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感情のシンコペーション 3

小学校、高学年の時だったか、俺は誰よりも早く成長痛がきた。


その時の俺は、バスケットクラブに所属していたこともあって毎日、身長が伸びる努力をしていた。

そのかいあってか、中学2年の時には、俺は180センチを超えていた。

そのあたりからだと思う。

近藤ザウルスなんて呼ばれていたのわ。


中学校のバスケット部にいた頃はバリバリの部活が好きな男の子だったかもな。


そこまで、部活は強くなかったから県大会進出までも行かなくて、早々に部活が終わった俺らは、やることが何もなくなった。


勉強なんて、常にそこそこやっていれば、何も言われなくて熱意なんてのも全然なかった。


そんな時に、テレビの音楽番組で、アイドルや、歌手、ダンスユニットなんてのもあったかな、そんな中4人組のバンドがいたんだ。

一人一人が別の楽器を持って演奏する。


一つ一つの音が一つになって俺の鼓動を早くした。


曲がよかったのかもしれない。

ただカッコよかっただけかもしれない。

いや、そんなのは、ただの言い訳でモテたかっただけなのかもしれない。


でも、何もなくなった俺は救われたんだ。


そこから、俺は初めてギターを親に買ってもらった。

アンプと、シールド込みで1万円の安いセットだ。

ただただ楽しくて寝るまも惜しんで練習して、元バスケット部の連中で中学3年の文化祭にバンドで出たんだ。

その時やったのは、たしか…


洋楽

グリーン・デイの

バスケット・ケースだ。


みんな初心者で、一曲しかできなかったが、その時の体育館での一人一人の歓声を今でも覚えている。

体育館半分は、埋まっていて、みんな俺達に釘付けだった。

前の人達は、今にも舞台に上がって来そうなぐらい声をあらげていて、後ろの生徒も俺達が音を鳴らすと目がキラキラと輝いて体育館全体が、まるで俺達のものになったような、そんな感覚だった。


その時には、もう俺のあだ名は、サウロになっていたかな。

近藤→近藤ザウルス→ザウル→サウロてな具合だ。


「まぁ、そんな感じで、そのあとすぐにみんなは楽器を辞めていたが、俺だけ高校でバンドを組んで今の俺がいる。そんな感じだ。」



「ぞぅな"ん"だ。」

秋山は、うつ向いて号泣していた。


「おいおい。泣くとこあったか?」


「だっでざ、君は結局一人になったじゃないか。」

秋山は、右手の袖で涙を拭いていた。


「いや、別に今でも普通に友達してるぞ。」


「決めた!!俺ブルー・スターのマネージャーなるよ!」


「は?」


「俺はちひろくんを応援したいよ!」

そう言って秋山は、立ち上がりポーズをとった。


「お…おぅ。ありがとうよ。」

その時のこの言葉は俺は冗談だと思っていた。



──ガラガラガラ

店のドアが開き、近づいて来る男いた。


「よぉ、久しぶりだな。サウロ。」

こういうことは、よくある話だ。

大概(たいがい)は、ライブハウスのオーナーだったり、一度飲んだことのあるバンド関係者が多い。

だが、こいつの名前は…覚えていない。

「えぇ…と確か…ウンチ。」


「ちげぇよ。ロベリアのウンドだよ。」

俺のことを気にしてか、別名を使っている。

ライバル視されているのだと思う…。


「お前、女をバンドにいれたんだって?」


「あぁ、まぁ。」


「落ちたもんだな。ど素人入れるなんて、この辺じゃ名の聞くサウロが聞いて呆れるぜ。」


「あは…ははは」

一度どこかのライブで合ったとは言えここまで言うんだな。

少しカチンときたが、俺は深呼吸して気持ちわ沈めた。

「じゃぁまた、どこかのライブでな。」

俺がそう言うと秋山が立ち上がった。

もう、かなりブチギレている様子だった。


「てめぇが…姫の何を知っているんだぁぁ。」

そう言って殴りかかり、テーブルはめちゃくちゃになった。


大将が止めに入ってやっとその場をしのいだ(かたち)だったが、大将は、ケンカしているウンドと秋山を見て笑っていた俺に一番怒っていた。


勘定(かんじょう)は、あとからでいいと大将に言われ俺と雄太は店を出た。


今度また、()びに行くか。

そう思い、ボロボロになった秋山に肩を貸して俺は駅へと向かった。


「お前、家どこだよ。」


「へへ…5駅先。」

俺の家は、2駅先だ。


「しょうがねぇなぁ。俺の家来いよ。」

俺は、雄太(ゆうた)を、家に泊めることにした。


電車に乗るなり、雄太は爆睡していた。

あんがい、お酒が弱いのかもしれない。


俺は、電車の外の景色を見ながら曲を考えていた。

今日は、なぜか満足感のある1日だった。

秋山(あきやま) 雄太(ゆうた)と、かなり仲良くなれた気がする。

20歳を過ぎて、初めてできた友人なのではないだろうか。

俺の話を聞いて号泣する人間だ。

中身ができていないと無理なことだ。

きっと優しいやつなんだなとそう思った。



俺のアパートは5階建てで、3階の304号室。


エレベーターは、ないので階段で部屋に向かう。

「おい!雄太!起きろよ!」


雄太は、足取りは、あるみたいだが、ムニャムニャと意識がここにないように見えた。


「ふぅーー。」

俺は、大きく深呼吸して雄太に肩を貸したまま階段を上がった。


部屋は、10畳の1Lだ。

ソファに雄太を寝かし、俺は、風呂に入った。


暖かいお湯で、お酒を身体から発散しているような感覚になる。


俺は汚い身体で布団に入るのが嫌いだから必ず風呂だけは、どんなに疲れていても入る派だ。


サッパリして、風呂から出るとそこには、パンツ一丁の雄太が立っていた。

「俺も入るよー。なんで言ってくれないのー。」


「お前は、勝手にはいれよ。」


「はいよー。タオル借りてるよー。」

そう言って雄太は、パンツを脱ぎ、浴室のドアを開た。


ほんとこの雄太と姫は、自分勝手というか…

自分らしいのか。

うらやましくもある。

時代なんだろうな。

そんな考えに行きついてしまう自分に腹が立った。


俺の時代もこいつらの時代も、ただ生きてきただけだ。

時代のせいだけなんかじゃない。

環境や、現状、そいつの生き方がある。

それこそ、人それぞれなのかもしれない。


俺は、ドライヤーをして、布団に入った。

雄太は、まだ風呂に入っている。

あいつ風呂場で寝てないかなぁ。

そんなことを思っていると、俺は意識がなくなっていった。




ピロピロピロリーン


何かが鳴っていた。

俺のスマホではない。


俺は、目を(つぶ)ったまま手で音の元凶を探った。


「んん…ん。」




何か声がすると思い、目を開くと、そこには、(はだか)秋山 雄太(あきやま ゆうた)がそこには、いたのだった。

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