十一話 装備スキルについて
おっ!よかった、まだ起きてた。って事で鎧というより装備スキルに付いて質問してみた。
『もう出たの。運が良いのよ。装備スキルのレベルは倒した魔物の数では上がらないのよ』
装備スキルは敵からドロップした武器、防具に付いているスキルの事である。先ほどドロップした様に、鎧系統は必ずステータス系のスキルが付いている。
今回は体力強化だったが、次ドロップすれば物理攻撃力が出る、みたいな事はない。基本的に付いてるスキルは固定なのだ。つまりどれだけ新緑の革鎧をドロップしても体力強化しか落ちないという事だ。
ランダムで付くなら俺はずっとここに籠っていたかもしれないな。もちろん、今回出た新緑の革鎧に体力強化が付いてないというハズレはないから安心だ。そして必ず装備スキルはレベル1で落ちる。
次に重要なポイントはドロップ品で落ちる武器防具、全てにスキルが付いてる訳では無い。スキルが固定で付いてる装備か、スキルが付いてない装備の二種類しかない。まぁスキルが付いてない装備は基本性能が高いのだとか。
ドロップ品ではなく、例えば森熊の厚皮でも防具は作れる。だがやはり魔物から直接ドロップする装備品は基本的に能力が高いようだ。もちろん魔物素材で作った高性能な防具もあるみたいだが。
次の重要ポイントは武器、頭、鎧、脚に付くスキルはそれぞれ種類が固定されている。鎧系統ならステータス強化系、脚系統もステータス強化系、頭系統は耐性系、そして武器系統は特殊なスキルなのだとか。
メティスから聞いたのだが、耐性に毒耐性というものがある。鎧や脚の装備スキルに毒耐性が付いた装備が欲しくても、鎧や脚装備に耐性スキルが存在しない様に、頭装備のスキルは耐性系だけで、ステータス強化系は存在しない。(現時点で)
次に重要なのは鍛冶屋での装備スキル合成。スキルが付いた装備は他の装備に移植できる。ただし、同じ系統同士でないと出来ない。
新緑の革鎧の体力強化(鎧)を他の鎧装備に移植出来るが、脚装備には移植出来ない。脚は体力強化(脚)と付いてるので、それも脚系統同士の装備でしか移植できない。頭装備の耐性系も同じで、鎧や脚には移植できない。
武器だけが特殊で、武器スキルは他の武器にも移植できないし、もちろん防具にも移植できない。
装備スキルのレベルなのだが、体力強化Lv1が付いた装備に、体力強化Lv1を合成するとLv2に。Lv2にまたLv1を合成するとLv3に。こんな感じでどんどん装備スキルのレベルを上げられる。
ここで1つ疑問に思うことがある。ステータス系のレベルカンストは100だから、装備スキルのレベルをカンストさせるには100回合成しないといけないのか?流石に運営もそこまで鬼畜ではないようで、装備スキルはLv10でカンストするようだ。
取得スキルのステータス強化Lv100と装備スキルのステータス強化Lv10はどちらも同じ数値が上がる。取得スキルのステータス強化・小がレベル1毎にステータスが1上がるのに対して、装備スキルのステータス強化・小はレベル1毎にステータスが10上がる事になる。これはかなりデカイ。
ちなみに装備スキルのステータス強化もカンストすれば進化するみたいだ。
そして装備合成は必ず成功するかは分からない。スキルレベルが高いと合成が失敗する事もあるみたいだ。例えば体力強化Lv9(ベース)に体力強化Lv1を合成すると失敗する確率が高いのだが、Lv9にLv5と合成するとなれば成功確率はグンと跳ね上がる。もちろんLv9同士なら確実だろう。だがその分お金か労力が掛かってしまうが。
それとLv9(ベース)とLv1の合成が失敗しても、Lv1が付いた鎧が消えるだけで、ベースになった鎧はLv9からレベル下がるみたいな事は無い。まぁLv1の鎧は失うが。
ちなみにステータス強化・中のスキルレベルを上げるには、ステータス強化・小が付いた鎧では上がらないのだとか。同じステータス強化・中同士で合成しないと駄目みたいだ。世の中そんなに甘くないという事だ。
そして最後に、これは俺にはあまり関係ないと思うのだが、例えば鎧に体力強化Lv8、物理攻撃力Lv8が付いてるとして、他の鎧をメインにしたい時、この装備スキルを移植するのだが、この時合成しようとすると移植失敗してスキルが消えてしまう恐れがある。メインとなるベースの鎧にスキルレベルが高い鎧を合成(食わせる)させるのだから、当然失敗すればスキルは消える。
そこで登場するのが安全に移植することが出来るスキル移転だ。装備スキルのレベル×10万シルと高いが失敗することはない。体力強化Lv8と物理攻撃力Lv8の移転なら、二つで160万シル掛かる。
もちろん他にも物理防御力のスキルや魔法攻撃力とかもあるので、スキルを多く付けてると移転にもそれだけお金が掛かる。余談だがこの技、NPCの鍛冶屋専用スキル?みたいで、鍛冶師プレイヤーから批判の声が運営に送られているが、運営は頑なに無視。
課金すれば、移転20回無料チケット1000円で買える。この20回というのが商売上手なのよ!(メティスの発言)
ちなみに装備スキル合成成功確率30%UPチケット10枚1500円、装備スキル合成成功確定チケット5枚5000という物もあったりする。
『とまぁ装備スキルは少しややこしいけどこんな感じなのよ』
「なるほどなぁ。じゃあ体力強化小がカンストするまで集めるか」
『君、いまの話聞いてたのよね?装備品ってのはただでさえドロップ確率低いのよ?カンストまでって事はあと9個集めるってことなのよ?』
「いや違うぞ。コレクションの分も集めるから正確にはあと10個だ」
『……君さぁ、ドMかなにかなの?』
「し、失礼な!俺はノーマルだ!……たぶん」
全くなんて事を言い出すんだ!
