初めてのユニーク素材が嬉しくない
さっきの火魔法だよな?なんかミカさん達辺りの雑魚が一気に消し飛んだのだが、何だったんだ?いやそれよりも
いたいた、あれが異様な魔力を放つ魔物か。確かに他の雑魚よりかは存在感があるな。一応鑑定はしておくか。
・不死の召喚者
生前、高位の召喚術士だった者が死後、怨念でリッチに成り果てた姿。リッチになる事で生前よりも魔力が多く、強い魔物を召喚できる様になっている。※とある者の影響で一部力を封印されている
召喚士のリッチって事か。ってか最後のとある者の影響ってなんだ?よく分からんが、あとでメティス達にも教えてやるか。
さて、こいつがどれぐらい強いか知らんが、最初から全力でいくぞ!
「《スラッシュ》!」
――グオォォォー!
「……えっ?一撃?」
すげぇ強そうな見た目とオーラしてたのに、すげぇ弱いのだが。ってか下手したらそこら辺に湧いてくる雑魚よりも弱いだろ。
「ルヴァンシュさーん!」
「ミカさん無事だったか。ってかさっき凄い魔法使ってなかったか?」
「あーそれはメティスちゃんですね!後でメティスちゃんに聞くといいですよ!それよりも、周りの敵が全て消えたのですが何かあったのですか?」
「え?」
俺はミカさんに言われて気付いた。周りの雑魚がリポップしなくなっている。恐らくこれはサモナーリッチを倒した影響だと思うのだが。
「あの異様な魔力を放つ魔物を倒したのね?」
「メティスも無事だったか。そうだ、名前はサモナーリッチ。恐らく周りの雑魚がリポップしないのはこいつを倒したからだと思うのだが」
「なるほど、召喚士って事なのね。恐らくこのダンジョンの魔物は全てこのサモナーリッチが召喚してるのよ。ただ、サモナーリッチってもっと強い魔物を召喚出来るはずなのよ…」
「リッチさんは凄い数の魔物を召喚出来るのですね!私もいつかリッチさんみたいに大量に眷属を召喚したいですね!」
いやそうなったらもはや災害レベルじゃないか?今のシルクちゃんでも時間かければ出来そうだから冗談とは思えない…。
「そういえばサモナーリッチを鑑定したら、とある者の影響で一部力を封印されていると書かれていたな」
「そういう事なのね。それ、十中八九運営なのよ。召喚士ってのは強い魔物も召喚出来るけど、強い魔物を召喚するには大量の魔力が必要で、召喚すると長いクールタイムが必要なのよ」
「では、弱い魔物だと少ない魔力でクールタイムも短いからあれだけの大量の魔物を召喚出来たって事ですかね?」
「そういう事なのよ蟻ちゃん!本来であれば、術者本人がピンチなら強い魔物を召喚するはずなのだけど、それをしなかったってことは、強い魔物を召喚する事を封印されてるって事だと思うのよ」
「なるほどな。まぁ強い魔物を召喚されない方が、今の俺達には有難いな。っていうかこのダンジョンは実質、サモナーリッチ一体しかいないって事になるのか」
そう考えれば恐ろしい話だ。たった一体の魔物でここまで苦戦させられるのか。しかもこれで一部力を封印されているのだから、封印されていなかったらどれだけ強いのか。
「とりあえずさっきの豪華な扉に戻ってみるのよ。サモナーリッチとやらが、またリポップすれば面倒なのよ」
「確かにな」
ってな事でさっきの豪華な扉まで戻る事にする。その道中で
「あっそうだ、あの時何で魔法が飛んでくるって分かったんだ?あと、異様な魔力とか」
「……本当に言ってるの?」
「本当だから聞いてるんだよ」
「…はぁー、魔力察知なのよ。逆に今までどうやって、敵の魔法とかやり過ごしていたのよ」
「いや、普通に目で見て。序盤の敵の魔法とか、魔法防御上げてるしそこまで気にならなかったな」
確かにロックタートルと初めて戦闘したとき、魔力察知で魔法が来ることを察知出来てた。しかし、今回は大量の敵で目の前の敵にしか集中がいかなかった。
