幕間 見せたくない理由と友達
ちょっと投稿に時間が掛かりました汗
セリフが長かったり、読み辛いかも知れません。今回はミカさんとメティスちゃんのちょっとしたやり取り。こういう所で書いておかないと、いきなり親密になってるみたいな、不自然なことが起こりますからね。
said:フォルミカ
「る、ルヴァンシュさん!ここまで来れば、あとは私だけで大丈夫ですので!」
「えっ⋯いやせっかくだからテイムするとこ見ていこうかなと」
「だ、ダメです!それにテイムするには時間が掛かるんです!シルクちゃんをテイムした時も三日は掛かりましたから!」
「いや大丈夫だ――「ダメです!」――そ、そうか。分かった、じゃあ俺はここで帰るよ」
「僕は居ていいのかい?」
「出来ればいない方がいいですけど、ウィルさんいないと何が起こるか分からないのでお願いします」
「わかったよー」
「じゃあミカさん、頑張って」
「は、はい。ここまで一緒に探してくれたのに、本当に申し訳ありません」
「いいんだよ。もしテイム出来たら、女王様見せてくれ」
「それは必ず!」
「じゃ」
「僕が送っていくよ。だから守ってねー」
ウィルさんに送られながら、ルヴァンシュさんは蜂の巣から出ていく。
「⋯はぁ。私酷いよね。ここまで凄くお手伝いしてくれたのに断るなんて」
「ギチ?」
私の言葉に可愛く顔を傾げるシルクちゃん。
「もぉー、とぼけちゃって⋯。シルクちゃんを仲間にした時にも私、すごく頑張ったんだからね」
ツンツンとシルクちゃんの腹部を突く。それを嫌がったのか、私の肩から降りて離れてしまう。眷属召喚の小蜘蛛は付けてくれているから問題ないと判断したのかな?
でもシルクちゃんをテイムした時、すごく頑張ったのは本当で、シルクちゃんはフィールドボスだから当時の私からすれば凄く強い。そんな凄く強いシルクちゃんをテイム出来たのには理由がある。
私は虫が好きだから、虫の魔物を仲間にしたかった。そこで初心者の私でも行けて、虫がいそうな場所といえば新緑の森だった。
ハイルジスト王国の第二の街エンリットと、第四の街ヒューラルの間にある森で、そこまで人気な森じゃない。レベル上げとかならダンジョンに行けばいいし。
そんな森で出会ったのがシルクちゃんこと、フォレストクイーンスパイバー。なんか普通の蜘蛛より大きいけど、私はシルクちゃんを見た瞬間、この子だと思ってすぐ近付いて従魔契約の魔法を使った。でも当然ながら失敗して、あっさり倒されてしまった。
本来テイマーは、最初の街付近でスライムとかウルフを従魔にして進むのがセオリーらしい。一人で無理ならギルドが手伝ってくれる。もちろんチュートリアル的なのだから、最初の街付近でしかギルドは手伝ってくれない。
でも私は虫が好きだから、スライムやウルフを従魔にしても、最終的には従魔契約を解除してしまうと思う。それはそれで別に良いと思うのだけど、解除された魔物が可哀想だと思って出来なかった。
だからテイマーなのに従魔が一匹もいなくて、新緑の森に来てるというおかしな道を進んでいた。
シルクちゃんにやられては、新緑の森のポータルストーンにワープして、またシルクちゃんを探して、見つけたら従魔契約の魔法を発動して失敗したらまた戻っての繰り返し。
従魔にする魔物の体力を少なくすると、従魔契約の成功率が上がるらしいけど、やっぱり傷付けるのはいや。ま、まぁ、傷付ける前にやられちゃうけど。
そのローテーションで繰り返していたけど、どうしても仲間にならないから、良い情報が無いか掲示板をまた見直して、やっと良い方法が見つかった。ただそれはあまりに⋯その⋯⋯人には見せれないというか。いやでも、これを女王様にやらないといけないんだ!頑張れ私!
