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お互いの気持ち

今回は切りが良い所が見つからず、少し長いです。




「ミカさん、お待たせ」


「ルヴァンシュさん!」


メティスの何処でもセーフティルームでログインすると、椅子に座ってミカさんが待っていた。


「ずっと座って待ってたの?」


「は、はい。森に行くのが楽しみすぎて」


「そうだよなぁ。なんたって新しい虫を見つけに行くんだからな」


「それもありますが、⋯⋯ルヴァンシュさんと⋯⋯」


「ん?なんて言った?」


「い、いえ!なんでもないです!」


それもありますがの後がよく聞き取れなかったな。まぁ言い直さないって事は大した事ではないのだろうな。


「それより、その虫が出てくる近くの森って何処なんだ?」


「あっはい、えーとですね、この街の人から聞いたのですが、アインスルトから北に行くと大きな森があるんですよ。その森は竜の国をグルっと囲んでいて、竜の森と言うそうです。ただ、プレイヤーからは試練の森と言われてますね」


「試練の森?それはどうしてだ?」


「メティスちゃんに聞くと、あの森は外から見るとドーナツ状みたいな形なのですけど、中は森の迷宮の様な迷路になっているのだとか。そしてその迷路を踏破すると、凄く強いドラゴンさんが待ち構えているみたいで、未だに誰もそのドラゴンさんを倒せた事がないそうです」


「なるほどな。どう考えてもそのドラゴンを倒せば竜の国に入れるって事だろうな。とはいえ、森ではなく空から竜の国に入れそうな気もするけど」


「空からは駄目みたいですよ。なんでも、空から竜の国に行こうとした魔物プレイヤーがいたのですが、謎の結界?の様なものに阻まれていけなかったそうです」


「なるほどな」


だから未だに竜の国に行けた人がいないのか。正規ルートではドラゴンを倒せたらって感じなんだろうが、なんか別ルートで竜の国に入れる方法がありそうだけどな。


「まぁでも、今回はあくまで虫探しなんだろ?」


「はい!奥まで行くつもりはないです!」


「じゃ、さっそく行こうか」


ってな感じでアインスルトの街から出て北にいく。もちろん馬車等は何もないので歩いていく。


⋯⋯⋯

⋯⋯


「ようやく着いたか」


アインスルトから北へ進み約1時間ってとこか。冒険者ギルドに地図があり、それを見たかんじ、そこまで遠くなさそうだったのだが、やはり実際に移動してみないと分からない。


まぁだが、ミカさんがいるおかげで道中は退屈しなかったし、本当に旅をしているみたいで少し楽しかった。これが一人だと相当辛いだろうな。


「すごく大きな木ですねー」


「そうだな。遠くからだと普通の森に見えたが、近くまで来ると普通の森とは違う事がよく分かる」


一本一本の木がデカすぎる。これはあれかな?竜サイズに作られた森なのかな?とはいえ、森の奥はかなり深いのだろう、奥まで見通せない暗さだ。森の入り口付近は木漏れ日が入り込み、まだ明るいのだが。


それはそうと、道中でいつもありがとうと伝えるつもりだったのだが、いざ言おうとしたら急に緊張して、結局ここまで着いてしまった。メティスが気を利かせてくれたのに情けない事だ。帰るまでに必ず言おう。


「この森はどこから入るんでしょうか?」


「何処から入っても同じじゃないか?」


「ならここから入ってみましょう!」


って事で竜の森に入ってみる。ふむ、至って普通の森なのだが。魔物もいないし。ミカさんの話では森の中は迷宮みたいになってる話だが、全く迷宮っぽく――


「――っ!?」


「――えっ?今の感覚って⋯」


体に感じた事のある感覚が走る。少しの浮遊感が一瞬、その後は別の場所にいる。そう、これは転移やボス部屋にワープした時の感覚に似ている。それはミカさんも同じ様に感じ取ったって事だろう。


