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十二話 森熊周回ついに…

基本的にサクサク進みたい


…おはようございます。少し寝すぎてしまったな。もう10時なのか。朝食を食べるか。仕事をしている時は朝食なんて食べる時間とか無かったからなんか新鮮だな。軽くパンを食べたら運動しよう。


朝食が終わればジョギングに行く。朝ぐらいは運動してた方がいいだろ。


30分軽く走って近くのベンチで休憩を取る。


「いい天気だなー」


雲一つない空を見上げる。上を見上げるなんていつぶりだろうな?周りに俺ぐらいの歳でジョギングしてる奴はいない。当たり前か。もうすぐ11時だ。お爺さんやお婆さんがいるだけで、俺ぐらいの歳の奴は頑張って仕事をしているのだろう。


俺は何をしているんだろうな、と情けない気持ちになり気分が沈む。


「おや、どうしたの?」


「えっ…?」


俺は先ほどまで空を見上げてたのに、いつの間にか下を向いていた。その顔を上げると優しい顔のお婆さんがこちらを覗いていた。


「何か辛いことがあったの?」


「辛いと言いますか…虚しいと言いますか…」


「私に話してくださらない?誰かに話すと気持ちが楽になるものよ」


いや見ず知らずの人になんてと思っていたが、考えとは裏腹に俺の口は動いていた。10年働いた仕事場を辛くて辞めたこと。開放感はあったが、今は虚しいと感じていること。他の若者が働いてる中、俺はこんな事をしていてもいいのか?俺以上に長く勤め、それでも頑張っている人がいる。それに比べ俺はその程度で辞めてしまう弱い人間なのか。


俺は見ず知らずのお婆さんに、言われても困る様な事を矢継ぎ早に話す。


「あっすいません…」


「いいのよ。貴方は弱い人間ではないわ。人間は機械と似ているけど機械じゃないの」


「機械…?」


「そう、使い続ければ充電が無くなってしまうわ。でも充電すればまた使えるの。そうやって使い続ければいつかは壊れてしまうの。だから合間合間にメンテナンスをしなければならないわ。それは人間も同じよ。でもね、そんな事が出来る人間は少ないのよ」


「どうしてですか…?」


「だって、みんな未来を見据えているから。未来を見据えて、この先本当にこのままでいいのか?変わらなくてもいいのか?と不安になったりするものよ。そんな人間がまともにメンテナンス出来ると思う?」


「いえ…」


「でもそのほとんどの人間が今の自分から変わるのを恐れているの。そして不安に押し潰されて壊れてしまうの。そんな中で貴方は壊れる前に変わろうとする一歩を踏み出したの」


「ですが俺は…」


「分かるわその気持ち。貴方の選択が本当に正解だったのか、間違いだったのか分からなくて不安なのでしょう。だから周りの働いてる人を見て虚しくなるのでしょ?」


「……」


「貴方の選択が正解か間違いかなんて誰にも分からないわ。でもね、動かなければ何も変わらないというのも事実よ」


そうだ。俺はあの会社が嫌で辞めたのだ。辞めた時は清々した。だけど1人になると考えてしまう。いや、考えてしまった。


自分の将来、周りの働いている人達と今の自分の劣等感の差、1人だとより痛感する孤独感。なんの目標もなくただ生きている。


相談する友達はいないし、頼れる家族もいない。というより、母親に関してはあの事件で縁を切った。いやあんな奴は母親じゃないな。


今の自分には何も無いからこそ感じる疎外感や喪失感。自分はどうなりたいのか、どう在りたいのか分からない。


「迷ったり、不安を感じるのは精神が沈んでいる証拠よ。貴方は今メンテナンス期間なんだから、この際楽しんでみては?」


「楽しむ…か…」


仕事を辞めて何もしてない俺がゲームを楽しんで良いのか。ゲームをしてる時は忘れる事が出来るけど、現実に戻ってくると嫌でも理解させられる今の自分の現状に。療養すると言いながらやっぱ不安になるよ。


「将来こういう自分で在りたいという理想像があっても、現実は理想像と全く違う自分になってる事が多いわ」


「お婆さんも理想像と違う自分に?」


「えぇそうよ。でも理想像の自分よりも今は幸せだわ」


「そうなのですか」


「これも色んな縁に恵まれたからだわ。何でもいいのよ。どんな趣味でも人と繋がっているし、繋がれるわ。だから今は流れに身を任せて楽しみなさい」


「ありがとうございます。少し気持ちが楽になりました」


「ならよかったわ。…あらいけない、もうこんな時間。もう帰らないといけないわ。お話出来てよかったわ」


「こちらこそお話を聞いてもらいありがとうございます」


俺がそういうとお婆さんがゆっくり立ち上がる。


「そうそう、これは人生の先輩からのアドバイスよ。自分の未来がどうなるか分からなくて不安になる事もあるかもしれないけど、意外と何とかなるものよ。私達がここで会ったのも何かの縁。良い縁は大事にしないとね」


そう言いながらお婆さんは歩いていく。遠目でお婆さんを視ていた全身真っ黒のスーツを着て、黒のサングラスを付けたガチムチのボディーガード?の様な人がお婆さんに近付き侍るかのように付き従う。


そしてボディーガードが高級そうな車の扉を開いて、お婆さんは車に乗り込み去っていく。いやボディーガードいたの全然気付かなかったな。ってか何者なんだろ。ボディーガード付いてるのヤバくないか?俺普通に喋ってたけど…。


でもまぁ、お婆さんの話を聞いて少し気が楽になったのは本当だ。今の現状に身を任せて楽しむか…。お婆さんが言って通り、意外と何とかなるかもしれないな。


今は色んな事を忘れて楽しんでみるか!それと良い縁は大事にしないと、か。またお婆さんに会いたいな。


もうすぐ昼だな。さっ、昼飯を食べてから家に帰るとするか。今日は何を食べようかな?


