十八話 虫好きのプレイヤー
第二の街エンリットに戻って来ました。さて、鍛冶屋と武器屋を探しますか。ロックゴーレムの戦闘で鉄剣の耐久値は大分減ったからな。
俺は鍛冶屋を探してエンリットを散策する。しかし首都ノルジストも広かったが、この街も大分広いな。
首都ノルジストもそうだが、大体の街は居住区、商業区、工業区、貴族区に分けられている。
鍛冶屋は工業区にあるのでそっちに向かう。
工業区に来たのはいいが、正直どの鍛冶屋に入ればいいか分からないから適当に入るか。俺は工業区に入って一番近い鍛冶屋に入る。
「すいませーん」
すると奥から
「馬鹿弟子!客だ!」
「へいへーい」
そんな声と共に奥から、背が低いずんぐりむっくりな体型かと思えば、よく見ると筋骨隆々な髭を生やした男が出てきた。これドワーフってやつかな?
「いらっしゃい。俺はダルトン、プレイヤーだ。君はプレイヤーかな?」
「あぁそうだ。俺は――」
「おっと、名前はいい。どうせ覚えてもすぐ忘れる」
「そうか」
なんか素っ気ない感じだな。そういうキャラ作り、ロールプレイをしてるのか、本当にこういう性格なのか分からんな。
「で、要件は?」
「鉄剣を研いでほしくて。あと鎚武器が欲しくて、何かオススメありませんか?」
周りを見てみると武器が壁に立て掛けられたり、飾られたりするんだよ。たぶん武器屋でもあるんじゃないかなって。
「オススメか。この街にいるってことはまだ初心者だろ?」
「まぁそうですね」
「だったら鋼戦鎚とかはどうだ?そこまで高くないし、生産で作るなら素材も簡単だ。素材持ち込みなら少し安く出来るしな」
鋼ってことは素材は鉄鉱石か?俺もそこまで詳しくないが、鋼って鉄鉱石と炭素の合金だよな。刀とかに使うから武器好きの俺としてはそこんとこ把握してる。まぁ正確には刀の素材は玉鋼で、鋼を高純度にしたものだ。
「素材は鉄鉱石ですか?」
「へぇー、よく知ってるな。だけどこの世界での鋼ってのは鋼鉱石の事なんだ」
「鋼に鉱石なんてあるんですか?鉄鉱石じゃなくて?」
「そう。鍛冶って難しそうだろ?鋼は鉄に0.04〜2%の炭素を含む合金なんて言われても初心者からしたら意味分からんだろ?」
確かに。俺も鉄と炭素の合金とは分かっているが、炭素が何%とか全く分からんからな。
「はい」
「って事で、初心者でも気軽に挑戦出来る仕組みにする為に合金じゃなくて鋼鉱石ってアイテムを作っちまおうって事になったんだってよ」
「確かにそれなら合金を作るとかじゃなくて、鋼鉱石から製錬と精錬をするだけでインゴットが作れますね」
「そうゆうことだ」
合金を作る作業を省くことで初心者でも簡単に理解する事が出来るんじゃないかな?他の合金も鉱石になってたりするのかね?ちなみに初めたい人は、鍛冶をする親方に弟子にしてやり方を教えてもらうのが一番理解しやすいとの事だ。っと、それよりも
「あぁ、すいません。ちょっと気になって無駄話を」
「いやいいんだ。俺も鋼鉱石があるって知った時は驚いたからな」
「では鋼戦鎚を2つ、あとは鋼剣ってありますか?」
「鋼のインゴットで出来た剣だな。あるぞ」
「それも2つください」
そろそろ鉄剣から卒業したいからな。お金もあるしいいだろ。
「じゃ、鋼戦鎚2つと鋼剣2つで26万シルだが、少しまけて25万シルでどうだ?」
鋼戦鎚が8万シル、鋼が5万シルだ。それと、素材持ち込みなら鋼インゴット5個で鋼戦鎚が作れるとの事。費用は2万シル。
ワールドマーケットで鋼のインゴットは1個1万シルだから店売りよりかは少し安くなっている。まぁ今の俺はちょっぴりお金持ちだから少しぐらい散財しても問題ない。
「いいんですか?親方に内緒でまけるなんて」
「いいんだよ。それより鋼剣を買うなら鉄剣研ぐのはいらないんじゃないのか?」
「まぁ記念に取っておきますよ」
そう、俺のコレクションとして。別にレアじゃないけど、俺が初めて手にした相棒って事でな。まぁ鉄剣の予備があと2つあるんだが、それは売る。
って事で購入したので、また風の草原のダンジョンのボス前まで戻ってきました!やはりポータルストーンを登録した事でパッと移動できるねぇ。それよりこれから使う武器を鑑定
・鋼剣 ATK:20
鋼インゴットで作られた剣。少し重いが扱いやすい。
・鋼戦鎚 ATK:30
鋼インゴットで作られた戦鎚。他の武器より扱いは難しいが、一発の破壊力はピカイチ。
なかなかの攻撃力ではないか?だが鋼戦鎚を使うには足りない物がある。そう!スキルだ!
