第一章
「待ってたぞー。菫様。」
この人が「神様」なのか。
「あ、あなたは?」
この光景が信じられずにいる私は静かに口を開いた。
「ん?ああ、挨拶してなかったな。俺は伊織。まあ、神だ。」
え?そんなざっくりなあいさつでいいの??困惑しつつ、「私は……」と言ったところで止められてしまった。
「菫様のことは大体知ってんの。神龍菫。身長153.8センチ、体重、」
「ああっ!!ストップストップ!!」
伊織はどうして?という顔をしたがいったん止める。
「いろいろ質問したいの。おばあちゃんからあんまり聞いてないから。で、どういうこと?」
「ったくよ、玲子様より人使い荒いなぁ。人じゃねぇから神使いか?」
私がじとっとした目を向けると「わかったよ。」と言って話し始めた。
「ここがどこかっていうのは知ってるよな流石に」
私は頷く。
「それじゃあ、続けるぞ。まず俺は、神だけどかくかくしかじかでこの箱に閉じ込められて、その時に拾ってくれたのが玲子様。そして、玲子様は俺のっていうか神に近い血筋の一族だったの。ここまではいい?」
私は頷く。なんとなく話は分かってきた。
「んで、俺は伴侶を手に入れなければこの箱から出れないってことがわかって、玲子様が結婚するって言ってくれたんだけど時間切れでさ。俺が拾われたのは玲子様がっと…いくつだぁ?」
この神、計算ができないのか。ふいに出てきた疑問は置いといて話を聞く。
「ああ、そうだ。玲子様が28の時に拾われたんだ。玲子様はほんとに悔やんでくれてな。んで菫様だ。」
突然、話の内容が自分に向けられたのでぎょっとしてしまった。
「私が何かあるんですか?」
伊織は笑った。
「ああ。関係大アリ。玲子様が自分の代わりに菫様を渡すって言ったんだ。」
伊織は私に近づいてくる。
「まあ、簡単に言えば婚約ってこと。よろしくな。」
全く話についていけない。でも、一つだけ疑問が湧いてきた。
「ねえ、婚約ってことなのになんで敬称付けてるの?」
おばあちゃんはまだわかるけど私に「様」をつけることの意味が分からない。
「それは、玲子様は俺を拾ってくれた人。そして、この箱を拾われた俺は実質使い魔みたいなのになるっていう変なのがあるんだよな。んで、ご主人様の孫だから敬称。わかった?」
「そこは、分かった。使い魔なんて、ほんとにいるんですね。」
「ちょっと待て。菫様さ、さっきから敬語使ってるけどいらないよ。」
「あ、うん。わかった。」
私がそういうと伊織は笑った。
「玲子様に似てるなやっぱ。あ、もうそろ時間だ。またな。」
「え、?ま、まって!!」
次の瞬間、強烈な光が私を襲った。
次に目を開けたとき、日付は翌日になっていた。