二人のプラグレス④
店を出ると、だいぶ人通りも少なくなってきていた。
「なんか今日つかれたなぁ」
「そりゃあ飛行機酔いして、ホテル戻って治ったと思ったら外でて知らない人間に会って…初めてずくしだったもんな、姫わ」
「うん。つかれたな!」
姫は、おもむろに履いていたヒールを脱いだ。
「ふん!」
姫は両手を肩まで上げ、手招きをしていた。
「なんだよ?靴履けよ」
「おんぶ」
人通りが少なくなっていたといっても、それなりに人がいる。
さすがに恥ずかしくなって俺は、無視をして先を歩いた。
「なんで!?おんぶー」
「お前酔ってんのか?さすがにワガママすぎるだろ」
俺は、笑いながら膝をつき手を後にした。
────タッタッタッタッ
「んしょ」
そう言って姫は、俺の背中に乗った。
重かった。人の重さっていうのは、思っているより重いものなんだとそう感じた。
姫が手に持っている靴が俺の腕にあたって汚れていた。
「なんだよ。無理してどうしたんだ?」
「今からね、ママに会うの。嫌だなぁって」
「嫌なのか?」
「うーん。めんどくさい!」
「そっか」
「うん。そ」
疲れていたのか、そのまま姫は、俺の首もとにしばらく顔を埋めていた。
駅前に着くと弾き語りのギターの音が聞こえてきた。
誰かが路上で歌っている。
「ねぇ何あれ?あーしもやりたい!」
姫は、背中から降り靴を履いて子供みたいに走り出した。
「おい!転ぶなよ!」
姫は、体育座りをして数人の観客と一緒に弾き語りを聞いていた。
「ねぇねぇ、やろうよ!」
「こういうのは、許可が必要なんだよ。そもそも機材も何もないだろ?」
そう言うと、姫は口を尖らせ不満そうにまた、弾き語りを聞いていた。
───パチパチパチパチ
曲が終わり観客が拍手する。
「ふぅー。帰ろっか!」
姫は、笑顔でそう言った。
俺達は、毎日夜は会うことにして駅のホームで別れることになった。
「じゃーねー。サウロ!」
「おう、また明日」
俺は、電車に乗り込んだ。
次の日。
俺は、朝からまた打ち合わせの後、お世話になったことがあったライヴハウスや知り合いに挨拶まわりをして過ごしていた。
単純に言えば付き合いを終わらせない様にする為だけの顔を合わせるだけのこと。
これも仕事だと思い俺はいろいろと足を運んだ。
夕方近くなり、俺は姫に連絡を入れておいた。
だがその日、姫からの返信なかった。
仕事が始まった。
ここから3日間俺は、昼からほぼ夜まで休憩意外座りっぱなしだ。
だが、いろいろなバンドを見るのは楽しい。
なんなら天職かもしれない。
だが、やはり音楽を奏でるほうが、しょうにあっている。
専門学校の時の話しだ。
楽器科にいた俺は、音楽に関わることが知りたくて、PAだけじゃなくディレクションワークや編集やMIXなんてのも別の専攻科の友人をひたすら作って教えてもらっていた。
今思えば、ウザイ奴だったかもしれない。
ただ未来だけを見つめて、もしバンドがダメだったとしても音楽に関わる何かがしたかった。
でも、ある日言われた。
「お前は、バンドやってたほうがカッコいいよ」
レコーディングブースでの一言だった。
俺がギターを演奏して、あいつに編集してもらっていた。
そんな何気ない一言。
もちろん好きで覚えていたことだったが、何より鮫上大志に言われたのがうれしかった。
認められる為に音楽をしているつもりは、なかったんだが。
そんな、ただ褒められたから、しょうにあっているなんて子供みたいな話しだが、それがなかったらもしかしたら、バンドは続けていなかったかもしれないな。
そんなことを考えて仕事をしていた。
仕事終わり、声をかけられた。
「おい!サウロ!最終日一組出れなくなったんだが…」
大志は頭を抱えていた。
「マジか!?そのバンド目当てで来る人達もいるからなぁ…」
「…お前出る?」
「いや無理だろ。普通に、というか俺が出ていったところでブーイング起こるだろ」
「はぁー。告知しとくかぁ」
大志は大きなタメ息をついていたうなだれていた。
「そういえば、大志?お前路上ライヴの許可とか取れたりする?」
「えぇ?今からしても、1週間はかかると思うけど」
「だよな。じゃいいわ」
姫と出来たらなんて思っていた。
それなり時間がかかるのは知っていたが、路上ライヴも大変なんだな。
そう思いホテルに帰った。
今日も姫から連絡はなかった。
3日目、昨日と同じく昼から仕事で、昨日は気づかなかったが来れなくなったバンドは、俺の担当のライヴハウスだった。
大志に連絡しておくことにした。
『おい!来れなくなったバンドの時間どうすんだ?俺何も聞いてないぞ?』
仕事だっていうのに、報連相もできないのかと、相変わらずの大志の適当さに嫌気がさしているとすぐに連絡がきた。
『すまん!あとでそっち行く!』
来てどうするんだ?なんて思ったが、ちゃんと話したいんだろうと待っておくことにした。
だが、来れなくなったバンドの1時間前になっても大志から連絡すらこなかった。
さすがにイライラしていた。
「よ!」
ライヴ中、仕事をしていると横から大志が現れた。
「よ!じゃねぇよ!どうするんだよ!」
「俺が繋ぐから、適当に頼むわ!」
大志は、そう言うと外へ出て行った。
音が鳴り響くなかで、どういう意味がわからなかったが、どうやらなんとかしてくれる様だった。
その時間、舞台にベースを持った大志が現れた。




