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十五話 料理クランとNPCについての衝撃の事実


「ごめーん!ほんとに待たせちゃってごめん!」


「いえ、大丈夫ですよ」


なんで俺が依頼を受けた者って分かったんだ?…あっ俺しか待ち合わせに使ってないわ。健康的な小麦色の肌が見えてる女の子は戦闘職というより生産職っぽいな。


「いやー、依頼を出すのはいいけど受けてくれる人が思ったより多くてねー。次出す時はもうちょっと条件を加えないとね」


そりゃ食材提供すればクリア扱いになるしな。それこそ最低何個からとか書いていないから殺到したんだろう。簡単にギルドランクを上げるのに必要なクリア回数を稼げるし。それはそうと報酬は要相談と書いてたがちょっと気になる。


「報酬についてなのですが」


「その話をする前に自己紹介するね!クラン、ワールドキッチンのサブマスター、オウムライスです!」


「俺はルヴァンシュです」


「じゃあルーさんで!」


な、何この子!?いきなり距離が近い!これが陽の者か!すごいコミュ力だ!初対面の人にいきなりあだ名を……だが悪くない。


「あっはい」


「全然敬語なんていらないんで普通に話してね!」


「…わかった。ワールドキッチンって事は料理をするクランなのか?」


「そう!この世界の料理に味が付いてるのはもちろん知ってるよね!」


「いや知らんが」


「だよね!で、この世界の料理を……今なんて?」


あれ?俺いまおかしなこと言ったかな?


「この世界の料理に味が付いてるのか?初耳なんだが」


「……はぁっーー!?じゃあ今まで何食べてきたの!?」


「携帯食料」


俺がそういうとなんかオウムライスが泣き真似をしだした。


「うっ…可哀想に……。料理を買うお金もないなんて…ちゃんとご飯食べてる?」


「おい、そんな目で俺を見るな。ちゃんと金もある。食事なんてスタミナ回復するだけなんだから携帯食料で充分でしょ」


あれ?固まった。口を開けてポカーンとしてるな。


「る、る、ルーさんは今、言ってはならない事を言ったよ!食事は口に入れば同じ?ルーさん、それ奥さんに言えるのですか!?」


「いやあくまでこのAWFの携帯食料の話で、そこまでは言ってないと思うのだが…。つか妻はいないよ。変なところで精神攻撃やめてくれません?」


「ルーさんは何も分かってないね!……あっそうだ!はいこれ!」


そう言ったオウムライスさんがストレージから紙?に包まれた何かを手渡して来る。なんだこれ?温かいけど。俺はその紙を開いていく。


「えっ?こ、これ…」


「そうです!ハンバーガーです!食べてみてください!」


「いいのか?」


「いいですけど、もう後戻り出来ませんよ?」


「なにその悪党が言いそうなセリフ。まぁ有り難く頂くけど」


そう言いながら食べる。むっ!?何だコレ!めっちゃ美味いじゃねーか!ハンバーガーを持った時から気になっていたが、このふわっとしたバンズ。そして噛んだ時に溢れた肉汁がバンズに染み渡り美味しさを加速させる。


そして細かく刻まれた玉ねぎがシャキシャキと噛む度に心地よい音を鳴らす。ケチャップ?の酸味と、チーズのまろやかさが全体を包み込み程よい調和がうまれている。


「美味い!」


「でしょー!もう携帯食料に後戻り出来なくなったでしょ?」


「確かにこれは…」


戻れないわ。確かにスタミナを回復させるだけなら携帯食料でも良いんだが、こう味が付いてるだけでこの世界での食事をすることにも楽しみが生まれる。知らなかった、AWFってしっかり味も作り込まれている。いや味覚を騙してる?分からんがすごいな!


