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キャシディ エピローグ①:弔いの祈り

 夕暮れ時の柔らかな光が、静かな丘を包み込んでいた。

 風が草を揺らし、かすかに花の香りを運んでくる。

 草の葉がそよぐ音が、まるで誰かの囁きのように響いた。

 丘の頂上には、一つの小さな石碑が佇んでいた。


 キャシディとマキシマスは、その前で静かに立ち尽くしていた。

 名前も日付も刻まれていない無機質な石。

 それは、かつてキャシディに憧れ、そして彼女と刃を交えたあの暗殺者の少女の墓だった。


 キャシディは深く息を吐き、ゆっくりと膝をついた。

 指先で草を撫でると、その感触が心に沁みる。


「……あなたがこうして眠ることになったのは、私の過去の選択が原因だった」


 囁くような声。

 その言葉には、深い悲しみと後悔が込められていた。


「私はあなたの未来を奪った……それがどれほど取り返しのつかないことか、今になってようやく理解したわ」


 キャシディの瞳が静かに揺れた。

 少女の最後の言葉が、今も胸の奥で響いている。

「あなたに憧れていました」

 その一言が、何よりも重くのしかかる。


 彼女は目を閉じ、そっと祈りを捧げた。

 かつて冷酷な暗殺者だった面影はもうそこにはなく、ただ純粋な悔恨を抱える一人の女性の姿があった。


 隣でマキシマスも静かに膝をついた。

 彼の手がそっと合わされ、穏やかな表情のまま目を閉じる。


 マキシマスの祈りは言葉にならない。

 だが、それでも伝わるものがあった。

 彼の心の中にも、少女への哀悼の念と、キャシディの痛みに寄り添う気持ちが確かにあった。


「……この子の悲劇を無駄にはしない」


 静かな声が、夕暮れの丘に溶け込むように響いた。

 マキシマスはゆっくりと目を開け、キャシディを見つめる。


「僕たちはこの先に続く道を、彼女のような子供たちが笑顔で生きられる世界に変えていく」


 キャシディはマキシマスを見上げた。

 その言葉に、彼の信念が強く表れていた。


「ええ……そうね」


 彼女は静かに頷いた。

 瞳には涙が浮かび、そして新たな決意の色を宿していた。


「この子の分まで、私は生きる」


 ふと、遠くで鳥のさえずりが聞こえた。

 夕日が丘の向こうへと沈みかけ、空は金色と紫に染まっていた。

 その光景は悲しみを包み込みながらも、新しい未来への希望を感じさせた。


 キャシディはそっと手を伸ばし、石碑に触れた。


「……安らかに眠って」


 まるで子守唄のような、優しい声。


「あなたが生きるはずだった世界を、これから私たちが作っていくから」


 マキシマスはそっと彼女の肩に手を置いた。

 その温もりが、確かな力となって彼女を支えていた。


 二人はしばらくの間、何も言わずにそこにいた。


 やがて黄昏が深まり、丘に影が落ち始めた。

 キャシディはゆっくりと立ち上がる。

 その表情には、迷いはなかった。


「行きましょう」


 振り返り、マキシマスに向かって静かに言う。


「私たちには、まだやるべきことがあるわ」


 マキシマスは頷き、キャシディの手を取った。


「……ああ、一緒に歩もう」


 二人は互いに頷き合い、丘を後にした。

 新たな世界を築くための、一歩を踏み出して。

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