「え⋯えっと⋯⋯こう⋯かな⋯⋯?」
「戻った⋯よ?」
「えっ!?あっ、ち、違うんですこれは⋯!」
「なに子供が無理やり大人の魅力を出そうと頑張っている様なポーズは」
「せ、セクシーポーズです⋯」
「⋯ルヴァンシュ君を墜とす練習かなー?」
「ち、違いますよぉ!じ、実はこれは――」
私がなぜこんなセクシーなポーズをしているかというと、とあるスキルのせいである。そのスキルの名は魅了。
この魅了はNPCや魔物を一種の催眠状態にして、支配下に置く事が出来る。プレイヤーには効かないし、NPCが魅了に掛かる確率は極めて低い。
魔物に関しては、良く効く魔物もいれば、効き辛い魔物もいるし、全く効かない魔物もいる。例えばゴブリンやオークなんかは魅了が効きやすい。でも、アンデッド系やスケルトン系は全く効かない。
そして虫系は効き辛いが掛かる事がある。魅了が成功すると、従魔契約は確実に出来るみたいで、魅了してからテイムするのが良いのだが、魅了は効き辛い魔物が多い。
特に人気のあるウルフ等の獣系とか、鳥系とかは効き辛い。でもそう考えると、なんでゴブリンとかオークは良く効くのでしょうか?さっぱり分かりません。
まぁとにかく、魅了は効き辛い魔物が多いのですが、その魅了効果を少しでも上げる方法がある。それがセクシーポーズだ。セクシーポーズをすると少しだが、魔物が魅了に掛かりやすくなるという、オマケというか隠し補正がある。
実際、シルクちゃんを魅了するために、何回もやられながら、シルクちゃんの前に行き、セクシーポーズをして魅了を発動してやられるというのを繰り返して、3日後ようやく魅了に掛かった。
ま、まぁ、本当に補正が掛かっているのか分からないけど、少しでも魅了が掛かる確率があるなら恥を忍んでもやるしかない。早くいっぱい愛でたいのだから。
シルクちゃんがフィールドボスっていうのを後から知ったけど、私のユニークスキル【魔物の王】が無かったら、一生テイム出来なかったって事だよね?【魔物の王】があったから良かったけど、もし無かったらと思うと少しゾッとする。
ちなみに、シルクちゃんを見つける道中、どうしても戦闘を避けられないなら、魅了を使ってな何とか凌いでいた。新緑の森はゴブリン系が多くいたのは助かった。
「なるほどねー。だからそんなポーズをしてるのね」
「は、はい」
「確かにこれは、ルヴァンシュ君に見られるのは恥ずかしいか」
「そ、そうなんです」
「ミカさんはルヴァンシュ君が好きなのかい?」
「それはもちろんです!」
「あぁ、いや、友としてではなくてね、異性としてだよ?」
「そ、それは⋯正直分かりません。ただ、一緒にいると安心するというか、こう心がポカポカするというか⋯」
もちろん、ルヴァンシュさんとは現実で会った事がないから、会ってみないと分からないけど、ルヴァンシュさんは現実で会っても変わらないだろうなって、勝手ながら思っている。
「私、恋愛とかしたことなくて、この気持ちが好きなのかどうか分からないですけど、出来るならばこの先も一緒にいたいなって⋯」
高校生の時に夢川君って人がいたけど、夢川君は友達として見てたし、恋愛とか全く考えなかったな。ただ私が、虫好きという共通の友達が出来たという事が嬉しくて、次はどんな話をしようかな?みたいな事ばかり考えていた。
「ふーん」
興味があり、それを面白がってる様な声でこちらをニヤニヤしながら見てくるウィル。
「い、いまのは忘れてください!」
「どうしよっかなぁー?」
「もぉー!怒りますよ?」
「ふふ、冗談だよ。誰にも言わないさ。ただ若いなぁーって」
「若い?」
「そっ!それよりいいのかい?いつまでも僕と喋っていて」
「そうでした!早く女王様とお友達にならないと!」
女王様とお友達になる為に、蜂の女王様の前でセクシーポーズをしながら魅了を掛け続ける行為を5日間続けてようやくテイム出来た。
女王様も最初、この子何やっているんだろう?と首を傾げていたけど、3日目ぐらいからもう何も気にしなくなっていた。
女王様に初めて会った時は蜂球になっていたけどあれは、私達が初めて蜂の巣に入ったから警戒していたのだと思う。だけど私が無害だと分かると、もう蜂球にはならず、子供を産んだり、働き蜂にお世話されたりしていた。
5日間も女王様の前でセクシーポーズをずっと続けていたら、確率でテイムが成功したのか、女王様が根負けして成功したのか分からない。でも諦めなくて良かった。今は凄く頑張った自分に何かご褒美をあげたい気持ちだよ。
ルヴァンシュさんもレアアイテムに何日も掛けて手に入れるとか言っていたけど、こういう気持ちなのかな?