そしてやはりだが地形が変わっている。さっきと同じ森の中だが、今いる森の方が森らしいというか。


膝あたりまで生えてる植物がそこら辺に生えていたり、あまり大きくない木が行く手を阻んでいたり、木の根っこが盛り上がり、歩き難い地形を形成していたりと


「あっ!ポータルストーンがありますよ!」


「本当だ」


「でもさっきの感覚って、もしかしてここはダンジョンなんですかね?」


「どうだろうな」


ここがダンジョンかどうかは分からないが、恐らくは違う。ダンジョンであるなら、ダンジョンストーンがあるはずだ。


つまりダンジョンではないが、ダンジョンみたいな場所なのだろう。ある程度森の中に入ると、この場所に飛ばされるって感じなんだろう。


「とりあえず進んでみるか」


「はい!」


俺達は森の迷宮を進んでいく。ミニマップでは竜の森となっているが、本当にダンジョンを攻略しているみたいだな。


「もしかしていきなりボスとかだったり⋯?」


「いやそれはなさそうだ。魔物誘引で魔物達が近付いてくる」


この森に転移?した時から魔物の気配が近くから感じる。ポータルストーン付近だから近付いて来なかったが、ポータルストーンを離れてからすぐ分かった。俺の魔物誘引で魔物が近付いて来ている気配がする。ほら、早速来たぞ!


「ミカさん!」


「はい!シルクちゃん!」


ミカさんも気付いていたか。気配察知系を取ったほうが良いとメティスに言われてたから取ったのかな?俺の方が気配察知系のレベルが高いから、結構離れていても魔物が何処にいるかは分かるが、流石にこの距離になればミカさんでも気付いたか。


「フゴォー!」


「この豚さん、忘却叡智の墓所にいませんでした?」


「いたな。確かこいつは豚頭(オーク)か。で、その後ろには豚頭騎士(オークナイト)か」



オークの上位種、オークナイトが率いるオークの群れか。オークが4匹、オークナイトが1匹だ。この森は忘却叡智みたいな、とんでもない数の魔物がいるわけじゃないから余裕を持って戦えるだろう。


それに忘却叡智で出てきたオークはゾンビだったから、臭いが無いだけでもだいぶマシだ。戦いに集中できる。ミカさんも眷属蜘蛛を5匹に、パワークラングをシルクちゃんと眷属に掛け終わって、戦闘準備が完了しているな。


「フゴッ!フゴォー!」


「豚の騎士さんが叫ぶと、周りの豚さんの体から赤いオーラが出ましたよ!」


「あれは戦いの雄叫び(ウォークライ)か!」


戦士職が覚えるバフスキルだ。効果は範囲内にいる味方の攻撃力を上げるというシンプルだが強い効果だ。流石に上位種になってくるとこういうスキルも使ってくるか。まぁだが、それだけだな。


俺は念動で鋼剣を浮かし、それに気を取られているオークを、俺が手に持っている鋼剣で真っ二つにする。やっぱスラッシュが使いやすすぎてこればっか使ってしまうな。


ミカさんの方も危なげなくオークを倒している。オーク2匹にシルクちゃんと眷属ちゃんは過剰戦力か。後はオークナイトだが、オークみたいに念動鋼剣で翻弄しつつ


「《スラッシュ》!へぇ〜」


流石は上位種といったところか。普通に反応して受け止めてきたな。だが流石に俺のスラッシュを受け止めてる状態で、後ろからの斬撃はどうしようもないだろ?俺は念動鋼剣を動かし、オークナイトの背後から一閃。


オークナイトは下位種のオークとは違い、鎧を着ているから防御は硬いが、それでも半分は削れたか。


「フ、フゴォー!」


「なんだ?背後から卑怯と言いたげだな。魔物が一丁前に騎士の真似事か?騎士道を語るのは良いが、命のやりとりに卑怯も糞もないぞ」


オークナイトと鍔迫り合いをしながらそんな事を語っていると、オークナイトの後ろから糸が飛んできて、オークナイトの足に巻き付き、引っ張られて体勢を崩す。


「ルヴァンシュさん、オークナイトさんと何か話してました?」


「あっいや、なんでもない」


俺は蒐集家ではあるのだが、わりと戦闘も楽しんでる。つい戦闘に熱が入るとのめり込むっていうかさ。恥ずかしいから抑えた方がいいんだけどな。そう考えながら無防備に這いつくばっているオークナイトを倒す。


「そうですか?ならどんどん進みましょう!」


ミカさんは戦闘ではなく、違うところで楽しんでるな。まぁ良い事なんだけど。俺は楽しそうならミカさんを見ながらどんどん先を進む。


⋯⋯⋯

⋯⋯


「あれ?またポータルストーンがありますよ!」


「本当だな」


竜の森を探索してから約1時間。竜の森入り口のポータルストーンとは明らかに違うポータルストーンが見つかった。そしてその先は広い円形のエリア、ボス戦だろうな。まぁこの先は当分進む事はないだろう。


