二話 キャラクリエイト
全然使えなくて、でも害はないスキルを考えるのってめっちゃ難しいですね。
人生最大の買い物をしてから5日後、俺のベッドがあった場所にVRヘッドギア専用の筐体が置かれている。
ベッドは買取業者に来てもらって引き取ってもらった。ちなみに筐体は分解できるみたいで俺の部屋にも難なく入った。
筐体は長方形みたいな形だ。横幅はセミダブルぐらいか?まぁ圧迫感はない。
「さて、早速VRヘッドギアを筐体と繋げて初期登録を済ませますか」
俺はそう呟いて筐体に付いてるボタンを押す。すると宝箱が開く様にゆっくり長方形の筐体が開く。おぉ!すげぇ!なんかタイムカプセルみたいな感じだな!
俺は筐体にゆっくりと座る。
「店でも思ったがすげぇ柔らかいな。それに寝転ばなくてもソファーとして使えるし」
座ると優しく俺を受け止め、それでいて少し押し返してくるような。俺はVRヘッドギアを持ち、ゆっくりと寝転ぶ。
あぁこのまま寝てしまいたいが、初期登録しないとな。その前にまずは筐体の扉?を閉めないといけないのだが、中にはボタンが無いんだよな。
とりあえず初期登録だから開いててもいいか。俺はVRヘッドギアを装着して
「ログイン」
その言葉を発すると、その言葉に反応してVRヘッドギアから音がして、俺の意識が遠のいていく。
そして次の瞬間には真っ白い空間の中にいた。凄いな、ほんとどういう原理なのやら。そう考えていると
『はじめまして、購入者様。初期登録を始める前に購入者様の名前と私、サポートAIの名前をお決めください』
なんか何処からともなく声が響いているな。サポートAIか。
「俺の名前はしゅうと。サポートAIはナビで」
『畏まりましたしゅうと様。私の名前はナビです。早速ですが、VRヘッドギアとVRヘッドギア専用筐体を同期しますか?』
「同期したらどうなる?」
『はい。同期しますとVRヘッドギア専用筐体の操作をこの空間内でする事が出来ます』
ほぉー。それは便利なんじゃないのか?とりあえず同期するか。
「じゃあ頼む。それと初期登録をしたい」
『承りました。…同期完了。初期登録を行うには筐体の扉を閉めないといけません。閉めますか?』
「頼む」
『戸締り完了しました。では初期登録を始めます。まずしゅうと様の健康状態を確認します』
あー確か健康状態も把握できるとか言ってたか。だがどうやってやるんだろうな?
「俺はどうしたらいい?」
『そのままお待ち下さい。しゅうと様の意識がこちらにあるので分からないのは当然なのですが、いま筐体ではCTスキャンが作動しており、しゅうと様の健康状態を確認中です』
へぇー、やっぱ凄いな。ちょっと高かったけど買って良かったな。
『しゅうと様の健康状態を把握。しゅうとの体は至って健康です。このまま初期登録を行います』
ほへー!すごいな!当たり前だが、これVRヘッドギアだけなら出来ないんだよなぁ。そんな事を考えつつ初期登録を終わらせる。
初期登録を終わらせると真っ白い空間内に机と椅子が現れる。どうやらここはパソコンでいうホーム画面のようだ。俺は椅子に座り
「アナザーワールドファンタジーをダウンロードしたい」
『承りました。……ダウンロード開始しました。ダウンロードが完了するまでキャラクタークリエイトを行うのはどうでしょう?』
「えっ出来るの?」
『可能です。キャラクタークリエイト後のプレイはダウンロードが完了するまでは出来ませんが』
「じゃあお願いする」
『承りました。Another World Fantasy起動。行ってらっしゃいませ』
ナビの無機質な声を聞き終わると真っ白い空間から真っ暗な空間に早変わりした。少し怖いな。
それにしても科学がさらに発展したとは聞いてたが、AIがここまで進化してるとは思わなかった。凄いな今の時代。
『ようこそ、AnotherWorldFantasyへ』