一対一の戦いなら魔力察知にも反応できるが、敵が多いと魔力察知を気にする余裕がなかったな。とはいえ、魔力察知自体はパッシブで、結構レベルが高いんだよ。
つまり発動自体はしてるが、魔力察知をあまり活かしきれていないというか、完全に気配察知の方ばかり意識していた。魔力察知の方もこれからは気にしないとな。
あとは、レイスを倒した火魔法が何だったのかを聞いた。魔紙というアイテムらしい。
種族的には森人族とか妖精族、魔族だと妖狐族に植物人族、樹妖精族とかが魔紙を作っているのだとか。まぁ魔紙を作るには魔紙生成スキルを取らないと作れないとかなんとか。
「蟻ちゃんも気配察知とか魔力察知とかは取っておいた方がいいのよ」
「わ、分かりました!」
ミカさんは従魔のシルクちゃんや、眷属蜘蛛が周りとか警戒してくれるから、今まで取らなかったのだろう。俺もあるに越したことはないと思うから、取ることには賛成だな。
俺達は一つ前の部屋にあった豪華な大扉の前まで戻ってくる。するとその大扉は
「開いているな」
「開いてますね」
「つまりこのダンジョンはサモナーリッチとかいう門番を倒して大扉を開け、先に進むというダンジョンなのよ」
「寄り道確定のダンジョンか。ボス前まで行くには時間が掛かりそうだな」
そう愚痴を溢しながらこのダンジョンを攻略していく。
………
……
…
忘却叡智の墓所5階層。2時間かけてようやくここまで降りてきた。メティスの言った通り、サモナーリッチを倒さないと地下への扉は開かないギミックだ。敵の魔物も一応鑑定してみた。
・腐人
死んだ人間が死後、魔物になった姿。怨みなどの負の感情が魔石となり動いてる。音に敏感で噛みついて攻撃してくる。
・骨人
白骨化した骨に死霊が乗り移った魔物。知能は多少あるようで、武器を持って襲ってくる。
・骨人魔術師
白骨化した骨に死霊が乗り移った魔物。骨人より知能が高く、魔法を使って攻撃してくる。
・死霊
人間の魂が怨みや憎しみ等の怨念により魔物化した姿。物理による攻撃は無効で、魔法でしか倒せない。特定のアイテムを使えば物理でも倒せる。
主に出てくる魔物はこの4体だけだな。もっと種類が多いと思ったが、そもそもこのダンジョンは初心者〜中級者の中間あたりのレベルらしいとか。そこまで種類もいないし、強い魔物も存在しない。
……と思っていたのだが
「5階層からは上位種が混じって出てくるのか!」
骸骨戦士に、骸骨高位魔術師、あとは上位種ではないが腐豚頭。
幸い上位種の数は多くないし、大した強さではない。ただ一番危険なのはスケルトンハイメイジだな。遠くから中級火魔法を放ってくる。魔法防御を上げてるとはいえ、さすがの中級魔法だ。ちょっと痛い。恐らく火炎槍かな?全く、火魔法が弱点の奴が何で火魔法覚えているんだよ!と心のなかでツッコんだ。
ちなみに全ての魔物に上位種がいるわけではない。ゾンビ種には上位種がいないように、魔物には進化しない魔物もいる。とはいえ、ゾンビはその分種類は豊富だ。
ゴブリンゾンビにオークゾンビ、オーガゾンビとかだな。あとは有名なところだとドラゴンゾンビなんてのもいるな。
まぁだが、今はそんな事どうでもいい。厄介なのはスケルトンハイメイジなのだが、それも厄介というだけあって何とかなる。問題はこのAWFの再現度が高いという事だ。どういう事かというと…
「くっ…!なんて悪臭なんだ!ここまで再現しなくていいだろ普通!」
「失念していたのよ…!味覚や嗅覚を再現出来るなら、異臭の臭いも再現出来るって事なのよ!」
「生ゴミとか乳製品が腐った臭いがして気持ち悪いです…」
ゾンビの時も確かに臭いはあったが、そこまで気にならなかった。だがオークゾンビに関しては異常だ!