竜の森入り口からここまでで遭遇した魔物はオークにオークナイト、木の魔物トレントにゴブリンの上位種ホブゴブリン。鉄の鎧に覆われた猪、アイアンボアにオークの2倍ぐらいの大きさのトロール。ウルフの上位種フォレストウルフに、森虎ことフォレストタイガー。あとは車ぐらいの大きさがある蟷螂のキラーマンティスに、角が槍のようになっているカブトムシ、ランサービートル。


結構敵の種類が多くてビックリしたな。特にキラーマンティスやランサービートルにミカさんは大興奮してた。倒したくないと言ってたが、問答無用で攻撃してくるから仕方なく倒してしまった。


敵の強さ的には中級者ぐらいのレベルかな?この森の魔物はそこまで強くないみたいだな。俺もミカさんも危なげなく戦えてる。


それはそうと、ミカさんがアインスルトの街で聞いた情報によると、まだ出てきていない虫の魔物がいるみたいで、今回はその虫がお目当てらしい。


「ミカさん、少しここで休憩していきませんか?」


「そうですね!」


って事でスタミナ回復をしながら休憩。ミカさんにはロックリザードのハンバーグ。俺は森熊シリーズの料理がいっぱいあるから、適当に食べるか。


「いつもありがとうございます!」


「周回してると食材系の素材が集まるからな。気にしないでくれ」


「はい!それにしても全然見つからないですねー」


「ミカさんはどんな虫の魔物を探しているんだ?」


「えっと、一言で言えば蜂の魔物なんですよ」


「蜂か。確かにここまで来るまで一匹も見なかったな」


「はいー」


「まぁまだ時間はあるし、今日見つからなくても、また明日でも手伝うから」


「本当ですか!?ありがとうございます!」


そう言いながら、ニッコニコでハンバーグを頬張っているミカさん。俺はそんなミカさんを見て、ここしかないと思った。


「ミカさん」


「はい、なんでしょう?」


「その⋯いつもありがとうな?」


「は?えっ!?きき、急にどうしたんですか!?」


「ほら、俺が忘却叡智の墓所でずっと周回してただろ?中々出なくて、大変というかなー。そんな時、ミカさんはよく俺に話しかけてくれただろ?もしミカさんやメティスがいなかったら俺は周回をやめてたかもしれないなって思ってさ。だから二人がいてくれて本当に良かったっていうか」


いきなり感謝したから最初は慌ててたミカさんも、俺が感謝をしている理由を話すと、こちらに顔を向け、真剣に話を聞いてくれる。


「もちろん周回は嫌いじゃないが、こう何日も出ないと精神的にくるものがあるっていうかな。けどミカさんやメティスがいてくれるだけで俺の精神は守られているっていうか、助かってるっていうか。だからこそのいつもありがとうだな」


レアなアイテムを集める過程として周回は嫌いじゃないだけだ。俺が好きなのはレアなアイテムを手に入れ、それが俺のコレクションにある時だ。好きだから集めるし、優越感ってのもあるし、自慢したいってのもある。


だけど、そのレアが中々手にはいらないと心も疲れてくるもんだ。あと萎える。特に誰にも話を聞いてもらえず、一人で集めていたら尚更だ。もちろん、周回ではなくお金でレアを集めることも出来るが、それだとお金がいくらあっても足りないと分かっているから周回するのだが。まぁ、だからこそミカさんとメティスの存在はかなりデカい。


流石に中々出ないからというだけで、心が壊れるところまではいかないが、当分はやりたくないだろう。だが二人がいるおかげで、話をしながら周回する事ができる。


この話しながら周回するって事は、周回する人達からすれば凄く有難い事だ。いつ終わるかも分からないレア掘り、それを孤独感と闘いながら周回するのは地味に辛いからな。だが話す人さえいれば、その孤独感を忘れ去る事ができる。配信して誰かと話しながら周回する人もいるくらいだ。何気ない話をしてる時にポロっと出たりするもんだしな。


