レオンハルト先生は彼の処遇について、何か意見があればお聞きしたいですが」


 チッ、白々しい。釘を刺すつもりか?

 

 「私は彼をこの学院で学ばせるべきだと考えています」

 「ほう、それは何故かな」

 「彼には才能がある。まだ原石だが、磨けばとんでもない代物となると確信しています。そして生徒の才能を伸ばすのが教師の役目かと」

 「だそうだ。他の教師陣はどうかな?」


 学院長は私の言葉に満足した様子を浮かべながら、他の教師に意見を求める。

 だが実際は、意見という名の同調だ。

 オオナギヤレンに関して何も言うなと、静かな圧力をかけている。


 「学院長やレオンハルト先生の意見には概ね賛成ですが、もし再び外敵が襲ってきた場合の対策は必要です。彼だけが生徒なのではありませんから」

 「うん。そこは対策本部を結成するつもりだし、学院外にも協力を要請するつもりだよ」


 学院長の発言に溜飲を下げざる得ない教師陣。

 ふっ、やっぱり茶番だな。


 「結論大凪夜蓮君には学院に残ってもらう。対策はしっかり行う。これで報告書を纏めてもいいかな?」


 その場に参加した教師全員が、本意、不本意はあれど頷いた。


 「じゃあ会議は終了で。お忙しい中、皆様の働きに感謝します。何かあれば報告を」


 茶番という名の会議が終了し、会議室から教師陣が退出していく。

 私も退出しようと歩き出した時、一人の幼い女性教師に呼び止められる。


 「少しレオンと話したい」

 「その呼び方はやめろ。何の用だ、私は忙しい」

 「結構大事な話」

 「ちっ、少しだけだ」


 私は彼女と共に、会議室を後にした。


 ────


 一見すると十代半ばにしか見えない小柄な少女。

 だが近くで見ると、その幼い容貌の奥に、年齢を重ねた者特有のオーラが宿っている。

 

 淡いオレンジ色の髪は腰の辺りまで真っ直ぐ伸びていて、余計な装飾の類は一切ない。

 前髪は目にかからない程度に整えられている反面、癖っ毛が2本上に向かってぴょこんと跳ねている。

 肌は白く滑らかだが、血色は控えめであり、どこか人形めいた印象を与える。


 瞳は澄んだ緑灰色。

 大きく丸くてお人形のような可愛らしいクリっとした目。

 しかし、それに反して、視線からは子供のような無邪気さはどこか影を潜めている。


 身長も私の腰より少し高い程度。しかも結構な細身。

 その癖、意外と姿勢は正しい。


 身に纏う学院教師用の外套は特注で、小柄な彼女に合わせて作られている。


 彼女の声は非常に独特で、可愛らしさと美しさを兼ね備えている。


 そんな彼女の名前はリリア・ヴァイスリヒト。

 一応こんなのでも学院で教鞭を取っている。


 「で、わざわざ場所を変えてまで話したい用件とは?」

 「学院長は怪しい。何かを隠してる」

 「だろうな。既知の事実だ」


 アルヴェリア王立魔導学院の屋上にて風を浴びながら会話する二人。


 「レオンは大凪夜蓮についてどう思う?」

 「私が彼に可能性を感じているのは事実だ。しかし情報が足りなすぎる」

 「学院長はどこで知ったのか」


 相変わらず見た目に反して、鋭く賢いやつだ。


 「さあな。だが、学院長だけでなく侵入者もオオナギヤレンを知っていた。出自を調べる価値はありそうだ」

 「相手は神選者じゃないって」

 「そう口では言っていた。しかし事実かは不明だ」


 私が本気で戦えば、ノクス・ヴァルディオンには勝てただろう。

 しかし、あの名も知らぬ少女に勝てたかは正直怪しい。

 それほどまでに異質であった。


 「私も色々調べてみる。レオンも調べてみて」

 「だからその呼び方はやめろ。調べ物に関してはこっちでも漁ってみるつもりだ」

 「二人きりなのに」


 リリアが何か小声で言った気がしたが、小さくてよく聞き取れなかった。

 だが聞き返すほど興味もない。


 「気を付けておけ。近いうち大規模な戦闘が起きる気がする」

 「それは統計? 直感?」

 「俺の勘だ」

 「信用できる」


 私は雲一つなく、太陽がギラギラと輝き照り出す青空を見上げた。

 

 (いつまでこの景色が見られるだろうか)


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