「一つ疑問なんだけど、いまどうやって食べたの?」


「兜のバイザーを開けてだが」


「いや、いきなりハンバーガーが半分消えたんだけど。というより吸い込まれた?様に見えたんだけど」


「それ、俺の食事シーンだわ。たぶん俺幽体?だからかな」


「幽体でも食事出来るんだね」


NPCは知らんぞ?幽体の魔物プレイヤーなら皆こんな食べ方だろ。


「しかし美味しかったな」


「でしょ!で、話を戻すけど私達のクランはこの世界にいる魔物達や、野菜等を調理して食べるって事を目的として掲げているの!未知なる味の探求だね!」


「なるほど」


「でね、今私達のクランでは料理を覚えたい初心者が多いのよ。ちょっと前に1千万突破記念の影響もあるけど、クランリーダーが配信者でね、この世界の食材を調理し料理して食べる動画をあげてたら、料理を覚えたい初心者がかなり集まってね」


配信者…確か自分自身で動画を撮り、その動画を編集して動画共有サイトにあげる人達のことだったか?なんか生配信ってのもあってリアルタイムで映像と音声を共有する事も出来る。知ってるのはそれぐらいで、誰が有名なのかは全く知らない。


「良い事じゃないのか?」


「うん!良い事なんだよ!でも食材が底を尽きそうでね。レアリティが高い食材を扱うには料理レベルを上げないといけなくてね」


当然、料理レベルを上げるには料理しなくてはならない。初心者達の料理レベルを上げる為に食材を使いまくって枯渇したんだろうな。


「つまり初心者の料理レベル上げを手伝っていたら料理クランなのに食材が尽きそうだと」


「そゆこと!だから食材の提供をしてほしくてね!」


「それで?食材の提供をするのは構わないが、報酬は要相談ってどういうことだ?」


「それなんだけど、お金か料理かのどちらかにして欲しいの」


提供する食材をお金で買ってもらうか、提供した食材を料理して返してくれるってことなんだろうな。


「どっちでもいいのか?」


「どっちでもいいよ!まぁウチらとしては料理の方が嬉しいんだけど」


「じゃあ料理で」


「ほんと!?ちょーたすかるよ!他の皆は料理よりもお金だったからね」


みんなスタミナを回復する物は持っているのだろう。まぁ確かに味がそれぞれ違うなら、毎回同じ物より違う物を食べたくなるけどな。


「じゃあトレードで渡すよ」


「おねがーい!」


トレード申請して、えっと森熊の肉を1914個と。いや最近のゲームは凄いね。俺もあのブラック会社に入社したての新人の頃はまだ時間にも余裕があって少しだがゲームもしてた。


だいたいのゲームって持てるアイテムの限界が99個とかだったのに、1914個持てるんだぞ?この機能誰も活かしきれてないないだろ。9999個が限界なのかな?せめて999個にしとけよと考えながら手を動かす。


MAX機能とか付いててよかった。付いてなかったら地獄だったな。当然相手も少ない額とはいえ、シルを出さないとトレードが成立しないのだが、39シル?なんでそんな……あぁサンキューね!こういうオンラインゲームはしたことなかったから、オンラインゲームならでは?なのか分からないが、こういうところで使われる言葉を知れるのは面白いな。


あれ?こっちはトレード完了してるのになかなかトレード成立しない。これは相手がトレード成立のボタンを押してないからだな。


「どうした?」


「えっ…?あっごめん、思ったより食材が多くて…」


「そうだな。報酬の料理はバリエーションが豊富じゃなくても気にしないぞ」


「それは私達が気にする!出来るだけ早く作るからね!」


まぁ早く作ってくれるのはありがたいな。あの味知ったら早く携帯食料をやめたいからな。


「それにしてもこの世界で店でも出したいのか?」


「いや、私達はただ美味しい料理を作って食べたいだけだよ?もちろん店を出す人もいるだろうけどね!」


「そうなのか。いや気になるのだが、プレイヤーが食事する店とか、それこそポーション系をばんばん売るとこの世界で生活しているNPC達は大丈夫なのか?」


ゲームとはいえNPCもちゃんと生活しているのだろう?じゃあポーション系を売っている道具屋とか全く売れなくなるんじゃないのかな?食事する店はまだ需要があるから大丈夫だとは思うがな。


