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二十九話 馬車と二人の旅人


「待たせたのよ!」


「気にするな。俺もさっき来たばかりだ」


「私もです!」


俺が少し早めに集合場所に来て、その後にミカさんが来た。そして最後にメティスだ。


「一年もここにいると知り合いが多くて挨拶回りが大変だったのよ」


いや、俺達はどういう顔をしていいか分からないのだが。実際にリアルで一年だったとしても、この世界では3年だからな。メティスを知っている人達からするとさぞ悲しまれたのではないのかな?


「さて、これからアインスルトに行くのだけど、まず冒険者ギルドに行くのよ!」


「冒険者ギルド?なんか依頼でも受けるのか?」


「ばっかなのよ!もしかしてこれから徒歩でアインスルトに行くつもりなの?」


「違うのか?」


俺がそういうとはぁ~…とメティスは溜め息をつき、ミカさんを見る。


「私も徒歩かと…」


「この世界はめちゃくちゃ広いのよ?エンリットからアインスルトまで6時間以上掛かるのよ!この世界での6時間じゃないのよ?リアルで6時間なのよ!」


確かに首都ノルジストからエンリットまで歩いて2時間ぐらい掛かったな。ここからアインスルトまで6時間も掛かるのか。


「それは確かに嫌だな」


「なら冒険者ギルドに行って馬車を手配するのよ!」


「馬車があるのか!」


「私も初めて知りました!」


「まぁ君達は最近始めたばかりらしいから知らないのも無理はないのよ」


って事で早速、冒険者ギルドへ向かう。もちろんメティスは俺の肩に乗っている。


さてやってきました冒険者ギルド。何処に並べばいいのかな?と考えていると、メティスから一番左に並ぶようにと言われた。


冒険者ギルドの受付は基本的に四つあり、ギルドに入って来た俺達の視点から一番右は冒険者登録等、真ん中右は掲示板のギルド依頼の受注、真ん中左はギルドに依頼を発行、そして一番左は馬車の手配や、相談等の受付だと。俺の順番になったので早速馬車を手配しよう。


「冒険者ギルドへようこそ!どういったご要件でしょうか?」


「馬車を手配したくて」


「畏まりました。どこまでお乗りしますか?」


「魔族領のアインスルトまで頼む」


「畏まりました。では馬車の種類をご選びください」


馬車の種類ってなんだ?って事を言ったら説明された。馬車には普通の馬車と高級馬車があるのだとか。普通の馬車には敵が寄ってきて、その都度護衛をしないといけないのだとか。


高級馬車は特殊な結界を張ってるみたいで、敵が馬車に寄ってこないのだとか。俺の魔物誘引の効果もその結界内だと効果を発揮しなくなるので、魔物を倒さなくても良いみたいだ。なにその凄い機能。


俺の魔物誘引は普通の馬車だと魔物を呼びすぎてまともに進まないだろうって事で高級を選んだのだが


「ぐぬぬ…!一人20万シル!」


「私が立て替えてあげるのよ」


って事で立て替えて貰う。メティスから少し多めに借りておくべきだったか?なんにせよ早くワールドマーケットの素材が売れることを願う。あとは名前を署名して


「では、エンリット入り口に高級馬車が来ますのでそこでお待ち下さい」


俺達は冒険者ギルドを出て、エンリットの入り口に向かう。今は15時ぐらいで、13時ぐらいからログインしたからまだ4時間ぐらいある。今日が土曜でホント良かった。皆で移動出来るのは有り難いな。


しかし今ってリアルで15時ぐらいなのだが、この世界ではガッツリ夜だ。


「夜にも馬車って動いてるんだな」


「当然なのよ。冒険者ギルドもそうだけど、朝になるまで閉まってたらそれこそクレームものよ」


「た、確かにそうですね。でもNPCさんはどうしているのでしょうか?」


「それは朝と夜に仕事をする人が別れているのよ。もちろん普通のお店は夜も閉まっていたりするのだけど、冒険者ギルドとか商業ギルドとか、そういう主要な建物は基本的に夜も開いているのよ」