「確か武器の〇術系を取るには装備して素振り100回だったか?」
って事で装備してボス部屋前で素振り開始!
………
……
…
はい終わりました。いややっててなんかシュールだなと思ったね。不幸中の幸いは、この広間に俺だけって事だね。
って事でスキル取得しようか。まだ3レベルしか上がってないからSPは15。鎚術ぐらいなら余裕で取得出来る。鎚術の他に良さそうなスキルがあったのでそれも取っておく。
【鎚術】 SP1
【夜目】 SP2
【地図】 SP2
鎚術はまぁ剣術と一緒で、鎚を使う時にすこし補正が入る。夜目は暗いところでも明るく見えるスキル。マッピングは一度行った場所は地図に記録され消えないとか。これはダンジョン外でも使えるみたいだ。
全部ダンジョンの為に取ったが、なかなか便利なのではないか?さて、スキルも取ったしロックゴーレム再戦と――
「ん…?」
俺の気配察知に反応が。誰かがボス部屋まで来たのか。まぁ同じプレイヤーかも知れないし挨拶でもしとくか。俺は3階層から4階層に降りてくる階段に目を向ける。
するとカサカサカサという音が聞こえてくる。えっ何この音。なんか凄く鳥肌が立つ音が聞こえるのだが…
ここは所謂セーフティルーム。魔物は一切入ってくる事が出来ない場所だが、俺は警戒をする。すると――
「――ギチギチ」
「ッ!?」
おいおいちょっと待て!ここセーフティルームだぞ!?何で階段から巨大な蜘蛛が降りてくるんだよ!バグか!?通路や階段が広いから余計大きさが分かる。象ぐらいあるぞこの蜘蛛!
いやそんな事より戦闘態勢だ!呑気に運営に連絡している暇が無い。連絡する前にやられる!倒してから連絡だ!俺はさっきスキルを取得し、人並みに使える様になった鋼戦鎚を構える。
「おいおい、ここは虫系の魔物出てこないんじゃ無いのか?まぁいい。悪いがこの武器の試し切りをさせてもらうぞ。いや――」
俺は走り出し思いっきり振り被り
「試し殴りか!」
「やめてくださぁーい!!」
「いっ!?」
俺は思いっきり殴りつけようとして、何処からか女性の声が聞こえて俺は咄嗟に振り下ろすのをやめる。が、勢いは殺せないのでそのままバランスを崩し、勢いよく前のめりに転ける。
ガリガリガリ――
顔面おろし器の如く地面に滑らす。まじフルフェイスの鎧で助かったわ。
「ほんっとうにすいません!大丈夫ですか?」
鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえてくる。俺は顔を上げて
「上手く削れました?」
「はい?」
「あっいや、すいません。大丈夫です」
俺はゆっくり立ち上がる。あれ?さっきの巨大蜘蛛は?何処行った?階段に引き返した?俺に恐れて?いやそれこそまさかだろ。
まぁ今は目の前の女性だ。長いロングストレートの空色の髪に、吸い込まれそうになる紺碧の色をしたぱっちりの瞳。身長は160cmぐらいとやや小柄。そして頭には申し訳程度に生えた可愛らしい角が二本。まさに美少女という言葉に相応しい可愛さである。鎧は動きやすい革鎧だ。というかどういう種族なのだろう?
