love is blind
結局俺の年始は、一人きりだった。
自分で言うのもなんだが、大事にいたらなくて、よかったと思う。
年末年始に、重い病気になるなんて、運が悪いってもんじゃない。
呪われている。なんてことはないかもしれないが、冗談じゃない。
病院で、姫星がいろいろと話してくれたが、やはりこの気持ちは、胸にしまっておこうと俺は心に決めた。
俺は…姫星は…いや、俺達は本気だからだ。
ここまでが、仲のいい俺達の話。
ここからは、そう、仕事の話。
なんだと思う。
もともとがそうだったんだ。
夏フェスまで、あと半年。
形にするんじゃなく、ものにするんだ。
しばらく、頭をそれだけに集中したいとそう思っていたんだ。
────プルルルル
「はい、どうした?蓮弥」
「はぁー、あのぉちょっと出れます?近くまで来てるんで」
蓮弥は大きくため息をつき、そう言った。
「おう…」
俺は、言われたまま外にでて、近くのファミレスへと蓮弥に連れてこられた。
俺達は、席に着いてコーヒーを頼んだ。
「で、どうしたんだよ」
「あのですね、俺はこのバンドの仲介人じゃないんですよ!」
怒っていないが、呆れた様子だった。
「で、どうしたんだよ?」
「雄太さんと、姫ちゃんが、近藤さんが最近様子がおかしいって言ってて、俺にですよ?近藤さん付き合い長いし、わかりますよね?」
「あぁ…すまなかったな」
蓮弥は、人の気持ちを理解するのには、長けているが、物事をはっきり言うタイプの人間だ。ストレスにしかならない。
「で、何かあったんすか?」
「まぁなぁ、お前にこんな話をするのも、なんだが、聞いてくれるか?」
「はい」
俺は、年末から思ってしまったこと、そして姫星のことを全て話した。
「それって…」
言葉が詰まり、蓮弥は言葉を選らんでくれている様に感じた。
「なんて言うか、言葉を選ばないで言うなら、子供みたいじゃないですか?意固地になっていません?音楽を言い訳にしている様に俺は感じます」
「あぁ、まぁ、そう思われてもかまわんよ」
「いえ、俺はあんまり他人の考えに寄り添える人間でわないんで、強くは言えないっすけど、すみません」
「いや、いいんだ。蓮弥に聞いてもらえただけまだマシだな、そう言ってくれてうれしいよ」
考える余地は、まだある。
蓮弥の言うことは、もっともだ。
だが、そういうことを考えて俺の中で筋が通ってしまっているのが今の現実だ。
「しばらくは、見守っててくれないか?」
「いや、でも!」
「すまんな、そういえば、これ、新曲だ蒼馬にも渡しておいてくれ」
俺は、CDを渡して逃げるようにその場をあとにした。
数日後の練習日だった。
練習終わり、姫星が話しかけてきた。
「なぁなぁ、サウロ、今日はタバコ吸いに行かないのか?」
「ん?あぁまぁ」
そっけなかったのかもしれない。
俺の中では普通のつもりでも、態度にでていたのだろう。
日に日に姫星を見ると〝苦しく〟なる。
「なんなんだよ!お前!」
それから、姫星は大声をあげて俺に何かを言っていた。
俺は、聞かないように見ないようにしていた。
するしかなかった。
スタジオの中で、みんなが見ている中、姫星は、俺にその言葉を浴びせた。
姫星が言った、その言葉に俺は、ほっとしていた。
俺達は、そこからしばらく、蓮弥と蒼馬と三人で練習することが多くなっていった。