普通の店っていうのは食事処とか服屋とか花屋みたいなところだ。食事は冒険者ギルドの二階でも出来るからな。


「なるほどなぁ」


街は静かだが、わりと人が歩いている。この人達はたぶんプレイヤーなのだろう。ほとんどのNPCは寝ているだろうな。


街の入り口付近に着いたが、まだ馬車は来ていない。メティスとミカさんと他愛もない話をしていると街の中から馬車がやってきた。あっ、てっきり外から来ると思ってたわ。


高級馬車を引いてる馬が二匹いるから二頭立ての馬車だ。その二匹の馬はどちらも白く美しい馬だ。その馬車の御者が降りてきて


「高級馬車の御者をしている者です。ルヴァンシュ様御一行でしょうか?」


「そうです」


「出発ですが、もう少しお待ち下さい。もう二人、この高級馬車に乗られる方がいらっしゃいます」


するとこちらに走ってくる二人の女性が現れる。一人は女聖騎士?みたいな純白の鎧を着た女性、もう一人はこちらも純白の司祭の服を着た女性。


「すまない、待たせてしまったようだな」


「本当に申し訳ありません…」


「いや、俺達もさっき来たばかりだから気にしないでくれ」


「そう言ってくれると助かる」


御者はその二人の女性の名前を聞いて


「では、皆様揃いましたので、どうぞ馬車の中へ」


馬車はキャリッジみたいなのではなく、キャラバンみたいな馬車だ。貴族が使う馬車ではなく、行商人がよく使う馬車といえば分かるかな?帆で覆われている馬車だ。なので乗る時も馬車の後ろから乗る形だ。


先に聖騎士と司祭の女性が乗り込み、俺達も乗る。おぉ!中は光の魔法なのか、普通に明るいな!もちろん俺は最後だ。女性の中に一人男だからな。俺達が乗り込むとゆっくり馬車が動き出す。


馬車の中は人が詰めれば八人ぐらいは座れるか?それぐらいの広さなので、わりと広々と使える。俺は後ろの方に座る。ちなみに帆を少し畳んでいるので、どの場所からも景色が見えるようになっている。


少し馬車が進むと、大きな森の中を突入する。当たり前だが魔物は寄ってこない。というか、結界内だと夜でも明るく見えるから、わりと外の景色も楽しめたりする。


メティスなんか電車で椅子の上に膝立ちしてはしゃぐ子供の様に景色を楽しんでいる。まぁほとんど木々が生い茂っているだけなんだが。すると女聖騎士が


「先ほどは待たせてしまいすまなかった」


「さっきも言ったが、俺達も来たばっかりだ。ほんと気にしないでくれ」


「そうか。ここで会ったのも何かの縁だ、自己紹介をしておこう。私はジャスト・ティス。気軽にティスと呼んでくれ」


「私は司祭(プリースト)のミルラです」


ジャストティス…ジャストティス……ジャスティス、正義かな?


「俺はルヴァンシュだ」


「私はフォルミカです」


「私はメティスなのよ!」


メティスの名前を聞いた時、二人の目は大きく見開かれる。


「メティスはあの錬金術のメティス殿か!?」


「そうなのよ!」


「凄いです!あの有名なメティスさんに会えるなんて感激です!」


「ふふーん!」


と、小さな胸を張り大変満足そうな幼女メティス。凄く機嫌が良さそうだ。メティスの話で盛り上がって話す女性四人組。正直俺は話の中に混ざりにくい。少し話が落ち着いてミカさんが質問する。