透き通る様な女性の声が聞こえた瞬間、真っ暗だった空間は一面草原へと変わり、空には雲一つない青空が澄み渡る。
そして目の前には大きな大木が聳え立っていた。この大木の下でキャラクタークリエイトするのかな。
『キャラクタークリエイトを行います。まずは種族を選んでください』
あれ?こういうのってまずはアバターから決めるものだと思っていたのだが…。あぁ、なるほど。種族にも色々違いがあるんだからまずは種族を決めてある程度外見を決めるのか。
しかし色々いるな。このAWFは人間種族はもちろん、魔物種族にもなれるみたいで、種族が豊富にある。
人間種族と魔物種族どちらがいいか分からないから、俺は事前に攻略サイトを見てきた。まぁ出来るだけ見ない様にするが、最初から失敗したくないしな。
ちなみにAWFはサービス開始から既に1年以上は経っているので、攻略サイトはそれなりに情報があったな。
で、人間と魔物の違いは色々とあるのだが、まず大きな違いは職業の有無。人間には職業があるが、魔物にはそれが無いということだ。
職業が剣士なら中級剣士→上級剣士と職業が進化していくのだとか。もちろん特殊職業もあったり。
魔物は職業が無いが、魔物は種族進化するという。育成に時間が掛かるが、最後まで育成すると人間より能力値が高くなる。ここまで聞けば魔物も人気あると思うのだが、魔物は不人気だったりする。
その理由の1つがほとんどの街に入れないという事だ。最初の街は入れるが、人間の国には入れない事が多い。これが不人気の理由だ。
そして2つ目、PKに狙われる。AWFはPK推奨なので、魔物プレイヤーはレア魔物と勘違いしてPKされる事が頻繁にある。まぁ人間と魔物では難易度が段違いすぎるのだ。
だが俺は何の種族にするかは決めている。それも魔物種族でだ。俺の目的はかっこいい剣とか鎧とかそういうのを集めてコレクションにする事だからな。
「あったあった。1周年で追加された魔物種族」
俺の目の前には鈍色をした無骨な鎧が立っていた。俺が選んだ魔物はリビングアーマーだ。無骨なんだがシンプルイズベストだ!王城とかに飾られてたりするのだがそれが動き出したみたいな?うーん良い!
ここで初めてアバターを弄れるのだが、まぁ特に弄る必要ないな。リビングアーマーだから顔バレすることもないし、鎧を分厚くしたり出来るが、シュッとした鎧が好きだからこのままでいこう。
次はスキルか。スキルは人間も魔物も最大10個まで獲得出来る。獲得するにはSP(スキルポイントorステータスポイント)というポイントを消費してスキルを得る。
初期SPは15ポイントで、ここからやり繰りして欲しいスキルポイントを獲得する。もちろん余らす事も出来る。必要なスキルを取って残りはステータスに振るとか、何かあった時までに残しておくとか。
で、ここで注意なのだが、種族にも得意不得意があり、得意なスキルなら獲得する為に必要なSPが少なくなり、その逆も然り。
例を上げるならエルフなら調薬、魔法なら植物魔法が得意なので少ないSPで獲得できる。逆に不得意としてる鍛冶や採掘等はSP多く必要になる。
ドワーフの場合、鍛冶や採掘は少ないSPで獲得できるが、逆に調薬や植物魔法等はSPを多く必要になる。といった具合に各種族に得意不得意がある。
そして人間種族以外の種族には種族スキルというのがあり、種族スキルを入れて最大10個までスキル獲得可能だ。
種族スキルにはメリットもあるが、デメリットもある。有名なところだとヴァンパイアだ。【光耐性脆弱】だが、ステータスが初期から高いとかだな。
俺のリビングアーマーは種族スキルが2つ。なのであと8個。
「まず剣術(1SP)だな」
俺のメインになるスキルだな。で、このスキル選択なのだが、ランダムスキル編成というものがある。既に決まっているスキルを省いた、空いてるスキル枠をランダムで決めるというやり方。