「あれ知らないの?NPCもワールドマーケット使えるよ?」


「はぁ!?初耳なんだが!!」


「そうなの?まぁでもNPCはプレイヤーと違ってワールドマーケットを使用する際に制約があるんだけどね」


「どんな制約だ?」


「NPCはワールドマーケットで出品は出来るけど、購入は出来ないのよ」


購入は出来ない。こういう仕様にしたのは何か理由があるはずで、その理由がさっき俺が言ったポーション等プレイヤーが売りまくったら道具屋は商売上がったりではないか?に関係しているのだと思う。


「店が潰れるからか?」


「そう!たぶん運営もその事を分かっていたんだろうね。もしNPCにもワールドマーケットの購入が使えたら、道具屋が潰れてしまう。道具屋には上級までのポーションが売っているんだけど、プレイヤーは儲けようとその値段よりも低い価格で売り出すよね?」


「なるほど、そういう事か」


「当たり前だけど、NPC自身も錬金をやるし、それこそNPC冒険者もいるんだから金策もしてたりする。今まで道具屋でポーションを買ってたNPCまでが、ワールドマーケットでポーションを買うようになったら本当に道具屋の意味がなくなってしまう」


「だからNPCは出品する事しか出来ないのか。いわば道具屋はNPC専用なのか」


まぁ初心者は少しの間、道具屋を使うだろうけど、中級者になったらワールドマーケットでポーションを買うようになるだろう。そっちのが安いし。


「そういうこと!だからNPCが出品してるポーション類とか素材とかワールドマーケットで売られてたりするよ!」


「そうなのか。他に何かプレイヤーとNPCの違いはあるのか?」


「そうだねー。ポータルストーンや掲示板はNPCは使えないね。後はフレンド機能も使えないけど、パーティとしては誘えるかな」


パーティとして誘えるのか。そう考えるとプレイヤーとほとんど変わらないな。NPCというより人ととして認識した方が良さそうだな。


「あとはNPCはやられてもプレイヤーと同じで復活するとか!」


「えっ?」


「なんか重要人物がやられたら大事なクエストを受けられなくなるからNPCは復活する仕様にしたんだろって考察されてたね。護衛クエストとかちゃんと守りきれないと復活した時に文句言われたりするんだってー」


なるほど、そんな仕様が。……いや待てよ?確か神聖ユースティア皇国は人間至上主義であり、その他の種族を敵視している。特に魔王国アインヘルに関しては打倒を掲げている。


今の話を聞く限り、NPCがやられた事を覚えているという事だ。つまりNPCはやられても復活するという事を知っている。なら何故、打倒魔王国アインヘルを掲げているのか?だってそうだろ?NPCが復活するなら国を潰す事が出来ない。


もちろん街等をぶっ壊すみたいなやり方もあるが、復興なんて幾らでも出来る。何回でも復活できるからだ。そもそもゾンビみたいな連中だ。国を潰すのは厳しいのではないか?


うーん考えても分からん。当たり前だが魔王国に住んでる魔物種族も当然NPCだ。復活しないなんて事はない。だが復活するなら打倒など掲げないと思うのだが、神聖ユースティアは復活出来ると知ってて打倒出来ると思っている事になる。


神聖ユースティアは魔王国を打倒する設定だからと言われればそれまでだが、打倒出来る()()があるとすれば?


「ねぇ難しい顔をしてどうしたの?」


「あっいや何でもない」


「そっか!それなら私はもう行くよ!料理に関しては量が量だから少し待ってね!」


「あぁ、ありがとう」


そんな言葉を交わしながらオウムライスと別れる。しかし、NPCがワールドマーケットを使えるというのはこのゲーム初めてから一番の衝撃だったな。


神聖ユースティアの打倒云々の話はもうやめよう。どうせ考えたところで俺には関係ない話だ。


さっ、そろそろ次のレア掘り周回に行きますか!



ちなみにワールドマーケットでは出品した1割を手数料で取られるのですが、その手数料は冒険者ギルドと商業ギルドに山分けされてます。


読んでいただきありがとうございますm(__)m

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