蜂の女王様ことアイビーちゃんはやっぱり竜の森のフィールドボスだった。そしてやっぱり【眷属召喚】というユニークスキルを持っていた。種族はキラークイーンビー。
女王が付いてるとユニークスキルは【眷属召喚】なのかな?効果はシルクちゃんの眷属召喚と効果は同じで、アイビーちゃんのステータスの3分の1の働き蜂を召喚する。凄くありがたいスキル!大好きな虫がいっぱい召喚出来るのは私にとって最高だよ!
アイビーちゃんを従魔にして、アイビーちゃんに新しい女王様は産める?と聞いたけど、問題なく産めるとの事だ。
基本的にアイビーちゃんが産んだ蜂は、アイビーちゃんの支配下になるんだけど、その支配下を強制的に解除する事が出来るみたい。
シルクちゃんも新しい女王を産めるみたいだけど、今産んだところでだからね。もちろんシルクちゃんも、支配下を強制的に解除も出来るけど、今もそうだし、これからもあんまり使うことの無い能力かな?
って事で今はアイビーちゃんをテイムしてから次の日の20時ぐらい。ルヴァンシュさんはまたレアアイテム掘りでボス部屋に籠るって言ってた。
私は今日はアイビーちゃんとシルクちゃんを愛でながらのんびりする事に決めている。
忘却叡智のボス部屋前に置かれている、メティスちゃんのどこでもセーフティルーム(ベット)でのんびりしていると、珍しくメティスちゃんがやってくる。
「蟻ちゃん?ハローハローなのよ!」
「あっ、メティスちゃん!こんばんは!」
「その飛んでる子が新しい従魔なの?」
「はい!キラークイーンビーのアイビーちゃんです!」
「案外小さいのよ」
「あっ、この子もシルクちゃんと同じサイズ変更を持っている従魔なんです!元の大きさは成人男性の三倍ぐらいの大きですかね?」
「それはかなり大きいのよ⋯」
少し怯え声を出しながら、私の向かい側にあるベットにメティスちゃんはちょこんと座る。
「それで?ルヴァンシュと一緒に行ってきたのよね?どうだったのよ」
「それはもう、凄く楽しかったですよ!まずですね――」
「そうなの?それから他にはどんな事があったのよ?」
「――ていう事がありました!次は――」
「へぇー、ウィルナードという風竜、今度紹介してほしいのよ」
「分かりました!あとは、いつもありがとうって感謝されました」
「感謝?」
「も、もちろん、メティスちゃんにも感謝してるって言ってましたよ!」
「そうなの」
「正直嬉しかったです。ルヴァンシュさんがレアアイテムで周回?してる時、声かけていいかな?って、声掛けたら邪魔にならないかなって思っていたので、ルヴァンシュさんから喋ってくれて助かってるって聞いて安心しました」
「そんなのルヴァンシュが思うわけないのよ。もしそれで文句言うなら私に言うのよ?」
「ありがとうございます!⋯でも、私の方こそ感謝しているんですよ」
「そうなの?」
「はい。私は現実で――」
話の流れでいつの間にか、私の過去をメティスちゃんに話していた。
「なるほど、確かに虫を嫌う人は多いのよ。それは人間には嫌悪という感情があるからなのよ。ほらGとか蚊って汚そうに見えるし、病原菌とか持ってそうって思うよね?だから嫌悪感が本能的に出ちゃうのよ。あとは知識不足なのよ。知識が無いとこの虫、もしかしたら毒を持ってるかもとか、噛むかもとか思っちゃうのよ。人間は未知のものを恐れるっていうのよ」
「な、なるほど。確かにそう言われてみればそうかも知れませんね。じゃあメティスちゃんは虫を恐れていないんですか?」
「恐れるわけないのよ。私が恐れているのは、大きい人や生き物なのよ。知ってる人なら別だけど、知らない人とか、動物で言うならゾウとか怖いのよ」
「そうなんですか?象は可愛い思いますけど」
「蟻ちゃん達から見ればなのよ。私は近付きたくないのよ。いつ間違えて踏まれるか気が気ではないのよ」
「確かに見てる視点が違いますもんね。でもメティスちゃんにも怖い物があるんですね。メティスちゃんの事が知れて嬉しいです!」
「当たり前なのよ。まぁこんな事ならいつでも教えてあげるのよ」
「はい!話が逸れましたけど、このAWF内で本当の私でいられるのはルヴァンシュさんのおかげなんです!それなのにルヴァンシュさん、大袈裟じゃないのかって言うんですよ!だから私、そんな事ないですって!言ったんです。それで⋯その後は⋯⋯」
「その後は⋯?」
真剣で夢中になって私、ルヴァンシュさんに顔を近付けたんですよね。その後ルヴァンシュさんに近いって言われて謝ったんですけど、その時ルヴァンシュさんが私の事をその⋯綺麗で⋯眼福って⋯!