「ティスさん達は何処まで行くのでしょうか?」


「私達は魔族領の首都までだ。普段は神聖皇国ユースティアで活動しているのだが、とある依頼で魔族領の首都まで行かなければならなくなったのだ。ミルラは私の付き添いだ」


「その依頼ってなんなのよ?」


「すまないメティス殿、依頼内容は言えないのだ」


って事は何か特殊なクエストでも受けているのかな?まぁ無理に聞き出すのはマナー違反だからそれ以上はメティスも追及しない。


「メティス殿達は何処まで行かれるのだ?」


「私達は魔族領のアインスルトよ」


「そうなのか」


と、また話で盛り上がる。俺はいいんだ。ここで話に入ってはいかない。子供達がを見守る親の目線でいよう。


馬車は森を抜け、街道を進む。女性達は話で盛り上がり、俺は外の景色を楽しんでいると急に馬車が止まる。


「お客様、もうすぐでヒューラルに到着します。ヒューラルでは五分間だけ停車します」


「ヒューラル?」


俺の疑問の言葉に女聖騎士が答えてくれる


「ヒューラルとはハイルジスト王国の第四の街ヒューラルの事だ。ここは海の幸が食べられるみたいで有名だよ」


「そうなのか。何故海の幸が食べられるんだ?近くに海もないが」


「エンリットとヒューラルの中間辺りから南に行くと海があるんだ。海の近くにはメルト村というのがあってね、そこから取れる海の幸を行商人が買い取り、ヒューラルに卸しているのさ。エンリットは大きな森があるから危険、だから比較的安全なヒューラルに海の幸が集まっているのさ」


「なるほどなぁ」


「ポータルストーンの登録に行かないのかい?馬車の停車はその為の停車だよ」


ティスとミルラが降りたので、俺達もそれに続く。海の幸とか食べてみたいけど、ポータルストーンを登録すれば何時でも来れるからな。俺達は登録だけしてすぐに馬車に戻る。


そしてまた動き出す。そうだ、葉魔木でも吸うか。俺は葉魔木の箱から一本取り出すと、それだけで火が勝手に着く。俺は兜のバイザーをあけ、葉魔木を咥えて吸う。良かった、霊体でも問題なく使えたわ。


俺は馬車の後ろの方に座っているから煙も女性達にはいかないだろ。煙を出す時は出来るだけ馬車の外に吐く。


んー!?試しに吸ったけど美味しいな!甘いんだけど!誰でも吸えるように甘くしてるのかな?煙もなんかフルーティーな匂いだし。そんな感じで吸っていると


「君!何を吸っているのよ!」


「ん?あぁ、すまない。葉魔木って物を吸っていた。そっちにも煙がいってたか?すまない」


「そうじゃないのよ!ずるいじゃないのよ!私にも一本吸わせなさいよ!」


「いや、駄目だろ。」


「何が駄目なのよ!私は大人なのよ!まったく問題ないのよ!」


とメティスが言ってくる。確かにそう考えると駄目では無いか。それに葉魔木は誰でも使用して良い物だし、何か危険な成分が入っているわけではない。ならいいか。って事で箱を開けると、メティスが葉魔木を一本取る。これは別に譲渡しなくても、そのまま渡せれるのか。


「んぅー……ぷはーっ!美味いのよ!」


それはいいんだが、凄くヤバイ絵面になっている。葉魔木を片手で持ち、吸っている姿はとても危険な行為をしている様に見える。ただなんか様になっている。一応ミカさんやティスさん、ミルラさんにも欲しいか聞いてみたが、苦笑いされて断られた。ミカさんが


「ルヴァンシュさんは…その…リアルでも煙草を吸うのですか?」


「いやリアルでは吸わないよ。昔、初めて吸った時に苦いし、後味も残るしで嫌いになったんだよ。だから吸ってないよ」


その言葉を聞いて、何故かホッとするミカさん。ちなみにメティスは他の女性達に遠慮せずスパスパ吸って煙を吐いている。ただこの煙、最初だけ見えてすぐに消える仕様で、全く煙たくならない。フルーティーな香りだけ残る仕様だ。


馬車はフルーティーな匂いに包まれ、穏やかに進んでいく。

読んでいただきありがとうございますm(__)m

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― 新着の感想 ―
煙草は脳に影響があるだけで身体的には何歳でも吸っていいんだよね
嗜好品として考えれば正しいけど、一応バフのつくアイテムを使うのはどうなのだろうか? ※ラストエリクサー症候群なので理解できないですね。きっとゲームやめるまで一本も使わないだろうから...
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