このランダムスキル編成はステータスにSPを1ポイントでも振ると出来なくなる。まぁSP全てステータスに振って残りはランダム編成でみたいな事を出来なくするためだろう。
で、このランダム編成にはちゃんとメリット、デメリットがあり、余っている全てのSPを消費してランダムスキルを獲得する。デメリットはゴミスキルと呼ばれるスキルがあるのだとか。
SPを消費して獲得できるスキル一覧には無い、ランダムスキル編成でしか出ないゴミスキル。ちょろっと調べたけど、【頭花】という頭に花を咲かせる、ただそれだけのスキルとか、【靴上】という靴を飛ばした時に必ず靴が上を向くとかいうスキルがある。
運営遊びすぎだろ…。まぁだが、それはまだマシな方でガチのデメリットスキルがあるみたいなんだ。【卑目】という常に卑猥な目を送るという喋るだけでNPCの好感度を下げるスキルとか、【半中】という二分の一で飛び道具や投擲物が外れるスキルとか。
職業を弓にした者が【半中】というスキル引いたら最悪だな。それにランダムスキル編成は最悪攻撃スキルが全く無いみたいな事もありうる。
だから攻撃スキルは最低1つ取ってからランダムスキル編成をするのが良いとの事だ。
だがちゃんとメリットもある。SPで取得できるスキル一覧にはないスキル、ユニークスキルというものがある。これはどれも強力なスキルで、中にはユニーク3つ付いた猛者もいる。これは俺も試すしかないでしょ。
ちなみにリセマラは出来ない。正確には出来るのだが、一度キャラを消去すると1ヶ月はキャラクタークリエイト出来ない。流石にそこまで待てる人はいないだろう。
まぁ俺は別にトップ層になりたいとか有名になりたいとか思ってないからな。スキルなんて何でもいい。のんびりゆっくり1人で武器を集めていくさ。って事でランダムスキル編成ポチッ!
『最後に名前を決めてください』
あれ?ランダムスキル編成は何を獲得したのか確認できないのか?まぁいいか。名前ねぇ…
『貴方の名前はルヴァンシュでよろしいですか?』
まぁちょっとありきたりかな?福島集人で略して復讐。フランス語でルヴァンシュだったか?本名はやめたほうがいいって掲示板で書いてたしな。
で、最終的に完成した俺のステータスだ。
名前:ルヴァンシュ
種族:リビングアーマー
ステータス
HP : 180
MP : 120
ATK: 13
VIT : 18
INT : 8
MID : 15
AGI : 7
LUK: 5
◆戦闘
【剣術Lv1】
◆種族固有
【防具吸収】【念動Lv1】
◆ランダムスキル
【???×7】
なるほど。正直強いのか弱いのか分からん。そもそもRPGとかやったこと無いからなぁ。まぁ多分だが、防御が固くて打たれ強いキャラなのかな?
攻撃もそれなりにあるが、INTとAGIとLUKが低いな。確かINTは魔法の威力が上がって、AGIはスピードで、LUKは運。魔法は不得意でスピードも遅い。運はクリティカルに補正が掛かるって掲示板に書いてたな。
で、種族固有にレベルが無いスキルがある。レベルが無いスキルはユニークだったはず。どんな効果なのかは分からないが、効果は後で見よう。【念動】も固有スキルなのか。念力みたいなので鎧を浮かせてるってことかな?
ランダムスキルはまだ何を獲得したか見れないな。まぁここで確認出来たら、納得いかないならまたランダム編成を再抽選みたいな事をする奴がいるだろうしな。完全にキャラクターを完成させたら確定するのだろう。
『キャラクタークリエイトを完了しますか?』
「はい」
『ルヴァンシュ様のもう一人の体が完成しました。それではルヴァンシュ様、良きAnother Lifeを』
ようやくスタートか。さて、まず何をしようか。そんなワクワク感を抱きながら、始まるのを待つ。
読んでいただきありがとうございますm(__)m