あれってやっぱりシルクちゃんの事じゃないよね!?シルクちゃん近くにいなかったし!あの時は聞こえてない振りをしたけど、本当に心臓がバクバクで⋯!
「なにいきなり顔を真っ赤にしてるのよ」
「な、何でもないですぅ!」
「そう。なら聞かないことにするのよ。それよりも私も聞きたいことがあるのよ」
メティスちゃんがいきなり真剣な目になってこっちを見つめる。私もメティスちゃんを見て心構えをする。
「その⋯蟻ちゃんは私の事、怖くないの?居心地悪くないの?」
「どうしてそう思うのでしょうか?」
「私は周りからみても天才なんだと思うのよ。そんな私といる事で、必ず比べてみられてしまうのよ。そういう人は私を対等とは思わないし、自分で私より下と理解しているから、私に近付かないのよ。もちろん私を利用したり、対等になろうと近付いてくる者もいたけど、数日すれば離れていくのよ。数日もすればその人の行動がある程度分かるから、その人といる時は常に先読みして行動しちゃうのよ。私、面倒事が嫌いだからそうしてるのだけど、私といると全てを見透かされているんじゃないか?って、怖がって離れていくのよ。そして私の隣にいる者は、私を遠目で見ている人達に、私を利用しようとしているから近付いているとか、私に釣り合わないとか悪く言われてしまうのよ。もしそんな事言われたら、蟻ちゃんは嫌じゃないの?」
「⋯⋯私は嫌じゃありません!私はメティスちゃんより劣っていると思うので、下にみられるのは仕方ないです。でもメティスちゃんはもう私の友達です!だから周りから悪く言われようと気にしません!言わせておけばいいのです!」
「そうなの。それはそれで嬉しいけど、やっぱり私が気にしちゃうのよ」
「そうなのですか?」
「わ、私だって蟻ちゃんの事を友達だと思っているのよ。だからこそ、友達を悪く言われるなんて嫌なのよ」
「そうですか。でも嬉しいです!じゃあもし誰かが私の悪口を言っていたら、私を守ってください!」
「守る⋯?」
「暴力とかじゃないですからね!」
「そんなの分かっているのよ!というか私が喧嘩できるように見えるの?」
「見えませんね。それはそうと、逆に誰かがメティスちゃんの悪口を言っていたら、私が守ります!前にも言いましたけど、私はメティスちゃんから離れる気はないので!これでもまだ気にしますか?」
「⋯はぁ。なんでそんなお人好しなのよ。もしこれで私だけ蟻ちゃんを守らなかったら、私が嫌な奴みたいじゃないのよ」
「メティスちゃんは嫌な奴じゃない事を私は知っているので大丈夫です!」
「またそうやって逃げ道をなくしてくるのよ」
「ダメでしょうか?」
「⋯わかったのよ。守ってあげるのよ。そのかわり、蟻ちゃんも私の事を守るのよ?」
面倒くさそうな声色で答えてログアウトしていくメティスちゃん。でも私は見逃さなかったよ?面倒くさそうだったけど、嬉しそうに少し口角を上げているのを。
「これが所謂、ツンデレってやつなのでしょうか?⋯確かに可愛いですね」
私フォルミカこと、村山雫が初めてツンデレの良さに気付いた瞬間であった。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




