二人のプラグレス③
「どうもこんにちは鮫上大志です」
「うぅ、糸ノ瀬…です」
俺達は、ライヴハウス周辺のコンビニに集合していた。
今日も、いつもより姫は抑えめな服装をしている。
心境の変化なのか、低いヒールなんてのも履いていた。
姫は、相変わらず人見知り全開で今にも俺の後ろに隠れようと伺っていた。
「姫、気をつけろよ。こいつは、これでも女たらしだ。」
「うげっ!」
「おいおい。もう昔みたいに遊んでねぇよ。そんな暇ねぇし、ところで姫ちゃんっていうの?カワイイね」
さすがの俺でも少し気持ち悪いと思うような、そんなチャラさが垣間見えた。
「ところで姫ちゃん明日から何するの?」
俺達は、近くの喫煙所で立ち話しを始めていた。
「うるさい!死ね!」
「おいおいおい!初対面にそれは、ないだろぉー」
俺は、その会話に腹を抱えて笑ってしまった。
「はー涙がでてくるわ。俺も最初そんな感じだったよ、なぁ姫?」
「そうかぁ?チッ。あーしは、いつも優しかったと思うけどな!」
舌打ちからの加えタバコに威圧感がある言い方だった。
「恐いよ、この子。大丈夫?」
「あぁ。まぁ通常運転だ」
「で、実際のところどうするんだ?」
俺がそう言うと姫は、コンビニで買ったオレンジジュースを飲みほした。
「サウロを待っとく。行きたいとこもあるしな!ブラブラしとく!」
行きたいところ、というか本当は目的があったことに俺は驚いた。
「どこだよ。行きたいとこって」
「あとで、教えてあげるぅー」
と、笑っていた。
ほんと表情豊かな奴だな。こいつは。
「おい!おまえらイチャイチャすんな」
「「してないわ!」」
「ほら!」
そのあとは、大志に仕事の場所を教えてもらって、周辺を案内してもらった。
初めての場所になるとなかなか覚えずらいものだ。
そして、ホテルがなかなか遠い。
「取ってもらったホテル遠くねぇか?」
「そりゃぁ経費だから安い場所とるだろ?」
「そりゃあそうだ」
ぐぅの音も出なかった。
「あーしのホテルのほうが近いな!」
「なあ大志?姫も働けないか?」
「いや、特にやれることはないな。あったとしても、給料払えないぞ?」
「それは、いやだ!」
イライラし始めている姫をなんとか道ずれにできないかと俺は考えていた。
「そろそろ日も傾いてきたし、夜飯にでも行きますかぁ」
──────ピロリピロリピロリ
スマホが鳴り大志はそれを見た。
「はぁ。やっぱ俺行けねぇわ、わりぃ」
大志は大きなため息をついて、俺達にオススメの飯屋を教えて、そそくさとどこかへ行ってしまった。
「嵐みたいなやつだな」
姫は、俺を見てそう言った。
「あぁ、まぁな」
俺達は、さっそく近くの進められた場所に行ってみた。
少し薄暗い路地を通るとオシャレな草木で作られた不思議の国に繋がる様なトンネルが、そこにはあった。
それを潜くぐると丸型のドアがあり、それを俺達は開けた。
調べていけばよかったんだ。
いや、入ってすぐ出れば。
ワクワクしたことは、事実だ。
大都会。オススメの場所なんて言われたら期待せざるえないだろう。
そんなことを思いながら俺達は、カップルシートへと腰かけていた。
いや、ここなんでカップルシートしかないんだよ!なんてツッコミはもう遅い。
もう10センチ横には姫がいる。
俺は姫の顔が見られないでいた。
「な…何食べふんだ?」
なんだろう、姫が噛んだ様に思えたが気のせいかもしれない。
「す…好きなもの頼めよ」
「お…おぅ。せっかくだしオススメから頼もう」
そんな俺達を見て店員がクスクスと笑っている様な、そんな気がした。
───お飲みものは、何になさいますか?
唐突に店員が来て俺達に飲み物を聞いてきた。
「「とりあえず生で!」」
店員は、プルプルと笑みをこぼしていた。
「はずかしいからヤメロ!」
バシバシとメニュー表で姫は俺を殴り、周りからもクスクスと笑われ、恥ずかしい半面、少し楽しかった。
それから俺達は適当に注文をすました。
「で、あと5日で何するんだ?」
「んーとね。観光もそうなんだけどね、ママに会いに行くの」
「え?お前出身こっちじゃないよな?」
「パパとママ最近離婚しちゃったらしいからね、一応会いに」
「え?いいのか?そんな時に俺についてきて」
「うん。サウロがついでだし」
「おい!」
「でもね、よかった。サウロがいてくれて」
なんて返せばいいことなのかわからなかった。
頼りにしてくれていたことがわかって俺は嬉しかった。
「もうママとは随分ずいぶん会ってなくてね、久しぶりなんだぁ。もう私も大人なわけでしょ?ちょっぴり恥ずかしいの」
過去を振り返る様に口を開く姫は、少し切なそうだった。
「だからね、少しだけ傍にいてほしいの」
お酒のせいか、潤んだ瞳と照明のせいで赤みを増した姫の顔で、俺は思わず理性を失いそうで肩に手を回してしまった。
「キャッ…勘違いしてんじゃねぇよ!」
─────バチン
姫の右ストレートが俺の左頬にシンデレラフィットした。




