星の記憶が呼び起こすもの
読む側から書く側へ・・・初投稿です。
いろいろふわふわ設定ですのでご容赦を。
ーーここは魔法学園「星紋の塔」。
大陸内外から、魔法使い、と呼ばれる者たちが入学してくる。
入学時に適性を調べられ、私は癒しの魔術科だ。
癒しの力を持つものは少ないらしく、クラスは10人に満たない。
それでも、今年もつい先日、少ないながらも1年生が入学してきて、私も先輩になった。
「あっという間の1年だったなぁ」
その日、私ーーイリス・ヴァレンティアは、新学期の新しい課題に追われ、学園の図書室に来ていた。
図書室と言えど、高くそびえる書架が迷路のように並び、古代の魔導書や魔法理論の記録が静かに眠っている。
イリスは窓側のお気に入りの席に近づくと、少し窓を開けて外を見た。
「ん~!いい天気!よしっ!頑張るぞっ!」
空気はやわらかく、空を舞う光の花粉が、窓辺をふわりと照らす午後。
最初こそやる気だったものの、しばらく経てば眠気も襲ってくるというもので…。
ぽやっと窓の外を見ていると、ふいに胸の奥がざわついた。
「え……? なに……?」
理由はわからない。けれどはっきりとした「呼ばれるような感覚」。
イリスは奇妙な感覚にひかれるままに席を立つ。
いつもは通らない奥の奥、隅々まで届くはずの魔道光も届かない影の中に、どこか妙な気配を感じた。
そこには、古びた書棚がひとつ。
「こんな場所、あった……っけ?」
自分でもわからないまま、手を伸ばす。
その瞬間ーー
ガタリ。
書棚の奥から、何かが 落ちてきた。
まるで誰かが引き抜いたかのように。
それは埃をかぶった1冊の本。
真っ黒な革表紙に、銀色で星の紋章が描かれている。
装丁は異常なほど精緻で、まるでそれ自身が魔道具のようだった。
手に取った瞬間、ふわっと何かの香りがした。
懐かしくて、切なくて、涙が出そうなーー遠い記憶の中の花の香り。
「これ……」
ページを開くと、失われたと言われる古代文字で書かれた魔法式と、祈りのような文章。
その中央に、ひときわ輝く ”透明な小さな魔結晶” が挟まれていた。
触れた瞬間、イリスの魔力がかすかに共鳴し、結晶が淡い光を放った。
本に書かれていた古代文字も光を帯びる。
≪もし、この石が共鳴したなら。星紋の塔最上階へ》
「読める…読めるわ!」
読むと同時に心臓の鼓動が跳ね上がった。頭の奥で何かがざわめいた。
ーーまるで、その言葉が ”自分に向けられたもの“ だと、魂が知っているかのように。
気づけばイリスは、本を胸に抱き、塔の螺旋階段を上っていた。
迷いも、疑問も、今はなかった。
ただ「行かなきゃ」と思ったのだ。