「ルヴァンシュさん、私こそいつもありがとうございます」


「えっ!?なんでミカさんがお礼言うんだ?」


「私、ルヴァンシュさんがいるから本当の私でいられるんですよ?」


「⋯本当の私?」


「はい、現実では本当の私ではいられないんです。私が周りの友達に虫が好きと言うと、距離を取られると思うのです。実際過去にそういう事が起きましたから」


そうだったのか。確かにミカさん、凄い虫の話をしたがるなぁと思っていたが、それはリアルで虫好きと公言出来ず、抑圧されていたからの反動なのか。


「だからこのAWFなら本当の私に戻れると思ったのです。でもAWF内の人達も、現実の人達とそこまで変わらないと理解したのです」


「そう⋯なのか⋯⋯」


「そんなある日、ルヴァンシュさんと出会いました。そしてあの日、私を守ってくれましたよね?」


「あの三人組の?」


「それです!」


あったな。チンピラ三人組に絡まれて、挙句の果てにはミカさんの好きな虫を馬鹿にしたやつね。そんな事を考えていると、ミカさんの言葉はまだ続く


「あの後、部屋でルヴァンシュさんは、これからもミカさんの好きな虫について、いろいろ教えてくれ。と言ってました」


「そ、そんなこと言ったかな?」


いやまぁ覚えてますよ?正直恥ずかしいから、あの日の事は思い出さないようにしてたんだが、まさかミカさんから話題を出してくるなんて。


「言いました!その言葉で私は救われたんですから。そして理解したんです。私はルヴァンシュさんの前では本当の私になれるって事を」


「そんな、大袈裟じゃないのか?」


俺がそう言うと、ミカさんはグイッと俺の顔の近くまで、その可愛らしい顔を近付ける。


「そんな事ありません!今まで本当の私を見てくれる人なんていませんでした。ましてや、本当の私を理解してくれる人もです。だから――!」


「ちょっ、ちょっとミカさん!近いですって!」


「えっ?あっ⋯⋯」


そう言いながらすぐに離れるミカさん。顔を両手で覆い、下を向いている。言葉を遮って悪いけど、ミカさん普通に綺麗で可愛いから、あの距離は心臓には悪い。


「す、すいません⋯」


「いや大丈夫だよ。その⋯綺麗で⋯⋯眼福でした⋯」


「何ですか?」


「いや何でもない!」


何を言ってるんだ俺は!良かった、聞こえていないのか!流石にこんなおっさんに綺麗で眼福とか言われても嬉しくないだろう。


「そうですか?それはそうと、つまりですね、私もルヴァンシュさんに感謝しているんです。ようやく自分の居場所が見つかったっていうか」


「そっか。じゃあ俺もミカさんに感謝しているからWin-Winって事だな」


「そうなりますね!でもルヴァンシュさん、いつも私の大好きな虫の話ばかり聞いて飽きませんか?気を使って聞いていたりしていませんか?」


「していないよ。むしろミカさんが楽しそうに虫の話をするからこっちも楽しいんだ。虫だけにむしろもっと話してほしい。なんちゃって」


「何ですかそれ」


「俺の激ウマギャグだが?」


「自分で激ウマって言うんですか?」


そう言いながらミカさんは俺の顔を見てくる。そして3秒ぐらい沈黙が続き


「ぷっ⋯あはは!」


「クッ⋯ククク」


「虫だけにむしろって⋯あはは!凄く寒いですよ!」


「こりゃ大変だ!虫は体温調節が出来ないから寒いのは苦手だからな!」


「今頃虫さんは落ち葉の下とかに隠れてますよ?冬越しならぬギャグ越し?」


ミカさんがそう言うとシルクちゃんが近くの森の葉を集めて、その葉の下に隠れだした


「俺の激ウマギャグは冬越しレベルかよ⋯」


「見てくださいルヴァンシュさん!シルクちゃん可愛いですねぇ!」


いや確かに可愛いが、そこまでやられると俺傷付いちゃうよ?シルクちゃん。まぁでも――


「――可愛い虫の話もそうだし、虫の話じゃなくてもいいから、これからももっとお話しよう。ミカさん」


「⋯!はいっ!でも、私だけ話すのは不公平なので、ルヴァンシュさんの話も聞かせてくださいね!」


「あぁ、もちろんだ」


「ふふっ!」


屈託がなく笑うミカさんの顔は、まるであの時と同じ、花が咲いた様な綺麗な笑顔だった。


「そこのお熱いお二人さん?もういいかい?」


「「!?」」


俺とミカさんは驚いてビクッと肩が上がり、声のする方に、二人同時に顔を向ける。するとそこには、いつからそこに居たであろう長身の男が立っていた。


髪は黄緑色で長髪、優しそうな顔でニコニコしている。そして何より目を引くのが、頭に生えてる角にドラゴンの様な尻尾。間違いなく竜の国の人じゃね?


「やあ、こんにちは」 



お互いが少しずつ距離が近付いていくこの感じ良いよね。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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