『世間一般の認識であればドMだと思うのよ。同じ事を繰り返す作業をやるのは地獄なのよ。それも一日中なのよ』
「いや、それが好きなやつだっていると思うのだが?」
『いると思うけど、世間一般で見れば少数意見だと思うのよ。誰が好き好んで自ら地獄に片足を突っ込みにいくのよ』
「俺だが!?」
『ククク、まぁそれも才能なのよ。今の私には有り難いのよ。その才能を誇るのよ』
えっ?なんか下げられてから上げられた?俺の頭には幼女が鞭と飴を持っている姿が浮かぶ。うーん違和感だ
「お、おぉ…ありがとう?」
『じゃ、レア装備集め頑張るのよ。希少素材は私が買うから必ず終わったら連絡するのよ』
と、フレンドコールが切れた。あんたは俺の母親か?まぁいい、聞きたいことは聞いたのだから素直に感謝だな。
って事で森熊周回だ!と、言いたいところだが、もう1時だな。そろそろログアウトして寝る事にする。
宿を取ってログアウトすればいつのも真っ白い空間だ。
『お疲れ様です、しゅうと様』
「ただいま。ナビは退屈じゃなかったたか?」
『はい。しゅうと様のプレイを拝見してましたので』
「そうか」
『VRヘッドギアのログイン時間はまだ残ってますが、どうしますか?』
「俺はそろそろ寝るからログアウトするよ。健康タイマーは開始しといてくれ」
『畏まりました。おやすみなさい』
「おやすみ」
真っ白い空間から意識が飛び、すぐに意識が覚醒し、ゆっくり筐体の扉が開く。さて歯磨きして寝るか。
歯磨きが終わり筐体の中へ入る。
「スリープモード」
VRヘッドギアにログインしてない状態でも音声認識があるらしく、俺の言葉に反応して筐体の扉が閉まる。
寝転んだ際、頭の上らへんには物を置ける場所があるのだが、そこがVRヘッドギアを置く場所になる。ちなみにこの筐体には照明もあるので明るい。もちろん「消灯」と言葉を発すれば灯りが消える。
「ふぅー…」
面白かったなぁ。このゲームを紹介してくれた同僚には感謝しないとな。同僚が紹介してくれなかったら、ただ徒に時間を消費していただろう。
それにしても随分濃い1日だった。信じられるか?随分旅をしたような感覚なのだが、まだ1日だ。時間加速で8時間がAWFでは1日だからな。そりゃ濃い1日になるよな。
こんなに充実した日は久しぶりだな。最近は仕事でしか人と話すことは無かった。内容も仕事の話だし。だがゲームの中では相手も当然プレイしてる人で、オンラインで繋がって知らない誰かと話す。
20代後半になっても独り身で、仕事をして無理やり淋しさを誤魔化してたが、やはり淋しい。だがAWFでは人との繋がりでその淋しさが埋められた。相手は幼女の様な大人だったが、それでも嬉しいものだ。
AWFをやっていれば、これから色んな人と出会うかもしれないな。どんな人と出会うのか楽しみだ。明日も頑張る…か……。
分かり辛かったらすいません。この話は覚えても覚えなくてもどちらでも構いません。
あと現在のしゅうと君は自分で気付いてないけど精神的には不安定な状態です。
読んでいただきありがとうございますm(__)m