「今から臭い対策をしに戻るか!?」
「それなら大丈夫です!私に任せてください!少しだけ時間を稼いで欲しいです!」
「この臭いをどうにか出来るなら幾らでも稼いでやる!」
「私も魔紙とかを使って応戦するのよ!蟻ちゃん、なるべく早く頼むのよ!」
「はい!」
何をするか分からないが、今はミカさんを信じよう!オークゾンビに近付きたくはないが――
「スラッくさっ!?」
「何やってるのよ!眷属ちゃん硬糸なのよ!」
眷属蜘蛛の上に乗り、眷属蜘蛛をポンポンと叩いて命令している。眷属蜘蛛も命令されたからなのか硬糸でオークゾンビを斬り刻む。
「いや近付いたら、マジで洒落にならんぐらい臭いぞ」
「こんなの吐く人とか出てくると思うのよ…」
「そうなったら強制ログアウトだろうな…」
「オークゾンビは私に任せるのよ!」
そう言いながら、魔紙を広げて――
「火の精霊よ、その火は槍となりて貫かん!火炎槍」
おぉ!こっちも火炎槍で応戦か!ならオークゾンビは任せるか。
「メティス頼んだ!」
そんなやり取りをしながら時間を稼ぐこと5分。
「ルヴァンシュさん!メティスちゃん出来ましたよ!」
「おっ、ようやくか!」
俺とメティスはすぐさまミカさんの元まで駆け戻る。
「これをどうぞ!」
「これはマスクか!」
これをどうやって作ったんだ?しかもやたら布生地が滑らかなのだが
「もしかしてシルクちゃんの糸なのね?」
「メティスちゃん正解です!シルクちゃんの【布生成】というスキルで作った布を、私の【裁縫】スキルでマスクにしました!」
なるほど、ミカさんは裁縫スキルを持っているのか。シルクちゃんが布を作れるのなら、裁縫は確かに有用だな。というかシルクちゃん、生産も出来るのか。
「それはありがたいな!」
と何気なく鑑定して見ると
・蜘蛛絹のマスク ユニーク
貴重な蜘蛛絹で作られたマスク。吸湿性・放湿性・保湿性に優れ、防水性にも優れている。また蜘蛛絹は防具としての素材にも優秀で、下手な革素材よりもかなりの強度がある。肌触りも良く、高貴な者達にも人気で、非常に価値のある素材だが、中々市場には出回らない希少価値の高い素材である。
「ん゛っ!?」
「どうしたんですか?」
「君、これは私達だけの秘密にするのよ」
「そ、そうだな…」
これがもし他の人達に知られれば、大変な事になるのは目に見えて分かる。まず蜘蛛絹を求めて追いかけ回されるだろうな。まともにプレイできなくなるぞ。
追いかけ回されなくても連日連夜、知らない人からの蜘蛛絹を譲ってくれだののチャットが大量に送られてくるだろうな…。
しかもだ、これはプレイヤーに限っての話ではない。NPCにも人気があるって事は、NPCからも迫られるという事だ。
当たり前だがミカさんはそんな貴重な素材だとは微塵も思ってないだろう。ほら、今でも――
「この蜘蛛絹は凄いんですよ!肌触りが良くて防水性もあるんですよ!」
「う、うむ…。わかったのよ…」
と、希少価値出はなく、性能を評価しているからな。ミカさん、これユニーク素材だよ?俺ですらまだレアしか持ってないのに。しかもレアといっても装備だし。
これが俺の初めてのユニーク素材…。すっごく嬉しくない。ま、まぁこの臭いを対処するためだし、仕方ないか。ってかこの蜘蛛絹の布一枚で下手したら100万シルぐらいするんじゃないのか?
ん…?これを大量に量産して金策できるかも!って考えはありえないな。流石におんぶに抱っこすぎるし、自分の欲しい物があるなら、自分で稼ぐのは当然だな。
街でこのマスクを着用するのも危険だな。プレイヤーは何とかなるかもしれないが、目ざとい商人や貴族は見抜いてきそうだし、さり気なくそこら辺を注意しておくか。
サモナーリッチの本来の強さは、5次職レベルが適正なので、正直場違いな強さです。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