………

……


さて、今日から本格的に森熊の周回を開始する。狙うは新緑の革鎧。既に1つドロップしたから、取り敢えず装備スキルのカンスト、そしてコレクション用に1つだ。


装備スキルの合成はベースのレベルが高くなるほど成功確率が落ちるとメティス言っていた。俺の【防具吸収】は合成とは違うが、失敗する可能性も視野に入れておかないとな。つまり森熊周回までどれだけ掛かるか分からないということだ。


ふむ、レアアイテム掘りの周回で一番辛いのは終わりが見えない事だ。だから1日で最低何匹狩るかを設定する。まぁ今日の1日でどれだけ狩れるかを数えてみないとな。


って事でログイン!


『行ってらっしゃいませ、しゅうと様』


さて早速周回だ!


………

……


今日は昼(12:30分ぐらい)からログインし、1時間の休憩を入れて、合計11時間ぐらい狩り続けた。今は深夜1時ぐらい。森熊を狩った合計387匹。


正確には数えてなかったが、確か200匹辺りで森熊の討伐タイムが1分切った。もうTAみたいな感覚でやり続けた。討伐タイムが1秒短くなれば喜び、1秒長くなれば悔しくて次こそは!みたいな感じだったな。


本当はレベルが上がったSPを攻撃力に振れば一撃なんだけど、楽しみは後に取っておきたい。この森熊周回が終わった頃に俺はどれだけ強くなったのかを。


で、これだけ狩って新緑の革鎧は5個だ。大体70体に1個ペースだ。もちろん、新緑の革鎧がドロップして、そこから次の新緑の革鎧まで30体目で出た時もあったが、100体狩っても出なく沼った時もあったが、平均すれば70体に1個。 


もちろん新緑の革鎧は出てすぐに【防具吸収】に食わせてる。順調にレベルが上がり、【体力強化(鎧)・小Lv6】になった。合成ではこの辺りから失敗するんだったか。


さて、ナビと少しお話して、明日も続きをするから俺は寝る。


………

……


朝10時に起床し、朝食を食べ、昨日と同じ時間帯ぐらいにジョギングに行く。昨日と同じベンチに座り少し休憩してたけど、今日はお婆さんはいなかった。今は色んな事を忘れて楽しみたいと伝えたかったんだけどな。


少し早めのお昼を食べ、今日も昼(12:30ぐらい)からログイン。そして森熊周回。


森熊周回から5時間と少しぐらいか?狩った森熊の数は344体。10個目の新緑の革鎧をドロップした。本格的に周回する前に1つドロップしてたからこれで11個目だな。森熊討伐も少しずつタイムを縮めたけど、50秒ぐらいが限界か?


昨日、本格的に周回した時は2分台だったのにな。大分タイムを縮めたものだ。


でよ、もちろん【防具吸収】に食わせたんだけど、凄い事が分かった。これ合成と違ってこれ…失敗しないんじゃね?だって全て成功したからな。今は【体力強化(鎧)・小LvMAX】になってる。


いやただ俺の運が天元突破しすぎた可能性はある。そして運を使いすぎて明日車に轢かれて異世界転生する可能性も微レ存だが、俺の考え的に【防具吸収】は失敗しないのだと思う。


【超運】や【激運】スキルで成功確率も上がってるんじゃないの?と思うかもしれない。メティスがいなかったからちょっと調べたけど、検証班が【激運】スキルで装備合成の確率は変わらないと検証結果を出してたし、恐らく【超運】も同じ。


つまりこれが【防具吸収】という種族ユニークスキルの効果なんじゃないのか?最初はゴミかもしれないと思ったけど、これがもし失敗しないのならまさにユニークに相応しい能力じゃないのか?いや、ユニークの中でもかなり強い部類だと思う。他のユニークスキル知らんけど。


って事で、今回の森熊周回のリザルト。


森熊討伐数 811体

◆ドロップ品

・森熊の肉 1914個

・森熊の厚皮 1012個

・森熊の爪 543個

・新緑の革鎧 11個


はい、参加賞はとんでもない数ですね。森熊811匹に対して肉多くない?と思うが、これ【解体】スキルの恩恵なんだよ。


【解体】の主な効果は魔物の希少素材が出やすくなるっていう効果なのだが、ボスだと効果が付け足される。それが獲得できる素材の量が増加するである。


要は参加賞で貰える数が増える。具体的に1〜3個。もっと強いボス?デカいボス?ならさらに増えるみたいだ。厚皮もこの効果で増えてる。流石に爪は素のドロップ確率が低いから討伐数よりも落ちてないけど。


素材の量が増えるであって、ドロップする装備品は対象外だから間違っても2つ落ちたなんて事はない。


さぁーて、森熊周回もようやく終わったし一度落ちるか。それにもうそろそろログインしてから6時間だしな。このやりきった感は最高だな!ちょっとお酒を飲みたい気分だ!


ちなみにVRヘッドギアは多少のお酒なら問題なくログイン出来るが、飲み過ぎて正常な判断が出来ないと判断されると強制ログアウトになるのであまり飲み過ぎないようにしよう。

読んでいただきありがとうございますm(__)m

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