二人のプラグレス⑤
「おまたせしましたー。今日このバンドを見に来てくれたみなさん。本当にすみません!急遽来れなくなったので少しだけ、お付き合い下さい。」
そう言って大志はベースを弾きだした。
すると、ギターとドラムが入ってきて演奏しはじめた。
昔、大志やっていたバンドの曲だった。
もともとは好きな人がいて、その子がバンドやっていたらしい。
その子に近づきたくてはじめたとか。
よくある話かもしれないが、その時点で大志とその子には実力には大きな差があったはずだ。
なのに、それでも、大志は始めた。
そして、この舞台に今立っている。
誰かに想いを聞いてほしくて。
人それぞれに伝え方っていうものがあると思うが、言葉をハッキリと言える人なら苦労しないだろう。
音楽家ってやつは、それを音に乗せてしまう。
恋や愛、友情、歌詞に秘められた想いなんかじゃなくて、それを音に乗せることが大志は昔からうまかったんだ。
久しぶりに、大志の演奏を聞いて俺は、しばらく手の震えがおさまらなかった。
フェス終了後。
俺は、控え室で帰る準備をしていた。
「おつかれー」
「おう、おつかれ。まだバンドやってたんじゃねぇか、つかベース??」
「まぁな。暇がある時だけの寄せ集めだよ。みんな俺意外サラリーマンだし…あ!そうだ!」
そう言ってまた、大志はどこかに消えてしまった。
打ち上げもあった様だが、俺は帰ることにしていた。
あと1日予定は空いているのだが、姫が心配だった。連絡は、未だに来ていなかった。
重い足取り俺は、ライブハウス出るとそこには、姫が立っていた。
「よっ!」
「よっ!じゃねぇよ!心配したんだぞ!連絡ぐらいしろよ!探しに行くところだったんだぞ」
俺は、姫を抱き締めていた。
心配だったんだ。ずっと心の片隅に姫のことがあった。
俺は、ホッとしていた。
「痛い!離れろ!サウロのことだから、探し周りそうだと思って早めに来たんだよ!んでママと会ってて、スマホの電源切れてた」
「うそだろ!めんどくさかったんだろ!?」
「テヘッ!」
「テヘッ!じゃねぇよ!あーもういいよ。お前飯食ったか?」
「んーまだ!」
俺達は、近くの居酒屋に行くことにした。
姫は、何故か嬉しそうに俺の腕に手を回して笑っていた。
そこで、気づいてしまった。
姫は…臭かった。
「お前…なんか臭くないか?」
「は!?ウザ!確かに3日ぐらいお風呂入ってないけど!!」
「は!?お前着替えて、というか風呂入ってこいよ!」
「えー。お腹すいたよー」
今日の姫は、いつもよりしおらしかった。
いつもなら、ここで言葉か腕力に頼った暴力、最後の一撃がとんでこなかったからだ。
「お前ホテル近いんだろ?」
「え?キショ…来るつもり?」
「…あぁ」
姫は、眉間にシワを寄せ考えていた。
「わかった!じゃあすぐお風呂入ったら出るからね!」
俺は、姫についていった。
そこは、ライブハウスから20分ぐらい歩いたところだった。
そのホテルの正面玄関口には、大きな車が出入りしていてベルボーイが対応している。
そんな場所だった。
「なぁ!俺達アウェイ過ぎないか?」
「チッ!胸を張れ!そして、睨み付けろ!」
「いや、睨み付けたらダメだろ」
30階の12号室そこが、姫の部屋だった。
部屋に入ると、部屋がいくつもあった。
高級感ただよう、シャンデリアや、ソファ。
そして、何より窓から見える絶景が俺を虜にした。
俺のホテルなんて、入ってすぐベッドあって終わりみたいなもんだった。
「お前何もんだよ。マジで」
「へ!いつか教えてやんよ!お風呂入ってくるから覗くなよ!」
そう昔のガキ大将的に姫は言い、色気の欠片もなかった。
─────ピロリピロリ
スマホが鳴った。画面を見ると大志だった。
「はい?どうした?」
「よぉ、お前打ち上げ参加してなかったんだな」
「あぁすまん言ってなかったな」
「お前今どこいんの?来いよー」
「いやーあのーその、なんだぁ」
「アハハ。なんだよそれ。姫ちゃんか?」
「まぁ、そんなとこだ」
「まぁいいや。明日夜空いてるか?面白いとこ連れてってやるよ」
「あ、あぁ」
─────ガチャ
お風呂場の扉が開く音がした。
「サウロー。お風呂上がったぞー」
「風呂!?何!?お前らやっぱ付き合──」
俺は、スマホの通話を切った。
「誰からだ?」
姫は、バスローブ姿に頭にタオルを乗せてリビングに入って来た。
「おま!服着ろし!」
「着てるだろー。髪乾かすのめんどいんだよ」
姫は、ソファに座りぐったりしていた。
今にも、バスローブから何かが見え隠れしそうで、俺は必死に理性を保った。
近くにあった、ドライヤーを手に俺は姫の頭を乾かし始めた。
「あー楽ちん」
気持ちよさそうに、姫は目を瞑っていた。
窓から見える景色と一緒に俺と姫が反射して、それを見ると少し俺の鼓動が早くなった気がした。
「じゃ行くか!」
姫の準備も終わり俺達は、また夜の街へと繰り出そうと部屋を出た。