「驚かしてすいません…」
「あぁ、いやいいんだ。いきなりあの蜘蛛が……ん?驚かして?まさかあの蜘蛛――」
「はい!私の従魔シルクちゃんです!」
そう天使の様な微笑みをしたかと思うと、背中から右肩にヒョコっと小さく顔を出した小さい蜘蛛。
「さっきと大きさが全然違うくない?」
「そうなんですよ!この子サイズ変更が出来るみたいなんです!さっきの大きさがこの子の本当の大きさなんですよ!」
えぇ?デカくない?こっちが本当の大きさって言われれば信じるけど、あっちが本当なのか。
しかし、恥ずかしがり屋なのか背中に隠れてまた右肩から頭を出してを繰り返して俺の様子をうかがっている。なんか――
「可愛いな」
「っ!ですよね!?可愛いですよね!虫好きなんですか!?」
ぐいっと近付いて俺の兜の中を覗くかの様に見てくる。
「ま、まぁ嫌いじゃないですよ?Gは嫌いですが、蟻や蜂、蜘蛛とかは嫌いじゃないですかね」
蟻とか蜂って見てて面白いんだよ。蟻や蜂ならではの社会を築いて、見ていて飽きない。俺も動画サイトでよく飼育動画を視聴したもんだ。
蜘蛛に関してはやはり見る分には可愛いとおもう。とくにハエトリグモとかめっちゃ可愛いんだよ。
「そうなんですか!?わ、私もGはあまり好きじゃないのですが、蟻や蜂も大好きです!もちろん蜘蛛もです!」
「虫好きなんですね」
「はい!ただ蜘蛛は虫ではなくてですね、ダニや蠍の様な節足動物なのですよ!」
「えっ!?そうなのか!」
初めて知ったよ!なんでも昆虫の定義は足が六本、体の構造は頭、胸、腹の3つに分かれ、触角があることだ。
確かに言われてみれば蜘蛛って触角無いな。蜘蛛って漢字に虫が入ってるから勘違いしてたな。
「でも知らない人が多いみたいです。私も蜘蛛が虫じゃないと知った時は驚きましたから!ただ虫の定義は人類・獣類・鳥類・魚貝類以外の小動物の総称なので、虫でも良いと思いますよ!」
そうなのか。大きく分けると虫でいいのだが、細かく分けると虫ではなくなるのか。ややここしい話だ。
「知らなかったよ、本当に虫が好きなんだな。そういえばなんて呼べばいいですか?」
「はい!あっすいません!自己紹介が遅れました。私の名はフォルミカ。呼び辛いのでミカって読んでください!」
「よろしくミカさん。俺はルヴァンシュだ」
「よろしくお願いします!」
なんか凄くいい子そうだな。それはそうと
「あのー、触ってもいいですか?」
「えっ!?い、いきなりですか…?えと…その…」
「あっすまない。蜘蛛の方だ」
「そそそ、そうですよね!私なんかよりも蜘蛛ですよね!大丈夫です!」
いやそれは変な誤解を生むからもうちょっと言い方をだな。これじゃあ俺がミカさんより蜘蛛の方が良いみたいなんだが。俺は当たり前だが、人の方が好きだぞ。
そんな事を心のなかで呟きながら俺の手をミカさんの右肩辺りに近づける。シルクちゃんは前脚、正確には第一脚の両方を上げて万歳のポーズ。これは威嚇のポーズ。可愛い。
少し威嚇して、何もしてこないと分かったのか、今度は第一脚で俺の手をちょんちょんと触っている。なんか安全確認してるみたいでこれまた可愛い。そしてようやく俺の手の上に乗ってくる。
「おぉー!」
「今の仕草見ました!?めっちゃ可愛かったですね!」
「確かに!これは可愛いわ!」
もうちょっと近くで見たいと顔というより、兜を近付けるとまた前脚を上げて威嚇。うーん可愛いが、あまり脅かすと嫌われそうだしそろそろミカさんにお返しする。
「ありがとう、堪能したよ」
「私もですぅ!」
顔がゆるっゆるになってるミカさんも可愛いなおい。まぁそれは口に出すと不味いので言わないが。
「それはそうと、ここのボスに挑みに来たのですか?」
「ルヴァンシュさん!敬語じゃなくてもいいですよ!」
「いやでも…」
「ルヴァンシュさんとはもう虫好きの仲間なので気にしませんよ!」
「んーじゃあ分かった。ミカさんもタメ口でいいぞ?」
「私は普段からこういう喋り方なので、このままで大丈夫です!」
まぁ無理にタメ口にしろっていうのもあれだし、ミカさんが喋りやすかったらそれでいいか
「それでですね、私がここに来たのは、このダンジョンの入り口が蟻の巣みたいな入り口だったので入りました」
「そ、そうなのか」
「はい!ですが、一向に虫さんが出てこなくて、結局ここまで来てしまいました」
ダンジョン攻略とかではなく、虫のためにここまで来たのか。すごい虫愛だな。
「ここまで来て言うのはあれだが、ここのボスは虫ではないぞ」
「えっ!?やっぱりですか…。まぁせっかくここまで来ましたし、シルクちゃんを強くする為に倒していきます」
「だったら俺と一緒に行くか?俺もちょうど今から挑戦するとこだったんだ」
「いいんですか!行きます!」
って事でミカさんとシルクちゃん?と一緒にボス攻略することになりました。どういう戦い方をするんだろうね?
ダルトン君はもう出てこないかもしれませんね。フォルミカは…
読んでいただきありがとうございますm(__)m




