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はじまりの金華山

この物語は、特にこれといった趣味もなく毎日ただ平凡に暮らしていた35歳独身女性が、転勤で愛知に引っ越した後に登山にのめり込んでいくまでを描いたドキュメンタリーである。

あぁ、、、今日も朝が来た。


視界の端の眩しさに朝が来たことを知るが、まぶたはまだ開けたくない。

(今日こそ目覚めたら超絶美少年になっていて、スカウトされて芸能人やりながらモテモテの大学生活を送る、、、そんな朝を妄想する。)

休みの朝は、昼過ぎまでそうやって目を閉じたまま妄想世界で遊びます。


東京に憧れて、新卒で愛知県から出てきた私の35歳現在のリアルな休日の過ごし方です。

もはや現実を生きるのは諦めてます。

住まいが東京から横浜へと変化した13年後も、休みの過ごし方は変わりません。


ひとしきり妄想し尽くしたらのそのそと起き上がり、空腹に耐えかねて仕方なく街に出る。


それが私の日常だった。


あの日、古い友人からの誘いを受けるまでは。





とある休日(愛知県)

「明日、山に行かない?」


友人から連絡が来たのは、横浜から地元愛知へ転勤した後のとある秋の日だった。

(は?山?)

今まで休日に山へ行こうなんて思ったことはない。

むしろ山を意識して見たことがない。

山などただそこにあるだけのもの。

行くとか見るとかそんな観念すらない。

そして、休日の過ごし方は専ら買い物かエステかカフェ巡りだ。

30代独身(彼氏なし)女の休日なんてみんなそんなもんでしょ?

(友人は1人しかいないからわからないが。)


あぁそうか。

名古屋には娯楽がないからとうとう山にでも行ってみるかとなったんだな。

仕方ない。付き合うか。暇だしな。


「OK.だけど靴がないから貸してほしい。」

返信を打つ。

横浜では買い物かエステかカフェ巡りしかしていなかった私の靴はヒール一択。

スニーカーさえ持っていなかった。


友人のスニーカーを履いたら、さあ、、、!

えっと、、、

「、、、どこに行くんだっけ?」

「金華山だよ。岐阜県にある。」

どこにある何かもわからないまま、友人の車に乗って暇つぶし登山へ向かう。


駐車場に車を停めると、しばらく公園沿いに道路を歩き、池の横からぬるっと山へ入った。

明るくなだらかな道を歩いていくと、やがて目の前に看板が見える。

「ここから先、体力に自信のない人は引き返して下さい。」

おおげさな!

体力に自信のあった私達はそのまま歩き続けます。


しかし、だんだん地面が土から岩へと変化し、さらに角度がどんどん急になります。

思わず手で岩を掴みながら、全身で登ります。

どれだけ岩道を上ったのか、、、

息が上がり始める頃、やっとでコンクリートの道に出ました。

「あ!」

目の前に岐阜城が見えていました。

着いた。


汗だくでハアハア言っている私達の目の前を、ミニスカートの女子がはしゃぎながら通り過ぎる。

金華山山頂は岐阜城やリス園やレストランなどで賑わっており、公園からロープウェイで行けるので観光客がたくさんいます。

とりあえず、せっかく来たので山頂の展望レストランにて「信長どて丼」を食します。


、、、帰るか。

良い暇つぶしにはなった。


そんなことを思いながら帰り道を探します。

行きの道は急な岩道すぎるので違う道から帰りたいんですが、道がたくさんありすぎてどこから下りたら駐車場へ辿り着けるのかわからない。

ぐるぐると何周もして、警備員さんに道も聞いたのに結局わからなくて、友人は足が疲労でプルプル震えると言うし、、、


仕方なくロープウェイ下山しました。



これは、、、

あり、なんだろうか。


何かに負けた気がした。


帰宅した後

子供の頃に遊んだ後のような心地良い充実感と、ほんの少しの敗北感が、頭の中で入り交ぜになっていつまでも残っていた。


そして


「初心者にオススメの山を知らないか」

マッチングアプリで登山が趣味だと言っていた男性にメールを打った。

今になって思えば、これが初めての登山だった。

しかし、周りに登山をする人もおらず、何もわからない超絶ど素人が山を始めるには、12月はあまりに無謀すぎる季節だった。


次回

撤退!大寒波の入道ヶ岳

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